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   松 森(643.2m) ・・・これって、山?

 1/25000地形図 神居古潭

籔の中から松森を見る
松森の近くの駐車スペースに車を止める
籔に突入、果敢に前進するIkkoさん
松森の頂上風景

 松森は地味な幌内山地にあっても、さらにマイナーな山であるが、「山」となれば妥協を許さないIkkoさんには貴重な一山、当然のこと未踏の一山として この山を目指すことになる。上手く林道を利用できれば頂上まではわずか300mの至近距離。これでは登山とは言えないだろう。ついそうも思えてしまうが、Ikkoさんは本気。前日は深川の道の駅「ライスランドふかがわ」で車中泊。私が目覚めた時には既にIkkoさんは早朝からの林道偵察を終え、車を止める場所まで決めて道の駅に戻って来ていた。藪山低山のスペシャリストともなれば、力の入れようがまるで違う。どんな山に対しても常に全力疾走である。偵察のおかげで、国道12号線の神居古潭からは、あれっ?と思う間もなくいきなり春志内林道へと入った。この日は同じ山域の丸山も計画されており、この2山を終えるまではこの林道から出してはもらえない。そんな覚悟で後続車のハンドルを握る。

 以前は地形図と照合しながらのいつ終わるとも知れぬ林道走行を強いられたが、今のカーナビにはこんなマイナーな山も表示されるから気楽なものである。近くのコンビニにでも行くような感覚で松森近くの駐車スペースに車を止める。地形図にも載っているのだから作業用の刈分けくらいはあるだろうと探してみたところ、駐車スペースから刈分けらしき踏み跡が続いていた。ひょっとして松森まで続いている… 頭を過ぎったが、よくよく考えてみれば普通の人も森林管理署の職員も三角点などに用などない。案の定、少し入ったところで深い笹薮に踏み跡を見失う。籔の中を右往左往して飛出したところは車のすぐ近く、のり面の上だった。木々につかまりながらも恐る恐る下って林道へと戻る。

やっと見つけた三等三角点「松森」 (Ikkoさん提供)

  さて、仕切り直し。今度はそんな甘いことなど考えずに、真向勝負と行こう!林道を松森に1番近いところまで進み、そこから頂上手前の小ピークへと籔を濃いで松森へと下る作戦である。だが、そんな思いもその地点まで行くと、やはり薄そうなところ、ひょっとして踏み跡らしきものはないかと目で追ってしまうから人間とは弱いものだ。結局、どこも同じだった。あるのは濃い笹薮のみである。いったい何年こんなことをやっているのだろう、ついそんなことを考えながらも笹薮を掻き分けている自分がいる。途中、なぜか視野がタケノコモードに切り替わり、次々見えてしまうから困ったもの。タケノコは最小限に留め、手前の小ピークへと登り切る。だが、どこも同じ笹薮で、山の小ピークにいるといった感覚などまるで感じられない。

 小ピークからは少し下り気味になって、コル付近では背の低い笹薮となる。だが、いよいよ松森への最後の登りのはずが、登っているといった感覚が全く感じられない。後にも先にも単なる笹薮の中にいるだけだ。タケノコ採りが迷うというのはこんな感じか? ついそんなことも考えさせられる。それでも地味に地味に進んで行くしかない。GPSを見たところ、かなり松森が近くなった。前を行くIkkoさんにはあと30mと言ったが、ちょっと進んだ地点でいきなり目的地到着の表示となった。えっ! ここが松森か… どこといって特徴のない藪の中。これまで数多くの籔しかない山頂を見てきたが、登ったという感覚がこんなに乏しい山頂は初めてだった。ともあれ、GPSがそう言っているのだから三角点を見つけ出し、登頂?の証とするしかない。

 だが、その三角点が見つからない。何度も何度も行ったり来たり、変だ、変だと思いつつも、三角点マークの中の点が大きな四角形になるまでGPSを超拡大、トラックログが塊となるまで動き回る。見かねた神様が教えてくれたのか、その塊のほんの少し外れた地点に三等三角点「笠森」が隠れていた。松の根のすぐ横で、三角点にくっ付いてタケノコが飛出していた。標石にとっては何とも窮屈な状態である。だが、正直嬉しかったし、やった!という思いだった。苔の状況から推して、この標石が人間と再会するまでにはかなり多くの年月を費やしたに違いない。おそらく、シカやヒグマと出会った回数の方がはるかに多かったことだろう。標石も喜んでいる。私には確かにそう見えた。(2015.6.7)  

1/25000地形図 「雨 粉」

参考コースタイム】松森入山口 P 7:35 →  松森頂上 8:50 、〃発 9:20 松森入山口 P 10:05   (登り1時間15分、下り 45分)    

メンバー】Ikkoさん、saijyo   

        

