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   越エバ山(469.0m)

御三流から見た越エバ山  どこがピークなのかは判らない
御三流から見た 越エバ山

1/25000地形図 江 良

夏のくそ暑い籔もなんのその  Ikkoさんは果敢に前進するのみ

越エバ山頂上まで440mの最短地点に車を止める

  越エバ山は地形が穏やかで、頂上付近も平らな、いわばどこにでもある低山である。だが、地形図を見たところ、海岸からは少し奥まったところに位置しており、アプローチが難しいだろうとみていた。盟友・Ko玉氏から渡島小島の帰りは御三流と健八流、それと時間があれば越エバ山はどうか? との提案があり、それぞれの山の意外な容易さを知る。特にこの越エバ山は、Ko玉氏が登った時には五番沢林道からの延長工事が行われている最中で、大鴨津川の70m二股に車を置いて、工事中の林道を歩いて登ったらしい。この時の記録では林道歩きが1時間20分で、ピークに一番近い地点で笹薮に突入している。林道からピークまでの距離はわずかに450m、最短地点まで車を乗り入れてしまっては登山とは言えないかもしれない。だが、札幌からは遠方で、せっかくの機会でもあり、アプローチにまで拘ってはいられなかった。

 70m二股から先はKo玉氏の情報通りに、そのまま地形図上には載っていない林道を進んで行く。しっかりとした林道はなぜか時折舗装までされているから驚きだ。ただし、両側からのイタドリで鬱蒼としており、車でイタドリを掻き分けるといった状態となる。舗装が切れると雨裂も時折現れ、けっこうヤバそうな走行となる。おそらく、普通乗用車であればかなりきついだろう。いっそのこと、適当なところに車を置いてあとは歩く、その方が精神衛生上にも良いかもしれない。林道走行には滅法強いIkkoさん、そんな場面では余計に闘志を燃やすから尋常ではない。100万キロ走破を目前とした彼のサファリはイタドリを掻き分けてどんどん進んで行き、ついにはピークへの最短地点まで乗り入れてしまった。嬉しさが半分、困ったが半分である。これでは山行記にはならない。

越エバ山頂上に埋まる三等三角点「坊主山」(Ikkoさん提供)

越エバ山頂上から神ノ山を望む  (Ikkoさん提供)

  車を置いた地点の先にはゲートが設けられているが、鎖は土中に埋まっており、全くゲートの体をなしていなかった。だが、Ikkoさんは律儀者で、車はゲート手前に止めるとのこと。林道上を尾根線まで進み、そこからの笹薮突入である。籔は比較的薄いが、一喜一憂するほどの距離でもない。山としては既に源頭域なので、小沢を二つ越えてピーク手前の台地状へと登る。もちろん、終始藪漕ぎのみで、山に登っているといった雰囲気とはほど遠い。ここで方角を90°変え、今日の一山目となる越エバ山ピークへと向かう。頂上台地手前のコルからは少し登り応えのある籔斜面となり、正直なところを言えば やはり期待は膨らむ。“人知れぬ孤高のピーク”を探し求める、これが藪山登山の醍醐味であり、ロマンでもある。

 それなりに登ると辺りは一変と行きたいところだが、現実は樹林帯の籔の中。どうやら越エバ山に到着のようだ。この辺りのどこかに三角点が埋まっているはず。少々不安になるが、冷静に見てみると、あった! 三等三角点「坊主山」は自分のすぐ足下に埋まっていた。地面すれすれの状態で、顔だけ出している。三角点には長い年月に流土で基部まで飛び出した標石もあれば、このように埋まってしまいそうなものもある。また、山名も三角点を設置した時点では坊主山だったはずが、いつの頃からか越エバ山となったようだ。こんな人が滅多に訪れることのないようなところにも、やはり移れば変わる世の習いということになるのだろう。

 坊主山の名が示すようにどこにでもある平凡な頂上。だが、北側は凄い。二越川へはかなりの急傾斜となって落ち込んでいて、仮にこの川を遡行して登って来たとすれば、その登頂の達成感は筆舌に尽くしがたいものとなるだろう。おおげさかもしれないが、そんな形容がぴったりと思えてしまう意外さであった。下りは真っ直ぐに車へと向かい、わずか20分ほどでサファリの待つ林道となる。これで一山ゲットでは少々憚られるが、札幌からの距離も考えれば、正味1時間程度でも自分的には立派に一山にカウントできる山と思えた。(2017.7.5)

