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     小鉾岳(791.7m)

 

 1/25000地形図「砂蘭部岳」「野田追岳」

登山口付近の牧草地から見る小鉾岳(頂上部は見えていない)
登山口には3台分ほどの駐車スペースがある
落葉だらけの登山道を登る

 道南にあって特異な山容の山と言えば、大岩壁が見事な雄鉾岳がその一つに挙げられると思うが、そのミニ版とも言える山が小鉾岳である。高さや“小”の文字からここでは雄鉾岳のミニ版と表現したが、山容の持つ迫力は決して雄鉾岳に引けを取るものではない。以前、紋内岳へ登った際にこの山の山裾を通過したが、雪の付いた姿には圧倒されるものがあった。ガイドブックやネットにも数多く紹介されていて、以前から秋の端境期にでも一度訪れたいと思っていた。読みは雄鉾と同じオボコだが、区別するために小の字が付けられたとのこと。おそらく、高さが雄鉾岳よりも低かったためにそうなってしまったのだろう。

  アプローチは他サイト等に詳しく載っており、私は「楽しい山登りのホームページ」管理人・JAJAさんの記録を参考にさせてもらったが、情報が無ければ登山口の発見は厄介だったと思う。登山口から少し進むと急な登りとなる。落葉が敷き詰められた尾根上に真っ直ぐ続く登山道は滑りやすい上に息つく間もなく、ぐんぐん標高を上げて行く。この心臓破りの急坂では、さすがに着ていたヤッケもすぐにザックへと仕舞い込んだ。ふと見ると、足元にはコクワや栗などが豊富に落ちている。不作と言われた今年の秋、報道写真等で知床の痩せたヒグマが映し出されて話題となったが、ここ道南では山の食糧事情もちょっと違うのかもしれない。もっとも、今年は季節が半月ほど遅れているとも言われており、そう考えれば知床のヒグマも今頃は十分にエサを食べることが出来たのではないかと期待するが、果たして実際はどうか… 対岸の砂蘭部岳と横山の中間から流れる沢は軽く十メートル以上と思われる見事な滝となって落ちており、その水音が晩秋の静かな山中に響いている。

細い尾根道を過ぎると 平らな笹の中の一本道となる 岩峰と右側手前の平らなところが三角点頂上
頂上から見た紋内岳付近 今日はここまで、手前の小岩が行手を阻む

 途中、かなりの傾斜の登りとなって木の根や笹につかまりながら登るが、すぐに平らな尾根歩きとなる。振り返ると登山道入口付近の牧草地が季節外れの妙な青々しさで広がっている。登山口の標識ではこの八雲営林署・小鉾岳歩道は2150mとなっている。頂上までの標高差を考えれば急登が何時までも続くはずはない。この山はヒグマの生息密度が濃いとされていることもあって、イメージ的には薄暗い登山道を想像していたが、実際来てみると全体的に明るい感じである。あまり地形図を見ていなかったために、どの辺りが616m標高点だったかは記憶にない。途中で右手に見えていた砂蘭部岳が背後になったので、そのあたりが616m標高点だったのだろう。険しい山との印象だったが、密生した背の高い笹の中を綺麗に刈り分けた一本道となる。札幌近郊で言えば無意根山・千尺高地から先の平らな辺りでも歩いているような雰囲気だ。途中、ガスがかかった頂上部の岩峰が見えるが頂上はもう少し先である。しばらくは平凡な登山道が続き、少々退屈ではある。

 ルートが左側に曲がったところで、この日唯一の登山者とすれ違う。こんなメジャーな山でも、時期が少しずれるだけで、登山者はめっきり減ってしまうようである。「頂上はもうすぐ」とエールを送られるが、彼には我々がよほど疲れているように見えたのかもしれない。そこから少し登ったところで頂上部全体が目の前に現れた。左手が崖となって落ちていて、さすがに険しいと言われている小鉾岳といった雰囲気となる。この先、左側が少しずつ削られて、残っている部分がわずかとなった尾根道の通過となるが、余計な想像さえしなければそれなりにしっかりとはしている。そこからの登りがこのコース2度目の急登で、飛び出したところから少し進んだ地点で頂上標識が現れた。前方に聳える高い岩峰にはまだ届かず、その呆気ない頂上到着に「えっ!、まさか…」と思ったが、三角点があるので間違いではないようだ。高い岩峰を目前としていては頂上到着といった気分にはなれない。地形図を開いて等高線の数を数えたが、岩峰も三角点ピークも大差はないように描かれている。実際、遠くから見れば大差はないが、三角点頂上に立てば、どう見てもここよりは高い。こちらで790m、少なく見積もっても標高800mは越えているだろう。

三等三角点「小鉾岳」

  何となく岩峰に向って踏跡らしきものが見えるので、少し進んでみることにする。スタートから木々にしがみついての前進となる。両側ともスッパリ落ちていて、仮に木々がなければ綱渡りそのものだ。正直なところ、覗き込む気にもならないし、下手したら吸い込まれるかもしれない。進む先には小岩がナイフリッジ上を占拠しているところがあり、背の低い潅木が周りに見える程度。さすがに、しっかりとした樹木が無ない状態でのこの小岩の通過は、遠慮したい。まだ先のある山人生、今日はここまでとした。帰りがけ、三角点頂上を見るが、どうしてどうして、一見平らに見えていても周りはスッパリ落ちている。

 三角点頂上に戻ってほっと一息。道南の山について乏しい知識ながらも山座同定を楽しむ。自分が以前に登った紋内岳と横山は何となく判るが、両山とも頂上部がガスっているため、しっかりと確認はできない。特徴的な砂蘭部岳も同様である。野田追岳は持って行った地形図の範囲内だったので確認したが、後で調べたところ乙部岳や鍋岳も見えていたようである。何となく不完全燃焼を感じる小鉾岳登頂だったが、今後もまだまだチャンスはあるだろう。次回は装備のみならず、気持の方もしっかり準備して、さらなる高みを目指したい。(2012.11.11)

【参考コースタイム】 登山口 8:00 小鉾岳頂上 9:25、〃発 10:00 → 登山口 10:55  (登り1時間25分、下り55分)   

メンバーsaijyo、チロロ2

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