丸 山(471.3m) ・・・ダニたちの楽園     

林道終点の土場に車を止める
あまりのダニの多さに流れに逃げる

 松森の意外な苦戦にそのまま帰ってしまいたい心境だったが、妥協を許さないIkkoさんはこれだけでは満足しない。林道の峠を越えて伊ノ沢側へと下って行き、下りきったところから未舗装の一般道へと進み、最終人家の少し手前で伊野川支流川沿いの林道へと入る。その終点がこの日2山目となる丸山の入口である。林道は轍の間の野草が伸びてきた状態で、あまり使われてはいないと推測する。地形図上の林道終点より100m手前が実質上の終点で、土場となっている。googleの航空写真からは丸山東面に広がる林道と植林地を読み取っていたが、土場から先は草茫々といった状態で、現在は全く使われていないようだ。

290m二股で、この状態も途切れてしまう。シカ道かもしれないが、さらに踏み跡らしきところを進んで行くうちに、ダニがひどいとIkkoさん。両手を見たところ、白い軍手には数えきれない程のマダニが群がっていた。もちろんズボンもダニだらけ、必死で払うが完全にダニの巣へ踏み入ってしまったようだ。シカ道はダニの巣という話は聞いて知っていたが、ここまで酷いとは想像もしていなかった。見える大きさであれば払いもするが、小さなものはどうにもならない。私としては完全に萎えてしまい戦意喪失となる。とりあえずは小沢の流れへと逃げ込むことにする。

こんなダニだらけの中でも立派に生活しているエゾシカ
三等三角点「丸山」とスーパードライ!         こんなところはやっぱり 金麦かな (´・ω・`)

 私は意気消沈で後退、Ikkoさんが先頭となる。流れの両岸からは籔が被り、すでに源頭といった雰囲気。この先、籔はさらに濃くなりそうだ。長靴に穴が空いているとIkkoさん。思わず、ダニよりは漏れた長靴の方がまだましだろうと思ったが、さすがに口には出さなかった。300m二股は右をとって、東側から380mのコルを目指すことにする。二股を過ぎてからはぐんと水量が細り、籔のウエイトが急に増した感じとなる。ダニが付くので、その度ごとに立ち止まっては目を皿にしてダニ払を払う。いったい、いつまでこんなことをくり返すのだろう? だが、ここから戻ったところでダニが群がるのは同じこと。前へ進んで行くしかないようだ。見ると人工造林地の看板が樹木に取り付けられており、文字は消えかかっているが昭和6○は読み取れる。60年台としても付近に人の手が入ったのは約30年も前ということになる。

 310m二股付近で、こちらをじっと観察しているエゾシカが一頭。彼らはダニが群がるこんな気持の悪い環境の中でも寝起きしているのだから大したものだ。我々の場合は生活ではなくこの日限りのもの。そう思えば贅沢など言ってはいられない。二股からはいよいよ水が細って、コルよりはるか手前で完全に消えてしまう。その頃からかダニは付かなくなり、私も何となくピークへの意欲が戻ってくる。コルへと登っている途中、Ikkoさんが植林地を発見。やはり航空写真の通りだった。針葉樹林の中は下草が育たないので歩きやすく、ほっと一息といったところ。植林地が終わって再び笹薮漕ぎとなる辺りではかなり頂上が近づいたと実感できる。

青い“芝生”の向こうが丸山の頂上 三角点に見入るIkkoさん

 頂上が見えてきた。笹原の向こう側に見える木々の塊がどうやら目的のピークだろう。笹原とは言ったが軽く背丈ほどはあり、先端の部分が黄緑色の芝生のように見えているだけ。実際は強烈な根曲がり竹で、最後のひと踏ん張りで漕ぎ切らなければならない。この辺りからは根曲がりにツルが絡む。邪魔ではあるが、ツルも夏から秋にかけての見事に織り上げられた完成品とは違う。絡んだツルにもたもたする私を尻目に籔のプロ・Ikkoさんはぐんぐん前へと進んで行き、どうやら頂上付近へと到達したようだ。様子から、標石を見つけた感じだが、彼は何やら凄いものを発見したみたいだ。

 午前中の松森と比べれば同じ籔の中とはいえアルピニズムがある。そんなことを思いつつIkkoさんのところへ到着となる。頂上らしさとは裏腹に眺望は何も無く、見えるのは笹と樹木のみである。だが、ダニの多さに途中で止めたい気分となっていただけに、この達成感は大きい。ふと見れば、何と! こんもりとした緑の四角柱と緑の石ころが三つ。三角点セットがそのまま苔の緑に包まれ、周囲の景観の中で同化していた。人間との対面が久しい近代測量の遺産である。我々は三角点の現況調査を趣味としているわけではないが、この日の二点は何れもレアものの標石。それがマイナーであればあるほど、首尾よく対面できたときの喜びは大きい。この日はチロロ2さんからもらったスーパードライとのコラボ。やはりここは金麦だったね…と、Ikkoさん。高価なビールに目が眩んでしまったが、確かにそうだった。今度は金麦を連れて、またこの山へやって来よう! 標石の苔はそのままに、再び一日千秋の思いで我々の帰りを待つ ダニたちのもとへと下った。(2015.6.7)

参考コースタイム】林道終点 P 11:15 →  丸山頂上 13:10 、〃発 13:25 林道終点 P 14:25   (登り1時間55分、下り1時間)    

メンバー】Ikkoさん、saijyo

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