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      木無山(725.0m) 

共和ダムから木無山を望む

1/25000地形図「茅 沼」「銀 山」

林道の途中に車を置く
水量のほとんどない小沢を進む
木無山頂上から雷電海岸と岩内の町
辰五郎川も水量は少ない

「ケナシ」の山名は多く、木無山も毛無山も同じ意味で、北海道の場合はアイヌ語のケナシ(林野、木原・湿地・原野)からきている。共和町のこの木無山は位置的には八内岳の前衛峰のような山で、積雪期に登られることが多いようだ。Ko玉氏が函館へ帰る途中にちょっと一山を、ということで、標高が700m超えということもあり、以前にやり残していたこの山を選ぶ。何度か訪れている辰五郎川からのアプローチで、沢詰+藪漕ぎにて無雪期の登頂を目指す。

林道は左岸の高いところに付けられているため、辰五郎川へは一度下ってからの取り付きとなるが、小沢を利用すれば難なく辰五郎川へ降りることができるし、帰路を考えても効率が良い。辰五郎川へ下り、イタドリを折って帰路の目印とし、予定している木無山・東面の直登沢出合を目指す。3mほどのプールを持った滝が現れ、右岸のスロープ状を登ると直ぐに直登沢の出合となる。この沢の流域は狭く、極端に水量が乏しいため、うっかりしていると見落としてしまいそうである。ここ数日間に降った雨のため、辛うじて水流は残っているものの、普段は枯沢といった感じである。出合から直ぐに、二段7〜8mの滝が現れる。苔むして立派だが、如何せん水流は苔の隙間から滴っている程度である。

沢底にはちょろちょろと水流があり、上流へと続いている。シダ類を始めとする下草で足元が見えず、屈み気味に下草を掻き分けながらの登高である。不自然に折れたフキ等を見る度に沢の命名の起源となった「辰五郎さんがクマに襲われた沢」ということが思い出されるが、おそらくは急な水流によってへし折られたものであろうし、現在のクマの密度は当時とは比較にならないだろう。ナメ床が意外に多く、スパイク地下足袋の靴底では気が抜けない。時折、ナメの小滝が現れ、その都度笹を頼りに上部へと進んで行く。途中には4〜5mほどの岩盤となった滝(水があれば)も現れる。そもそもは短い沢で、ぐんぐん高度を上げて行くことが実感できるところが楽しい。

完全に枯沢となった590m二股で安易に右へ入る。左へ入ればそのまま藪を漕いで頂上であったが、少々北側にずれてしまったようである。気温は30℃を下回ってはいるものの湿度が高く、こんな日の藪漕ぎは辛く長く感じるものである。尾根上を経由して頂上までは距離にして200〜300mといったところであるが、わずか1mの藪漕ぎもこの炎天下では重労働である。向ってくる根曲がり竹につる植物も絡んでいて、さらには急斜面とあっては自分の年齢や体力との相談となる。若い時であれば、“困難”とか“常識外れの行動”はモチベーションを上げる意味での格好な材料であったが、50歳を越えた現在では分をわきまえることこそ成長を遂げた?山ヤの証と思っている。装備が無いKo玉氏には長袖シャツの代わりに雨具を提供したが、さすがにサウナ状態のようである。そうは言っても背に腹は代えられず、先頭を交代してもらう。薮漕ぎは先頭も二番手もあまり変わりないと考えられがちだが、どうしてどうして、絡んだ藪を先頭が振り解くだけでも二番手以降の負担はまるで違ってくる。

藪の中の三等三角点 木無山頂上にて

上がり気味だった体温も落ち着いて、何とか稜線上となる。辺りは相変わらず背丈を越す藪の中だが、頂上までは100m足らずといったところである。急斜面とつる植物の二要素が消えただけでも余裕は大分違ってくる。先頭はKo玉氏で、三角点の臭いに引き付けられたのか、声はすれど姿は見えずといった状況である。この「三角点の臭い」、そもそもは生ものではない三角点に臭いなどあるはずもない。幾多の経験によって、設置する側の視点でものが見えてくるところにその秘密がある。設置当時と多少状況が変わっても、それを折り込んだ読みもできるようだ。中には設置者の地形への読みの甘さからか消滅したものや、いいかげんさからか途中の傾斜地に設置したものもあり、そんな時にはさすがのKo玉氏も発見できないようである。

木無山・三角点の第一発見者はやはりKo玉氏であった。相変わらずの藪の中であったが、斜面の微妙な変化を読んだようである。藪の合間からは羊蹄山やニセコの山々、岩内の海岸などが見られ、藪が沈んでしまう積雪期であればきっと見事な眺望が展開することだろう。日差しが強く、笹の根元でタオルを被り、しばしの休憩である。下りは南東へ伸びる尾根右側の共和ダム方面へ入り込まぬよう注意すれば、自然に往路の沢へ戻ることになる。

ちょっと一山と軽い気持で挑んだ木無山であったが、Ko玉氏にとっては大いなる一山となった。私としても八内岳山行の折にやり残していたこともあり、この方面へ出かける時にはいつも引っかかりのある山であったが、時期の選択やそのアプローチなど、ついつい二の足を踏んでやり過ごしていたというのが正直なところである。今回登って言えることは、まずは今日こそピークを落そうと出かけて行くところに、おのずと次の展開は開けるようである。何かの宣伝ではないが、とにかく「今日勝て、勝て今日(家庭教師)」なのだということに尽きるようだ。(2008.8.31)

【参考コースタイム】林道 P 11:00 直登沢出合 11:15 木無山頂上 14:05、〃発 14:30 直登沢出合 16:00 林道 P 16:20  (登り 3時間5分、下り 1時間50分)

メンバー】Ko玉氏、saijyoチロロ2

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