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   古丹別山(383.3m)

  

   

下降尾根から見た古丹別山

1/25000地形図 「三 渓」

ナタノ沢は意外に奥まで車で入ることができた
沢の水量は少なく、長靴でも十分だった
前方に岩壁が出現  この生成について解説するKo玉氏                        ・・・大したもんだ!

 天塩山地の西側には古丹別、記念別、三毛別と、それぞれに三つずつの○○別の山があり、全部で九つ、どれも低山とはいえ、どの山にも登山道がないため、それなりに苦労させられるから面白い。ましてや、熊嵐で有名な三毛別を含む山域でもあり、そんな意味でも気持の悪さは一級品ばかりである。このうち、昨年は記念別三山を終えて、残るは古丹別の二山と三毛別一山となっている。この日は残り三つの中では一番奥深そうな古丹別山である。この山は一等三角点の山で、苫前市街・灯台横の本点に対しての補点とのこと。同行するKo玉氏の全1500山の残る三十数山の一角というのも意外で、今回は何としてでも落とさなければならないピークである。

崖を登るIkkoさんとKo玉氏

  地形図のみで見れば林道からは少々入らなければならないようだが、「道北ヤブ山日記」Ogino氏の記録を見れば、アプローチとなるヤシコワンナイ沢沿いには一本林道が入っているようだ。この記録は積雪期のもので、車の走行が可能かどうかは判らないが、少なくてもある程度は川の中を進まなくても良いことだけは確かである。一方、南側の苫前ダムからのルートも視野に入れていたが、こちらはゲートがあるので無理っぽい感じである。この件をメンバーのIkkoさんに話したところ、上古丹別山の下山後に偵察に入り、案の定南側は無理、北側のルートは頂上まで直線距離にして2.1kmの地点まで入れたとの情報を得る。この手の山はアプローチに関する情報が山行の成否を分ける。そんな意味では古丹別山は完全に射程圏、後は天候のみとなった。

 数年前に登った懐かしい錐立山のすぐ脇を通過、ヤシコワンナイ沢沿いのナタノ沢林道へと入る。沢の名前と林道名が違うが、Ikkoさんが下見しており、間違えていないのは確かである。鬱蒼とした林道を現況林道終点まで進み、車の方向転換が辛うじて可能なところで車を止める。降りてからも少しの間は林道が続いているが、鬱蒼とした藪状態で、やがて沢地形へと消える。水流はかなり細く、長靴でも十分に歩けそうな感じである。ただし、沢床は細かく脆いナメ床で、スパイク底では滑りやすく、注意しなければ転倒してしまうだろう。途中、2m程度の小滝はあるが全く問題はない。順調にコンタ160m二股まで進んだところで、Ko玉氏のGPSの電池ボックスのフタが無いことに気づく。あわてるKo玉氏、だが、沢で落としたとも限らず、おそらく車の中ではないかとの意見が大勢を占める。これはこれで一旦落ち着き、沢詰めは続く。

 コンタ200m付近からは前方上部に岩壁が現れる。当然右岸側のものと思っていたが、進むにつれて、そうではないことが判る。ひょっとしたら前方も岩壁で塞がれるのではないだろうか… 少々不安が過ぎる。Ko玉氏は左岸側の小沢へ入ることを主張していたが、沢としてはあまりに細く、それはそれとして聞き流していた。だが、確かにそうだった。一歩進みすぎた感はあったが、すぐ横の小さな沢形から植生を伝って上部へと抜けることにする。しかし、やはり途中で裸地にぶち当たる。下から見れば岩壁だが、典型的な地滑り地形で、泥によって小岩が固められた地滑り面が剥き出しとなっていた。向かい側に見える断層面の地層からは水が滴り、Ko玉氏がニコニコとそれについて解説している。だが、それどころではない。

稜線上、いたるところに野いちごが見られた 頂上間近、ここを過ぎれば待望の頂上となる

  慎重にルートを選びながら登るが、植生が途切れた裸地の微妙なトラバースが1ヶ所。Ikkoさんは難なくそこを通過、後続はIkkoさんが差し出したストックを支えに通過する。支点となる小岩を手で確かめたところ、やはり浮いていて、こんな場合はあまり一点に拘らずに全体的なバランスに頭を切り替える必要があったことに気付く。要は草付き通過の手法であった。後は潅木や成長したウドやフキ、イタドリ等につかまりながら稜線上へと抜ける。さすがに下山でこのルートは使えない。そのまま尾根上を末端まで下るのが良さそうである。稜線上も崖側は裸地となっていて予想外に見通しが良い。野いちごが赤い実を付け、当然ヒグマの足跡も見られる。やがて登りとなり、樹林帯の稜線をたどると古丹別山の頂上となる。立派な一等三角点が埋められており、今回はKo玉氏がそれを見つけた。樹林帯の中で、こんな時期では展望などなにもないが、それでも、ここに到達することに意義があるし、その達成感には十分に満足できるものがある。メンバーの面々には申し訳ないが、運転がない私のみが頂上ビールの金麦を飲んで登頂を祝う。

 下りは予定通りに尾根下降とする。途中、獣道と思われる踏み跡も見られ、笹薮でないだけに楽な下りである。私が先頭に立っている時に尾根を外してしまうが、例のKo玉氏のフタの件もあり、そのまま往路の沢へと下降する。沢に出てから、Ko玉氏はフタを探して上流へと向かうが、結局見つからず、Ikkoさんからのフタだけ売っているとの情報で、Ko玉氏もそれに納得して下ることになる。だが、山にあっては百戦錬磨のKo玉氏もPCは苦手、ましてやネットショッピングなど、無理というもの。結局、後日私が1620円(税込み)で、そのフタを取り寄せてやった。

 そのKo玉氏だが、彼が全山男の真骨頂を見せたのは沢から廃道となった林道へと戻る時だった。普通ならそのまま沢中を進んでしまっても決しておかしくはないところだが、自分で折った草をしっかりと見ていて、何事もなく正確に往路へと戻った。もちろんGPSなど無用で、彼が長年培ってきた経験の成せる技と言える。これにはIkkoさんもびっくり。よく言われているKo玉氏の“獣の感”について、GPSが主流となりつつある時代となっても、この言葉はまだまだ死語となってはいなかったようである。(2014.06.22)

参考コースタイム】  ナタノ沢林道車止め P 8:05 → 古丹別山頂上 10:10、〃 発 10:30 →  ナタノ沢林道車止め P 12:10 (登山時間 登り2時間5分、下り1時間40分〜GPSのフタ探しの時間も含む)

メンバーKo玉氏、Ikkoさん、saijyo

2つの一等三角点

古丹別山頂上の一等三角点と金麦   下山後に立寄った苫前市街地の一等三角点(本点)と灯台

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