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      稀府岳(702m)

豊かな広がりを見せる稀府岳

 

1/25000地形図稀 府

眼下に見える室蘭・絵鞆半島
養鶏場手前の林道跡に車を停める
笹薮は背が低く快適であるが、帰路は迷いやすく、標識を付ける
奥に稀府岳・頂上が見えてくる

道内では比較的温暖と言われている伊達地方、今年は雪が遅く12月に入ってもほとんど積雪のない状態が続いている。秋に伊達・紋別岳に登り、展望の素晴らしさを十分に味わってきたが、すぐとなりに見えていたこの稀府(まれっぷ)岳は見る角度によってはかなり鋭角的に見えることもあり、次回はぜひ登ってみたいと思っていた山である。

私にとって、この山との付き合いは古い。山名が地形図上に登場したのは最近であるが、以前からずっとこの山の存在だけは知っていた。ただし、無名の山といった程度の認識である。日本画家であった父が画題を求め、伊達地方へ入った折、裾野を大きく広げるこの山にえらく感動していた記憶がある。私が子供だった時代であり、現在の風景はかなり様変わりした感があるが、山そのものについては当時と何も変わってはいない。父は戦前、会場芸術の粋を花開かせた川端龍子(1885〜1966)主宰の青龍社に所属していたこともあり、頂上部に迫力ある広がりさえ感じさせるこの山は、日本画の題材としては打ってつけだったのだろう。戦後、病気がちだった父は活動の場を道内に求めたが、この分野で素地のない道内では開花することもなく、昭和58年に没している。今回は“稀府岳”という誘いだけでこの計画に乗ったが、図らずも父が画題と考えていた山が稀府岳と呼ばれている山であったことに、今回はじめて気付く。

登山道のないこの山へは適当な取り付き地点を探さなければならないが、地形図上で一番取り付きやすそうな西面は養鶏場となっていて、鳥インフルエンザに敏感になっている今のこのご時世ではとても通過さえできそうにない。sakag (一人歩きの北海道山紀行管理人)HPを見ると、上手い具合に養鶏場手前から取り付いているようで、我々も同じルートを使わせてもらうことにする。古い林道はすぐに行き止まりとなり、さらに続く林道跡には雪が薄っすらと積もった笹薮が被っている。こんな日の先頭は辛いもので、すぐにずぶ濡れ状態となり大変である。5分も歩くと目指す尾根の末端で、笹薮に突入となる。取り付きこそ背丈以上であるが、尾根上では概ね背が低く、薮漕ぎとしてはかなり楽な部類といえる。広い尾根ではあるが、あとは高い方へと登って行くだけである。

頂上から室蘭岳方向を見る

単調な登りはコンタ560m付近まで続き、徐々に左側へと曲がって行く。帰りはルートを見失いやすいとのことで、メンバーがルート上の木々に標識を残す。確かに帰路を考えれば、ここは大事なポイントと言えそうだ。下山時、少しの角度の違いで大きく方向を間違えてしまった経験は何度もあり、振り返って帰路の様子を確認しておくことは薮山登山の基本であるとつくづく感じる。最近はGPSを利用することが多くなり、帰路への備えは少々甘くなっていたと、大いに反省である。

視界の中の頂点へ達すると、さらに次の高みが現れるといった具合にニセピークが続き、頂上はなかなか近づいてこない。ふと気が付くと、いつのまにか展望が広がっている。特に、伊達紋別岳では見ることができなかった室蘭・柄鞆半島の全体像は、まるで地形図を見ているかのようだ。特に白鳥大橋のストロボライトの点滅が印象的で、鉄冷えの街にも何となく活気を感じさせてくれる。前方には小ピークが重なって見え、奥の少し高いピークが稀府岳頂上のようである。辺りにはシカ道のような踏み跡が見られるが、小ピークを巻いている様子をみると、登山者のもののようだ。そう考えると、この山を訪れる登山者は意外に多いのかもしれない。

踏み跡はところどころで不明瞭であるが、忠実に頂上へと続く。頂上は開けており、紋別岳方面は木々に邪魔されて見えないが、晴れていれば大方の山々は望めそうだ。この日は冬型の気圧配置で、後方羊蹄山をはじめとする日本海側の山々はすっかり雪雲に隠れている。暖冬とはいえ、濡れた衣服は寒さを倍加させ、ゆっくりと山座同定を楽しむほどのゆとりはない。恒例である、三角点とKo玉氏のツーショット写真を二枚、そそくさと頂上を後にする。

稀府岳は見て良し、登って良しの山である。残念であったのは、今回のルートが少々変化には乏しかったことである。Web上を探してみると裏側から直登したとの記録があったが、このくらいのバリエーションを取り入れた方が、この山の登頂には相応しかったようにも感じられた。(2007.12.9)

【参考コースタイム】 養鶏場手前・枝道P 8:30 → 尾根取付 8:40 稀府岳頂上 10:55 、〃発 11:10 養鶏場手前・枝道P 1210 (登山道ルート;上り2時間25分、下り1時間)

  【メンバー】Saさん、Ko玉さん、saijyo

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