参考コースタイム】最短地点の林道 P 8:20 →  越エバ山頂上 8:50 、〃発 9:00 最短地点の林道 P 9:20   (登り30分、下り 20分)    

メンバー】Ikkoさん、saijyo   

         

  御三流(403.9m)    

 
標高は低いが御三流はなかなかの山

五番ノ沢林道から見た 御三流 

 

1/25000地形図 江 良

土が流れ落ちても立派にしがみついている樹木(Ikkoさん提供)
Ko玉氏が以前に車を止めた場所に我々も止める

 “三流”なのに“御”を付けるとは?… Ikkoさんのこの山名に対するコメントである。何も一流だけが尊ばれる存在ではない。私のような三流人間からすれば、何ともありがたい響きを感じさせてくれる山名でる。点名は御三岳だが、地形図ではとなりの健八流から引っ張られたのか御三流となっている。Ko玉氏によれば本州のどこかで山を“流”としている地域があるとのこと。私の想像ではあるが、この地域には人名が山や沢の名となったケースが多く、そもそもは健八も人名だったのではないかと想像する。○○沢を○○流れと呼ぶ習慣があったとすればこの山名も納得できる。では御三とは何か? こちらは想像もつかないが、単純に考えれば三股という考え方もありかもしれない。

 車をKo玉氏が以前に止めたという場所に置いて、同じルートから御三流を目指す。この山域では戦前・戦中にかけて軍事上必要だったマンガンの採掘が盛んに行われていたようで、この御三流頂上の南側にも鉱床があって採掘が行われていたらしい。現在もその採掘跡は残っているとのこと。一見取っ付き辛い山域だが、以前から人の往来が多かったのは事実のようだ。小沢に落ち込む小尾根に乗ればこっちのもの。木々につかまりながら微妙なバランスで尾根上に乗る。この山のイメージから無理矢理登ってはみたが、そんな無理などする必要はなく、どこからでも尾根に取り付けることを下山時に知った。

三等三角点「御三岳」と金麦 500ml缶  こんな暑い日はこれでなきゃ
三等三角点「御三岳」と金麦 500ml缶  こんな暑い日はこれ

  尾根の傾斜が緩むとすぐに尾根を巻くように古い作業道が現れる。そのまま尾根上を進んで行くのではKo玉氏のたどったルートと同じとなり、藪山愛好家としての名が廃る。そこで策を講じ、この作業道を利用、まずは頂上への距離から縮めてみることにする。順調に距離は縮まって行くが、いつしか作業道は消えて、やはりKo玉氏のとった尾根上となる。見れば前方には明瞭な尾根がせり上がっており、本当の意味での登りはここからだった。

 籔斜面は上へ上へとどこまでも続く。単純といえば単純だが、シカの踏み跡も明瞭で、山登りとはこうあるべきといった感じとなる。尾根は総じて右側斜面が切れていて、途中、斜面がスッパリと無くなり、流土で樹木の根がむき出しとなって、その根がしっかりと根付いた奇妙な光景も見られた。大鴨津川を挟んだ向かい側には先ほど登ったばかりの越エバ山の山塊が見えているが、さすがに特徴に乏しく、どれが越エバ山の頂上なのかは特定できない。その後も急な登りは続く。

 コンタ350mでやっとこの急尾根も終わり、ほっと一息。こんな山へ来る時にはいつも藪漕ぎは覚悟の上、尾根上にも続いているシカ道は期待してはいなかっただけに嬉しいものだ。頂上は平凡な樹林帯の中。三角点はIkkoさんが見つける。競っているわけではないが、この日の成績は一勝一負。眺望はまるで無いが、真っ青な空と勢いが感じられるこの時期の葉の緑、そのコントラストの美しさを満喫しながら、しばし山談義とする。結果的には時間的に健八流も狙えたかもしれない。だが、この日のうちに札幌へ帰らねばならず、急ぐ必要も無理する必要もない。健八流は下草が枯れる晩秋にでも… そんなことを思いつつ往路の急斜面を下る。(2017.7.5)

参考コースタイム】尾根取付き地点 P 9:50 →  御三流頂上 11:20 、〃発 12:10 尾根取付き地点 P 12:55   (登り1時間30分、下り 45分)    

メンバー】Ikkoさん、saijyo   

 

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