<戻る

      小喜茂別(970m)

黒川の林道から小喜茂別岳を望む

黒川の林道から小喜茂別岳を望む

1/25000地形図 「中山峠」  

広い除雪スペースに車を停めるが、実は行き過ぎだった
ピークは近くに見えるが、深雪のラッセルではまだまだ遠い
頂上から見る札幌岳
小喜茂別岳頂上にて
頂上から見る(左から)烏帽子岳、百松沢山、神威岳
何台もの車で埋め尽くされていた、小喜茂別岳“登山口”

小喜茂別岳は無意根山から南へ続く主稜線上、喜茂別岳から南西へ派生する尾根上にあるコブのような山である。北西側が切れ落ちる特徴的なその山容は、一度見たらどこからでも指呼できそうだ。アイヌ語“キモーベツ”「上流の川、奥の川」が語源であるが、この川はこの山を回り込むように喜茂別岳へと向っている。交通の動脈である国道230号線が付近を走っているため、あまり奥深いイメージはないが、当時としては奥深かったのであろう。小喜茂別岳へ向う途中に通過する中山峠の標高が831mであり、標高970mの小喜茂別岳との差はたかだか140m程度である。特に展望に期待するというよりは、それぞれのスタイルで手軽に楽しめる山ということになるのかもしれない。

この10年間、冬のアウトドアの楽しみ方は多様化した。クロスカントリースキーの普及、それを一般化した歩くスキー、さらにはスノーボード、スノーシュー等、近年の健康指向と相俟ってどれも拡大傾向にある。その道先案内役となっているのがGPSの普及である。以前は長年の経験がものを言った読図も、この道具の普及によってホワイトアウトや難しい地形なども容易にクリアできるようになった。地形図によるルートファインディング力の重要性は今も昔も変わりはないが、こういった文明の利器を利用しない手はない。高度計やゴア製品については既に市民権を得ているようであるが、この辺はその普及率が関係しているのかもしれない。要はアウトドアの楽しみ方も日進月歩ということである。技術や道具のほかに、山域についても同じことが言えるのではないだろうか。今回登った小喜茂別岳がメジャー化しつつあるのには正直なところ驚いた。漁岳、狭薄山、毒矢峰、迷沢山、四ッ峰などほかの山々についても同様で、正に冬山の楽しみ方を探る時代の到来と言っても過言ではない。Web上で小喜茂別岳を検索すると相当数のページが引っかかってきた。Web上に紹介している登山者はほんの一握りで、実際にこの山で遊ぶ人間はさらに相当数いるということであろう。

中山峠で今回のメンバーと落ち合い、適当な除雪スペースを探して取り付くことにする。峠から地形図と照らし合わせながら取付き地点を探したが、シェルターを過ぎてから地形図と実際との辻褄が合わなくなる。一度もどる手もあるが、適当なところへ車を置けばそれなりにルートは取れるだろうとの思いから、敢えてそれはしないことにした。低山でもあり時間も十分である。除雪スペースは数ヶ所あり、最初に停めたところには既に先客がいる。こういった場合、もっと先にはもっと良いスペースがあるのではないかと誰しも考えるものである。実際、さらに進んだところにはさらに広い除雪スペースがあり、そこを取り付き地点としたが、結果的には少し行過ぎることになる。悪いことにスノーシューのトレースが残っていて、つい小喜茂別岳へ続くものと思い込んでしまった。

直ぐに急斜面となり深雪のラッセルに一汗かく。一登りすると林道が現れ、スキーのトレース跡も続いている。地形図にない林道と思い込むが、進んで行くうちに見えてくる小喜茂別岳の角度から黒川の右岸側の林道にいることに気づく。であればと検討した結果、とりあえず林道終点付近まで進み、そこから黒川を渡って、小喜茂別から西に伸びる尾根の末端に取り付き、南斜面に回り込んでピークへ至るルートを考える。林道を進んで行くと、黒川の方向から上がってきたトレースが交わり、それを利用させてもらうが、直ぐにそのトレースも喜茂別岳方向へと消えてしまう。後で知ったがこのトレースはHYMLの仲間であるGANさんパーティのものであった。トレースが無くなった林道の途中から、トラバース気味に取り付き予定の尾根末端を目指す。黒川は意外に水量は多いが、この時期であればスノーブリッヂは安定しており、難なく通過する。

取り付きからは急斜面に一汗かく。徐々に傾斜は緩くなり、視界も開け、正面には崖を纏って特徴的な姿の小喜茂別岳が顔を出す。見た目には近い感じであるが、この日の重い深雪ではそう簡単には距離は縮まらない。ラッセルを交代しながら南へ伸びる緩い尾根へ少しずつ近づいて行く。ふと見ると当初予定していた右手の尾根から登山者が登って来る。一人を先頭に少し遅れ続々と後続が続いている。さらに南斜面へ入ると別方向からも別の登山者が現れる。こうなると先陣争い状態であり、だれが一番乗りでもよい話ではあるが、ちょっとした競争心が疲れを忘れさせてくれることは事実である。南側の緩い尾根を上り詰め、この日の初登頂パーティとなる。狭い頂上は後続パーティに譲り、しばし山座同定を楽しむ。

下降は最初の予定ルートから登頂したパーティのトレースを使わせてもらうが、飛び出した地点は最初に我々が車を停めた除雪スペースであった。朝は一台しか先客のいなかった除雪スペースも何台もの車で埋め尽くされており、小喜茂別岳の、今の人気の高さを実感させられた。(2006.1.26)                

【参考コースタイム】除雪スペース 8:35 → 小喜茂別岳頂上 11:45、〃発 12:05 →  最初の除雪除雪スペース 12:40  

メンバーSaijyo、Ho氏、Ta氏、Moさん、チロロ2

<最初へ戻る