<戻る

   渡島小島・南山(282.1m) ・・・北海道・南海の孤島 

  

渡島小島に別れを告げる

 1/25000地形図 渡島大島  

出発地の江良漁港 ・・・波は静か
江良の街が小さくなる。 背後の山はどこだろうか?

 南海の孤島といえば少し大げさだが、渡島小島は北海道にあっては正にそう表現できる最南端の島である。松前町の江良地区からは約25km、地元の漁船に乗せてもらい島巡りのクルージングと決め込む。この島は以前には人が住んでいたそうだが今は無人島、緊急避難用の小さな港と灯台、その点検のためか国防上のものなのかヘリポートが設置されている。

周辺の海を守る小島の灯台

 そもそも私は子供の頃から海が苦手で、それで山を志したと言っても過言ではない。しかし、今回に限っては海からは逃れられなかった。もちろん、泳げない私は職場の仲間からつり用の救命胴衣を借りてきた。「蜘蛛の糸」ではないが、仮に転覆でもしようものなら、皆私に捉まろうとするだろう。それぞれにちゃんと救命胴衣くらい持ってきていればよいが… 昨夜はそんなことを考えながら1番怪しいチロロ2さんが運転する車に乗っていた。

 心配をよそに、当日の波の高さは1m以下とのことで、まずまずの渡航日和となる。見ればやはり救命胴衣など、だれひとり用意してはいない。いやいや、1人いた。Ko玉氏である。船長に「これ、いらないかい?」と言いつつもしっかり持ってきていた。既に渡島大島が終わっているので、今日のような凪の状態では早々に無用となったのだろう。さすがKo玉氏である。5tにも満たない小さな漁船で江良漁港を出航。江良の街並みの奥には明日登る予定の越エバ山や御三流、健八流が見えているはず。だが、この山域は全てが低くてどれがどれだか全く見当がつかない。海峡の向こうには津軽半島の山々が望め、雲の上にはぽっかりと岩木山が確認できる。

 出航から1時間20分、遠く小さかった島は徐々に大きくなり、デジカメのモニターいっぱいとなって防波堤を通り抜ける。漁船は港の岩壁に停泊、我々は南山のピークを目指す。Ko玉氏にとっては遠かったピーク、彼の執念がこの山行を実現させた。今回はそれに私も便乗させてもらう形である。以前にはあったとされる登山道だが、現在は踏み跡程度、山腹を巻くように続く踏み跡も真っ直ぐピークへの登りとなる頃からは単なる笹薮となる。一等三角点「小島」が埋まる南山の頂上は笹薮の中で眺望はまるでない。少しの休憩を挟んで、漁船の待つ港へと下る。この島特有のコジマエンレイソウを見ることが出来なかったのは残念なところ。港には体験学習とのことで地元の小学生を乗せたイカ釣船が停泊中だった。

一等三角点「小島」と「金麦」
一等三角点「小島」と「金麦」

 いよいよ今回のメインとなる島一周のクルージングの開始である。ブリ猟が最盛期?の今の時期、船尾に取り付けられた竿には面白いように体調4050cmのブリがかかってくる。「天然もののブリだ〜!」満面の笑顔で大喜びするチロロ2さん。吊り上げられたブリは必死で甲板上で跳ね回る。それを一匹一匹、つり糸から取り外しては船首の生け簀へと運び入れる。普段、テレビの画面でよく目にする旬の光景だが、本物ともなればその迫力がまるで違う。この島は地形的には島全体が断崖に囲まれた天然の要塞といったところ。船は時計回りに島の南側から西側へと移動、とりわけ島の最高地点の北西側のピークから海岸の断崖へと落ち込む様は迫力満点だ。船は標高145mの岩峰である大ヒヤク島の回りを何度か回り、岩壁に生息している海鵜のひょうきんな様子を楽しませてくれた。

 海上遥かに渡島大島の見事な山影を望み、真っ青な空と白いカモメ、船主に横になりながらの冷たいビール。絵に描いたような至福のひと時となる。こんな光景は以前にどこかで…? そう、アランドロンの「太陽がいっぱい」である。あの映画のオチは犯罪がばれてお縄となるが、私は地道に日々を生きてきた人間、こんなときこそ美味しい部分だけを頂戴しても決して罰など当たらない。“満足”をみやげに船はゆっくり江良漁港へと針路を取る。なごりを惜しむかのように船を追って来るカモメたち。Ko玉氏が空に投げるパンに群がるカモメを見ながらしばしその光景を楽しんでいた。  

南山から少し下ると大パノラマ (Ikkoさん提供)

 だが、そんな上機嫌の私にも伏兵が待ち構えていた。トイレである。 一度催したなら抑えられるものではない。船上で飲むビールは確かに美味いが、トイレのない船で飲むとどんな結果になるかまでは考えてもいなかった。GPSのスイッチを入れる。拡大しても縮小しても江良漁港までの距離など縮まるものではない。終いにはビニール袋をポケットに、船長のところへ。さすがに言い出せなかった。それを察した船長は速度をぐんと上げる。それからの十数分間は正に己との戦い、天国と地獄は紙一重、人間プラスマイナス0であると知るクルージングとなつた。(2015.7.4)  

行動タイム】江良漁港 7:35 → 小島漁港 9:00 南山頂上 11:05 、〃発 12:00 小島漁港 P 12:40  〜クルージング → 江良漁港 15:40     

メンバー】Ko玉氏、sakaku氏、Noda氏、fugimotoさん、ookaさん、Ikkoさん、saijyo、チロロ2さん   

 

クルージング

小島漁港と江良付近の山並み (Ikkoさん提供)

東風泊付近 (Ikkoさん提供)

島一周のクルージング・スタート 船は小島漁港を出港

小島灯台が小さくなる

南山付近を海上から撮影

島の最高ピーク付近を海上から

手応えが!

ブリ をゲット!

船は小島を大きく回る

小ヒャク島かな ・・・? (Ikkoさん提供)

遠く渡島大島も見える

大ヒャク島に別れを告げて、江良に針路を取る

渡島小島がだんだん遠くなって行く

「渡島小島よ、さらば」 なごりを惜しむカモメの姿も・・・

カモメがなごりを惜しんでいるのではなく、Ko玉氏の投げるパンがお目当てだった (Ikkoさん提供)

喧嘩をしながら群がるカモメたち

青い空とカモメたち ・・・ 海は広いな大きいな

 

<最初へ戻る