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      黒松内(739.8m)

低山であるにも関わらず、高山的雰囲気の黒松内岳

1/25000地形図平山」「黒松内」

九合目付近から見る林道。10分くらいの藪漕ぎで飛び出せる
この時期、タニウツギが美しい
登山口には駐車場も整備されている
エゾカンゾウが美しい
頂上から見る三角点の広場

  渡島半島の付け根にあたる黒松内低地、ここの半島部側には沢が深く切れ込んだ意外に険しい山が多い。黒松内岳もその一つで、低山であるにもかかわらず高山的な雰囲気のある、コンパクトにまとまった山である。この山では毎年、地元黒松内町を挙げての山開きが行われ、かなりメジャーな山となっている。ガイドブックやWeb上でしばしばこの山の情報を見るが、登山道に関わる情報が圧倒的に多く、花の山、ブナ林、急峻な階段、一直線に続く刈り分け道などのイメージである。

沢シーズン開始とばかりに、距離が短く変化があり、下りは登山道といった組し易きルートを探し、黒松内岳・登山口に近いブナ滝の沢に白羽の矢を立てる。直ぐ隣の尾根には登山道があり、エスケープには格好な条件が揃っている。ブナ滝を見ながら取り付きのルートを考え、さあ準備完了! ザックに行動用の装備を入れる段になってザイルがないことに気付く。初見の沢でもあり、もしも突破できない滝や沢身への下降といった場面に遭遇した場合、懸垂下降の選択枝がないのは厳しい。もちろん藪漕ぎで登山道へ逃れる手は考えられるが、ザイルがないというだけでも気持が萎縮してしまいそうだ。山行自体の中止も考えるが、わざわざ黒松内までやって来て、だまって引き返す手はない。地下足袋といった物々しい出で立ちではあるが、ここはヘルメットを置いて、登山道を行くことにする。

 しばらくは階段状の急登で、途中からはブナ林を見学するために造られたと思われる迂回路が現れたので、早速入ってみることにする。ブナの北限といわれている黒松内、森林の様相が道央のものとは確かに違う。余談ではあるが、市街地に近い歌才ブナ林が北限のブナ林といわれているが、以前に蘭越・幌別岳へ登った折、下山時に「ブナ林北限の地」と書かれた、朽ちた看板を見た覚えがある。この時は何とも思わなかったが、良く考えてみると二つの“北限”が存在することになる。緯度だけを考えれば、蘭越町のものが本当ということになるが、その辺の細かな事情は判らない。何れにせよ、地衣類が幹に作る模様が柔らかく、水分を蓄えることによる森林の豊かさはブナ林特有のものであり、美しく心地よい森林であることには変わりはない。迂回路にはそのほか、普通の藪山ではめったに見られないギンリョウソウがあちこちに見られる。

 合流して少し登り、○合目の看板を見る頃から視界が開ける。一直線に続く登山道はガスの中に消え、楽しみにしていた鋭角的な黒松内岳の山容はガスのベールに包まれている。この時期、柔らかいピンクのタニウツギが咲き乱れ、草木の緑とのコントラストが実に美しい。また、時折見られるクロムイエローのエゾカンゾウがさらなる彩を添えているようにも感じられる。ほかには、フウロ草やハクサンチドリなどの花々も見られる。ザイルさえ忘れていなければ入渓していたであろうブナ滝の沢が眼下に見えているが、両岸が急峻に切れ込み、函滝が多い感じである。ザイルなしの状態で安易に入らなかったことは、正解であったようだ。

黒松内岳頂上は藪の中

登山道は急な登りとなり、9合目付近で頂上台地上となる。ふと見ると、ガスは足元となり青空が広がっている。雲海の向こうには後方羊蹄山やニセコ連峰が頭を出している。三角点が埋まる頂上広場は直ぐで、綺麗に刈り分けられていて、大平山、長万部岳などの展望が良い。本当の頂上までは、わずか150mほどが藪漕ぎとなる。根曲がり竹が茂ってはいるが、藪下の地面が高くなっているところを選んで進めば大したことはない。頂上は鬱蒼としていて胸くらいまでの藪となっている。ここに上がると三角点のある広場よりは明らかに高いということが確認できる。

 下り道、9合目付近にピンクテープで“通行止”になっている刈り分けがある。300400m先には林道が見えているため、つい偵察に入ってしまう。ちょうどこの時、十数メートルの至近距離に居合わせたのが、Web上で当HPともリンクして頂いているアソビホローケル山・サトマサさんご夫婦で、ニアミスだったことが後日判った。何回か飲み会でお会いし、良く覚えていただけに全く残念であった。街とは服装が違い、しかも少し離れた状態では、視力低下が進む私には判らなかった。

 結局のところ、この林道、黒松内市街地付近から伸びており、この山の登山道情報が今ほど多くなければ、間違いなくこの林道と藪漕ぎでこの山に登り、逆に登山道を発見して驚いていたことと思う。このケースが多い私としては、藪山としてのこの山の姿に接触し、妙な安心感を覚える自分が可笑しかった。(2007.6.24)  

アソビホローケル山・サトマサさんの山行記録

【参考コースタイム】 登山口 755 黒松内岳・三角点 9:40 黒松内岳頂上 9:50 黒松内岳・三角点 10:05 、〃発 10:40  登山口 1135 (登山道ルート;上り1時間55分、下り55分)

  【メンバー saijyo、チロロ2 

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