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      (804.8m)

 
天狗山から望む熊追山(中央) 2012.3.11撮影

    1/25000地形図「稲倉石」「神恵内 

林道分岐付近、建物跡に車を停める

いつ途切れるともしれない小沢を進む
藪の中の三等三角点「熊追山」

藪の中の三等三角点「熊追山」

熊追山は積丹半島の南部に位置する山で、八内岳や岩平峠などと共に一つの山塊を形成している。最初にこの山名を見たとき、つい、狩猟でヒグマでも追いつめていったところなのだろうと思ったが、アイヌ語の常道から考えれば“クマ”は奥まったという意味であり、“オイ”は場所なので、「奥まったところ」というのが妥当なところだと思う。なかしべつ・すがわらさんがもし見ていたならば思わず笑ってしまうような直訳であるが、私の知識量ではこんなところが精一杯である。盃川の林道を約6km入った地点がこの山の入山口となる。

当初の予定ではコンタ320mの地形図上・建造物記号から入る林道を使ってコンタ360m林道終点まで進み、沢形利用と藪漕ぎで頂上を陥れる計画であったが、現地入りしてみると林道は廃道状態であり、急遽一本手前の小沢からのアプローチに変更する。最後の詰めを考えた場合、頂上直下まで沢形が続いているこちらの方が有利であることが変更を決めた理由である。木製の小橋から入渓するが、流れはかなり細く、沢内の藪漕ぎは覚悟である。となりの岩平峠も細々と流れは続いていたが結果的には藪の被ったブタ沢であった。こちらが少し違うところといえば傾斜が若干あるところくらいであり、小滝が時折現れて楽しませてくれるところだ。足回りは当然のことながら藪漕ぎには効果的なスパイク靴である。

平凡な小沢を進んで行くが、驚いたのはコンタ480m付近の様相である。見上げると、なんと30mは優にあろうかと思われる三段の滝が突然現れる。地形図のどこにもそんなことは描かれてはおらず、思わず自分の目を疑ってしまった。ここは敢えて冷静な観察が必要と、じっくり見ているうちにルートが浮かびあがる。左岸側の水際から滝の上部へと抜け、最後は右岸側の潅木を利用して落口へと抜ける案である。偵察で一段目に上がってみるが、滝は順層で、フェルト底であれば何とか突破できそうな感じである。ただし、スパイク底であれば、二段目からは高度感も増し、躊躇しようものなら足を滑らせて、とんでもない事態にもなりかねない。登ってみたい衝動を感じるが、スパイク底の限界を知っているKo玉氏も登らぬよう忠告している。ここは決してむきにはならぬよう自分に言い聞かせる。結局、Ko玉氏の案で左岸側の草付を登るが、草付も場合によっては進退極まる状況になりかねない。ウドの大木は役立たずの代名詞ともなっているが、こんな草付では意外と頼りになる存在である。これに掴まってだましだまし標高を上げ、何とか潅木のある地点まで進む。ここまでくれば最悪の場合でも支点はゲットである。

30mとも思われる滝の出現、左岸の水際あたりは登れそうだ

滝の上流部へと抜けたいところだが、悪いことに沢へは岩稜が邪魔して、さらに上部へと登って行かないことにはこの状況を打開できそうにはない。結局、そのまま藪漕ぎにて稜線上を進むことになる。藪は意外に薄く、ある意味儲けものであり、沢へ戻ることは何時しか頭の隅から消えてしまう。しかし、自然は人間が考えるほど都合良くは出来てはいない。根曲がり竹の密度が除々に増し、気温の高さと相俟って、体力はみるみる消耗してしまう。楽勝と思って計画していただけに、その速度が倍加する感じである。

頂上手前のコンタ800mポコに到着するころにはヘトヘトである。後はコルヘ下って少し藪を漕げば待望の三角点ピークだ。ところが、根曲がり竹も太さが増し、乗っかっても足が地に付かない。藪中のコルでのルートファインディングは難しく、予想外の体力の消耗もあってか、パーティ内はかなり苛立っている雰囲気だ。冷静に、冷静に…こんな時の一番の薬はやはり頂上到着以外にはありえない。三角点は竹薮の少し小高くなった地点で発見する。臭いで分かると言われて久しいKo玉氏がいとも簡単に見つける。この三角点には人間様が、さぞ懐かしく映ったことだろう。積雪期であれば訪れる登山者も稀にはあろうが、無雪期に藪漕ぎで登ってくるパーティは、滅多にはいないだろう。

熊追山頂上にて

さて、下りが問題である。引き返せば30mの大滝が待っており、できればそれは避けたいところだ。しかし、知らない沢を下って行くにはそれなりのリスクを覚悟しなければならない。621m標高点の一つ北東側の尾根を下ることにするが、太い根曲がり竹のなびく方向に逆らう形で進むことになり、結果的には思った方向へはなかなか進めない。藪中で迷うということは、知らず知らずに植生の影響を受け、方向を見失うということなのだろう。我々は結局目的地点を通り過ぎてしまい、尾根の北東側の小沢を下る。途中、ルンゼ状のナメ床となったため、右岸の尾根上へと逃げて水流のある450mコンタの標記のある沢へと下る。尾根上から見たところ、この沢の少し上部にもやはり20m以上はありそうな見事な滝が落ちており、その下流にも滝やナメ床が連続していた。そのさらに先へ下ったことはラッキーであった。

考えてみるに、どちらの沢を選択しても結局はそれなりの滝やナメ滝が待ち受けていたようである。ここの山域では例え小沢といえども思わぬ滝が現れる可能性があり、しっかりとした沢装備が必要である。ちなみに、古平側は「登山大系」で有名な下二股川となっていて、地形的にはかなり険しい。フェルト底の靴やロープはいうまでもなく、ハンマーやハーケン等、支点を作る道具も用意して臨まなければならないようだ。(2009.6.28)

 【参考コースタイム】林道入渓地点P 8:10 30mの滝 8:50 800mコブ 12:10 熊追山頂上 13:00、〃発 13:30 作業道 16:30 林道入渓地点P 16:30  (登り 4時間50分、下り 3時間30分)

メンバーKo玉さんsaijyo、チロロ2 

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