「Ganさんが遡行(ゆく)北海道の沢登り」 岩村 和彦 (2006'7/6発売)
肩の凝らない沢の楽しみ方が満載の一冊。とは言え、沢における基本的な注意点も自然な形で盛り込まれ、読み込むことによって自然と学習されるところが凄い。沢登の基本はまずは体力であることは筆者の経験の上から述べられており、全く異存ないところである。本書の中では、有名どころもあれば、マニアックと呼ばれる沢も全く同等に扱われていていて、筆者の分け隔てない沢への想いが滲み出ている。体力、経験、仲間、そして楽しさ、すべてが何時も満たされている筆者ならではの山行記録、読む者にとっては臨場感たっぷりであり、ついついGanさんパーティの一員としてその沢の遡行に参加しているかのような錯覚さえ覚える。
オールカラーといった装丁がまた読みやすく、掲載写真を見ているだけでも十分に満足できる一冊である。
【掲載されている沢】
珊内川本流、伊佐内川、星置川〜発寒川、湯の沢川、幾春別川・左股沢、札的沢三の沢・左股、札的沢三の沢・右股、札的沢一の沢・左股、幌小川、ポンショカンベツ川、白井川本流、千呂露川1014左沢、沙流川・ニセクシュマナイ沢、パンケヌーシ北東面直登沢、ニオベツ川南面直登沢、ニオベツ川580右沢、ニオベツ川上二股の沢、コイボクシュメナシュンベツ川、ニオベツ川南西面直登沢、ヌピナイ川右股川、豊似川左股川、知内川奥二股沢右股、太櫓川北北西面沢、臼別川、トムラウシ川西沢、トワウベツ川・盤ノ川など
(共同文化社刊)/岩村 和彦 著
「知床半島の山と沢」 伊藤正博 (2005'9/22発売)
当サイトに度々度々訪問して頂いている網走・伊藤氏の著書である。全道を対象とする一般的な山のガイドブックを書店にて見かけることは多いが、これだけ詳しく知床半島だけにスポットを当てて、ルート、その他を詳しく紹介している書物はあまりない。伊藤氏はガイドブックではないと同書に記しているが、同山域に入山するに当たって、知床の登山事情や現在の様子等の情報が文面を通して実に良く伝わってくる。喜怒哀楽を表現したくはなかったそうであるが、控えめに滲み出す「喜怒哀楽」の部分が余計に臨場感を感じさせ、つい読み入ってしまうから面白い。なお、地形図上に山名が載っていないラサウヌプリ、知床岬等の記録も見ることが出来る。
224ページ、写真150枚入りで尾根・沢の70ルートが記録されており、秘境・知床のロマンを大いに描き立ててくれる貴重な一冊と言える。早い時期の購入をお勧めしたい。
【掲載されている山】
海別岳、ラサウヌプリ、猫山、遠音別岳、ペレケ山、知西別岳、天頂山、羅臼岳、三ツ峰、サシルイ岳、オッカバケ岳、南岳、知円別岳、硫黄山、東岳、ルシャ山、トッカリムイ岳、知床岳、ポロモイ岳、ウィーヌプリなど
(共同文化社刊)/伊藤 正博 著
「ガイドブックにない北海道の山50」
〜私の雪山ハイキング情報 八谷和彦
「未知の山の情報源」
私がホーム・ページを立ち上げるきっかけとなった本である。どの山もガイドブックには載っておらず(カスベ・メップ岳は本書に断りあり)、貴重で紳士的な記録集である。掲載されている山は著者の数多い山行(道内500以上のピークを踏破)の中から厳選されたものばかりであり、それぞれが個性的な山々である。ハイキング情報とは謳っているが、サブタイトルが示すように「冬山ハイキング」であり、山の基本的な技術は言うまでもなく、冬山技術にも熟練していることが大前提の「ハイキング」である。
著者は、情報の曖昧さには大変厳しい人である。記述の一つ一つに細心の注意をはらい、調査し確認をした上で載せている。本書では概念図と本文の記載内容が一致しているので、地形図上での確認がしやすい。また、自身の登頂したルートの紹介ばかりではなく、山自体の紹介もあり、そういった意味で、大変信頼出来、また興味深い一冊である。
是非、50山の次を期待したい、と思う本である。
【掲載されている山】
阿女鱒岳、毒矢峰、多峰古峰山、白老岳、フレ岳、丹鳴山、泥ノ木山、オコツナイ岳、カスベ岳、メップ岳、利別岳、太櫓岳、礼振峰、惣芦別岳、屏風山、ハッタオマナイ岳、幌向岳、三角山、雲知来内岳、二岐山、妙敷山、糠平山、雁皮山、ピラトコミ山、ルイベツ岳 、 貫気別岳、リビラ山、豊似岳、後旭岳、熊ヶ岳、小旭岳、凡忠別岳、シビナイ岳、前トムラウシ山、下ホロカメットク山、境 山、トウヤウスベ山、大麓山、雲霧山、無類岩山、樹海 峰、温泉岳、東丸山、南クマネシリ岳、於鬼頭岳、天塩富士、札滑岳、留萌ホロシリ山、北見富士、阿寒フップシ岳 〜以上50山
(自費出版/制作協力
北海道新聞社出版局)/
「気軽に北の山」 百々瀬 満
道新フレッシュ (2002.2.14)
「人生の転機に記す自分史」
「山岳スキー同人・炎の会」主宰の百々瀬満さん(57歳)が、このほど自身の登山記録を記した本「気軽に北の山」(文芸社刊)を出版しました。
百々瀬さんは、岳友サンポ会、東人岳人倶楽部、スキーアルピニズム研究会、札幌山岳会などを経て山登りの基礎を学び、「自由な心で山に登る」をモットーに北海道の山々を楽しんでいます。
「人生の転機にさしかかり、何かを世に残したいという思いと、長年の夢をかなえたくて」という一念で書かれたこの本は、北海道の山を登り始めた昭和五十八年から平成六年十月までの、膨大な登山記録をもとにしたエッセイ。
岩場から滑落したり、蜃気楼のような錯覚を見た体験などが、心理描写と共に臨場感たっぷりに記載されてあり、登山や山岳スキーの醍醐味が伝わります。
ヒグマと遭遇体験も
「山に登るときはほとんど一人」という百々瀬さんは、五回もヒグマに遭遇して助かるという経験の持ち主。本の中には、逃げていった直後のクマの足跡がくっきりと残る生々しい写真も掲載されています。「クマだって人間が怖い。私を見てみんな逃げていきました」と豪快に笑う“山男”
本当の意味での「秘境」を紹介している本
最近の中高年登山ブームのせいか、書店には北海道関係の山のガイドブックが目に付く。その殆どが、だれでも行ける夏道のある山であり、一部の有名な山のみの紹介となっている。 北海道ではだいたい100座前後あり、何処へ行ってもシーズン中は一般登山者でにぎわっている。北海道の場合、有名な山の周りには意外にひっそりとした山が数多く残されており、スキー登山、あるいは沢登りといった登山技術を習得することによって、これらの山々に足を踏み入れることが可能となる。百々瀬氏の「気軽に北の山」では双珠別岳、1415峰(通称:夕張マッターホルン)など、日本では数少なくなった本当の意味での「秘境」を紹介している。
(文芸社刊)/