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      追山(/272.8m)〜石勝樹海ロードの入口

ハイジ牧場付近から馬追山  レーダーサイトの右側が高い

1/25000地形図長 沼南長沼

気持の良いトドマツ林が続く
遊歩道の入口に設置された看板・Eコースから入る
ひと登りすると見晴らしが良い瀞台に到着する
長沼基地を象徴するレーダーサイト

  馬追丘陵といえば思い出すのが、長沼ナイキ訴訟といった東西冷戦時の緊迫したイメージである。40年ほど前になるが、地対空ミサイル基地設置のために同丘陵の保安林の指定を解除、自衛隊が合憲か違憲かの論争にまで発展、最高裁の判断に委ねられたが最高裁はその判断に触れることはなく結審した事件である。終戦から90年代までの間は東西冷戦の時代と言われ、大韓航空機撃墜事件をはじめとする両陣営の小競り合いによる事件は日々のニュースを賑わしていた。90年代のソビエト連邦の崩壊以来、その脅威が遠のいたこともあり“ナイキ”の名は何時の日か聞かれなくなった。違憲、合憲、どちらの立場にたっても時代の変遷を強く感じさせられるが、この件に関していえば、時代は間違いなく良い方向へ変わったと言えそうだ。

 時が過ぎ、長沼町には大都市札幌では得られない豊かな田園風景が広がり、馬追周辺には緩やかな丘陵を背に大平原を見下ろす夕日の美しいレストラン、喫茶店など、新たな人気のスポットが点在する。樹種が豊富として知られる同丘陵にも遊歩道が整備され、自然を身近に楽しむことができる魅力のエリアとなっている。Web上をのぞくと、比較的緩い遊歩道をランニングするトレイルランニング、自然観察会、スノーシュートレッキングなど、四季を通じて人気の山域となっているようだ。もはやナイキ基地は冷戦時代の遺跡となったようにすら感じさせられる昨今である。

今シーズン初めての本格的な冬型の気圧配置となり、荒れ模様のこの日は、日頃通過するだけであった馬追山を訪れてみることにする。遊歩道の存在は以前から聞いていたが、地形図には載っていないため、とりあえずは馬追温泉口から馬追山頂上と言われている台をめざす予定である。ハイジ牧場から長沼温泉へ向かって車を走らせていると、偶然コミュニティーセンター口という遊歩道の入口を見つける。看板を見ると、ここからの距離が一番短く、拾い物をしたような思いでスタート地点の変更を決める。ところがこのコース、枝尾根を越えなければならないようで、馬追温泉口との差はわずか40mだったとダムの沢への下りで後悔する。40mの短縮よりはアップダウンの少ない方を選ぶべきであった。

普段の山行ではあまり樹木に興味を持つことはないが、ここは樹種が豊富な森林とのことで、木々にかかった名札を見ながらのウォーキングである。初冬への境目となったこの日、予報に反して小春日和となり、薄日が差している。広葉樹は葉が落ち、どれも同じようにしか見えないが、普段から気になっていたエゾマツとトドマツの違いくらいは見極めてやろうと、じっくり観察することにする。「天まで届けトドマツ、みんな仲良しエゾマツ」が見分け方だとチロロ2さんは言っているが、みんな天まで届きそうで、どれも仲良しに見えるから、あまりこの見分け方は役に立ちそうもない。結論として、樹肌の違いを見分けるのが効率的であり、正確でもあった。鱗のようにゴツゴツしているのがエゾマツで、比較的すべすべしているのがトドマツである。いつもこの山行記の中では一括して針葉樹と表現してきたが、今回は少し勉強したような気がする。

瀞台から見る長沼市街 レーダーサイト横の尾根上が最高地点

そんなことを考えながら歩いているうちに、瀞台はぐんと近づく。初めてお目に掛かる天測点とはいかなるものか、下調べはせずに現地で学習しようと思いつつ、右手に続く有刺鉄線を横目に一汗かく。上り詰めると整備された瀞台となる。コンクリートの四角い大きな箱状の塊が、日本の測量の基準を確認する上で礎となった天測点だそうである。特にここは設置第1号とのこと。瀞台は眼下に石狩平野が広がり、一等三角点も設置されていて、馬追山の頂上というに相応しい感じである。ただし、馬追丘陵(馬追山)の最高地点は別のところで、地形図を見る限りではどうもレーダードーム南側の稜線上のようである。地形図上では付近まで馬追林道が続いているので、それを利用しようと遊歩道を下る。途中、平行に走る林道が見えるため、薮漕ぎにて林道へ飛び出すが、その先で遊歩道と合流していて、全く拍子抜けさせられる。あまり使われなくなった林道を遊歩道として利用しているようだ。

林道はけっこうぬかるんでいて、車の走行は無いようだ。レーダードームが前方に現れ、いよいよ薮漕ぎかと思っていると、遊歩道が林道と分かれる。林道はその先で草木が被った状態となり、廃道化している。遊歩道は道々夕張長沼線口へと続くが、なんと有刺鉄線に沿ってドームの横から稜線上へと向かう。高度計で瀞台と稜線上の比較を行ったところ、瀞台は低気圧の影響もあり292mの表示、ここでは315mと表示されている。その差23mと明らかにこちらが高いようだ。ただし、三角点も何もなく、展望は木々に邪魔されほとんど利かない。しかも直ぐ先の有刺鉄線の向こうには舗装道路が通っていて、山の頂上というには少々はばかられる感じである。

にわかに雪が降り始め、いよいよ冬将軍到来といった雰囲気となる。できれば帰りに長官山へも登りたいところであるが、道内全域には強風波浪注意報が出ていて、強まってきた北西風が頬を突きさす感じである。今日はここまでとし、往路約4kmを足早に引き返す。(2007.11.18)  

【参考コースタイム】 馬追山遊歩道 E 入口 835 →  9:35 、〃10:45→ 馬追山最高地点(頂上) 10:30 、〃10:40 11:10  馬追山遊歩道 E 入口 1210 (登り 1時間55分、下り1時間30分・途中休憩時間を含む)

メンバーsaijyo、チロロ2

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