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       立山(307.1m)

国道から見た錐立山

 1/25000地形図「三 渓」

ゲート手前の林道上に車を停める
急な北斜面を登るKo玉

 「霧立峠」という清涼感ある地名は、日常的にカーラジオを耳にしている北海道のドライバーであれば誰もが知っている峠の名である。つい先日も崖崩れで長期間不通となっていたため、定時の道路交通情報で毎日のように耳に飛び込んできていた。ところが、それは何処かと聞いてみると、意外に正確な答えが返って来ないことが多い。それだけ、実際にここを通過するドライバーが少ないということだろう。「霧立」の起源だが、峠からは少し離れた現在は住む人のない地区名で、そこに聳える「錐を立つべき地」からの命名と思われる錐立山に、山間の地で霧が立ち込めることが多いというこの地区特有の気象条件が絡み、この地名を生んだようである。夏の暑い時期であれば、その名称から連想される澄み渡った空気に、つい憧れを感じてしまうのは私だけではないだろうと思う。錐立山だが、東側がスッパリと切れ落ち、見る位置によっては、正に“ごくわずかの場所”しか残っていないような307mの急峻な里山である。特にルートは考えず、その場の臨機応変な対応でこの山のピークを落とそうと現地へ向かう。

 霧立峠側から古丹別へと向かい車を走らせる。ちょうど錐立山が古丹別川を挟んで真正面に見える地点はパーキングエリアとなっていて、かつてはここに霧立小学校が建っていたそうである。これだけ存在感のある山であるから、おそらくこの小学校の校歌にも錐立山は登場していると思われ、どのように歌われていたかを知りたくていろいろ探してみたが見つからなかった。機会あれば苫前町の郷土資料館に行って尋ねてみたいと思っている。峠方面からの場合、このパーキングエリアは行き過ぎで、400mほど戻って林道へ入る。国道から約500mで下霧立林道のゲートとなる。

  山の北側で日陰のためか、総じて暗い感じの林道である。ゲート付近から頂上まではGPSでわずかに440mとのこと。北斜面は短いが間違いなく急である。林道があるということは当然支線林道や作業道は付きもので、作業道はないものかとヤシコワンナイ沢出合付近の尾根末端まで行ってみる。だが、適当な取り付きは見つからない。午後からは雨予報、残り時間を考えれば悠長なことはやっていられない。結局、山の標高と樹林帯の鬱蒼とした様子を考え、樹林さえあればどんなところも登れるはずと、440mの北尾根から登ることに決める。決まってしまえば速いもの、Ko玉氏自慢のGPSで一番近いとされる地点から尾根に取り付く。

錐立山頂上にて 焼尻島をズーム
頂上展望は藪が邪魔して良くない 四等三角点「伊勢」

  取付きは急だが、尾根に乗ってしまえばいつもの藪尾根登高、草木につかまりながらも標高はぐんぐん上がって行く。先頭を交代、遅れ気味のチロロ2さんのすぐ前を歩くことにする。ところが、離されたと思っていた先頭を行くKo玉氏が何やら我々を待っている様子。二番手のYabuさんも一緒である。見れば急な岩稜が彼らの行く手に立ちはだかり、行き詰ったようだ。そこの突破なくして錐立山の登頂はありえない。わずかな区間だが、両側がスッパリ切れ落ち、岩稜上にはわずかな潅木が生えるのみだ。全体重さえ乗せなければ越えれるかも…と考え、空身なら突破できると確信する。ところが、リーダーのKo玉氏はトップにYabuさんを指名、彼は果敢に登攀を開始する。それを後から見ていたチロロ2さんがすかさず止めるように呼びかけた。見た目よりかなり悪いようだ。潅木も怪しく、岩も脆いようである。仮にこのわずかの区間が突破できたとしても、次に何が現れるかは正にギャンブルとしか言いようがない。Ko玉氏も珍しく中止しようと言っている。

 取付いていたYabuさんはクライムダウン、登る以上に微妙な感じである。上からは見えないようなので、降ろす足の位置を下から指示して何とか無事に下りてくる。しかしYabuさんは冷静に、この岩壁の弱点を見ていたようだ。岩壁直下のテラス状を20mほど右にトラバースすれば、木々につかまり上部へと抜けられる岩壁の窪みがあるとのこと。途中の倒木には見事なヒラタケが見えている。テラス状の下は急斜面、つかまるものが無いため、気休めかもしれないが枯れ草につかまり窪みへと移動する。予測した通り、木々にしっかりつかまりながらも無事に上部へと抜けることが出来た。短い中にも気の抜けない核心部であった。

ボリボリの群生を発見

  岩壁の上には踏み跡のような形跡があり、それを登り詰めて頂上に到着する。途中、気を抜こうものなら何処まで落ちていくやら見当も付かない断崖が足元に広がり、思わず木々を握りしめる場面も数ヶ所あった。頂上には四等三角点「伊勢」が埋まっていて、すぐ近くには林班界を示す標識も埋まっている。展望は決して良いとはいえないが、木々の間から海上に浮かぶ焼尻島が見えるのは何とも印象的である。

 下りはこの岩壁上の踏み跡をそのまま下れば良いだろうと下降を開始するが、下って行く先で、どうルートを取っても全て下ることの出来ない急斜面となる。前方に見える木々は小さく、遥か下方に広がっている様子。何とも行き詰まり感たっぷりだ。正に梯子を外された格好である。なるほど、このルートから登る人間はいないと実感する。今さら頂上へ戻って緩やかな西尾根へ向かうには、下り坂の天候のこともあるし、第一面倒くさい。覗き込んで、地形的に下れそうな地点にあたりを付け、そこまで戻ることにする。あたりを付けた場所はこの辺だったと覗き込むと、先ほどのヒラタケが見える。到着したのは、我々が登ってきた岩壁の窪みだった。逆を言えば、北斜面にはここしか突破口が無かったということである。ここを登っていたことが功を奏した格好だ。下降は登った時ほどの怖さはなく、意外にすんなり崖下へと下り、ほっと一息。

 登った尾根筋は判り辛く、別の尾根へと入り込む。Ko玉氏はGPSを見ながら「違う」と言っているが、地形図を見る限りではこちらが緩く、降り立つ場所がゲート付近というのが魅力的だ。尾根筋を外さぬよう慎重にルートを取り、最後は草付の急斜面を沢へと降りる。すぐに林道に出たが、チロロ2さん初め後続は帰って来ない。途中、取りきれない程のボリボリ畑となっていては当然かもしれない。ともあれ、短いなりにも変化に富んだ440mであった。(2012.10.14)

【参考コースタイム】 林道ゲート手前 P 11:05 錐立山頂上 12:25、〃発 12:35 → 林道ゲート手前 P 13:30  (登り1時間20分、下り55分)  

メンバー】yabuさん、Ko玉氏、saijyo、チロロ2

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