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      コップ(313.0m)

いつも気になっていた深川・コップ山

    1/25000地形図「多度志」

気がつくとこんな近くに
道路の入口に車を停める
イタドリの白い花、下を向いているから雌株とのこと
広い牧草地の遠くに見える牛の群れ

深川のコップ山、普通に日本語で考えればコップの形をした山ということになるが、ここは北海道、当然のことながらアイヌ語地名である。タップコップやキムンタップコップなど、“たんこぶ”のような地形というのが大方の見解のようだ。ここの場合はタップコップがなぜか分離、タップは地名、コップが山名となった珍しいケースである。このコップ山は旭川へ向って車を走らせていると、深川付近の通過の際にはついつい気になる山で、300mそこそこと低山でありながらも意外と大きく見えるところが何とも不思議である。付近に大きな山がないことや、方向的に留萌ポロシリ山と見間違えやすいことがその理由といえるのかもしれない。留萌ポロシリ山との違いは頂上付近の樹木の大きさを見れば一目瞭然であるが、自分が運転している場合にはとてもそこまで観察する余裕などない。

平日のこの日、雨天予想ということもあり、気楽に登れるであろうこの山を選ぶ。地形図上では歩道どころか道路が頂上付近まで走っていて、全くのお手軽山行といった感じである。地形図を見ながらこの道路の入口を探す。場合によっては頂上まで車で入ってしまうのではないかと逆の心配もしていたが、施錠されたゲートを見て、ある意味ほっとさせられる。立入り禁止の看板はなく、登山することは取り立てて禁止されてはいないようだ。ゲート付近には十分に成長したイタドリが真っ白な花を咲かせている。あまいものこさんに聞いたが、イタドリには雄株と雌株があり、上向きに花を咲かせている方が雄株とのこと。今が盛りと咲いているイタドリの花であるが、去り行く盛夏の寂しさを味わうには格好の材料といえる。さて、頂上まではせいぜい30分、頂上ラーメンの用意をザックに入れ、いざスタートである。

最初のゲートをくぐってすぐに次のゲートが現れるが、こちらにも立入り禁止の看板は見られない。このゲートをすり抜けてびっくりしたのは路上に埋まる牛の糞である。道路はあっても放牧地と全く同化してしまった感じである。遠くに牛の群れが見える。まさか…と思ったが、道路を辿って行くうちに群れがどんどん近づいてくる。気が付くと周りは牛だらけ、ホルスタインであれば北海道の牧場風景といった感じになるところだが、ここの牛は皆黒い牛ばかりで、ついヒグマの群れであるかのような想像をしてしまう。牛の習性を知っているあまいものこさんはそのおとなしい性格を説明してくれるが、やはり自分よりも大きな生き物に囲まれることは恐怖以外の何者でもない。ふと見ると赤いTシャツ姿のチロロ2さんが悠然と歩いている。こんな時に赤色とは…、下手したら突進の巻き添えになるのでは…と彼女から距離をおいて、ついつい足早となったが、彼らにはやはり人間は恐い存在なのか、ある一定の距離まで近づくと群れを成して粛々と立ち去っていった。“徐かなること林の如く”といった様子である。

コップ山頂上はもうすぐ 頂上・三角点で記念撮影

それにしても糞だらけで、その上に牛が寝ころんだ跡まで残っている。これを踏まずして、どうやってここを通り抜けることができるのだろうか…。糞から開放されるのは牧草地終点のゲートを過ぎてからである。ゲートをくぐり抜けると、しばし樹林帯の中の静かな林道といった感じになるが、大きく回り込んだ辺りから再び視界が開け、どこにでもある丘のある牧草風景となる。その一番高いところが目指す頂上である。道路を離れ膝くらいまでの牧草地の中、高みを目指して真っ直ぐに上がって行く。糞尿対策のものなのか古い柵が張り巡らされた施設跡が現われる。よく見るとその横に「コップ山頂上」の棒杭が立っていた。予想した通りのあっけない幕切れであった。当然のことながら三角点を探すが、なかなか見つからない。柵の中もくまなく探すが、アザミ科の植物が大きく成長しており、ジャージ姿では痛くてたまらない。諦めかけていたところ、あまいものこさんがすぐ横の小さな笹薮の塊の中に三角点を発見する。三角点周辺だけは牧場とは違う管理がなされているのか、笹薮が自然のまま残されているようだ。

頂上は360°の眺望で、深川市街の格好な展望台となっている。音江山地の山並が特に立派で、晴れていれば増毛の山々や大雪山・十勝連峰も望むことができるだろう。悪天予想にもかかわらず、晴れ間も見られるのはラッキーである。結局、この牧歌的な光景の中に1時間半も滞在してしまった。付近を走る列車の走行音も時折聞こえ、心地よい風の音さえ聞こえてきそうだ。盛夏には高い山で群れているトンボも、盛夏を過ぎたこの時期にはこの標高まで下ってきているようである。山の楽しさとは標高や難度による充実感だけに止まるものではない。意外にもこの小さなコップ山が改めて頂上に居ることの楽しさというものを実感させてくれた。 (2009.8.20)

 【参考コースタイム】コップ山登山口P 10:10 コップ山頂上 10:50、〃発 12:25 コップ山登山口P 12:50 (登り 30分、下り 25分)

メンバー】あまいものこさん、saijyo、チロロ2

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