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   吉凶岳(1208.4m)                 

/25000地形図 「夕張岳」「石狩金山」

除雪終了地点(地図上の最終人家)に車を置く
結梗川は口を開けているが、何度か渡渉を繰り返す
結梗川は口を開けているが、何度か渡渉を繰り返す
.799付近のテン場では雪でブロック塀を作る

  「吉と出るか、凶と出るか、吉凶岳」計画した時から考えていた書き出しである。面白かったのは出発前にメンバーの一人が全く同じセリフを言っていたことである。山名の影響か、今年の運勢を占う山行と、つい考えてしまうから不思議である。山を始めた頃から、道路地図でこのおみくじのような山名は知っていたが、先日初詣を済ませたばかりのこの時期、何とも時節に相応しい山名である。この山の北面を流れる沢には結梗沢の名があり、当て字のさらに当て字と思われる。吉凶岳は夕張山地の東側に位置し、夕張岳金山コースからは近いが、夏道が無いため、登頂の話しはあまり聞いていない。また周辺は夕張山地特有の複雑な地形で、何処にルートを取るか、出発前から地図上で楽しむことが出来る。今回は正攻法で、林道から結梗沢を約1km程進み、一番緩やかと思われる北尾根にルートを取ることにする。

 出発日は吹雪模様で、吉凶の凶の文字ばかりが意識され、何となく気分も萎縮しがちである。地図上最終人家(除雪最終地点)で狩猟グループに会い、誤射への注意をお願いして出発する。約3.5km進んだ.361mのポントナシベツ川出合いまで、狩猟グループが前日に歩いたトレース跡を利用させてもらうが、以降は深雪のラッセルとなる。メンバーが少ない時はかなりきついと思うが、今回は6名が交代々で先頭に立ったため、約5km先の結梗沢出合いまでは車止めから約3時間半で到達する。.426の結梗沢に掛かる橋から、沢沿いに渡渉を繰り返す。水流は見えるが所々積雪でつながっており、スキーを濡らすことも無く北尾根末端へ行くことができた。結梗沢の渡渉は計画段階で最も心配だったところである。尾根末端より少し上流の方の斜面が緩いため、そこから取り付くことにする。

吉凶岳頂上に立つメンバー 頂上から登ってきた尾根を望む。後方は険しい1146m峰
雪庇の下は快適な斜面が広がっている 何とか車止めまで戻ってくる。後方は吉凶岳

  順調なので1日目に頂上を落とそうという話しも出たが、山中泊の装備を担いで約10kmもの道程をラッセルしてきたため、確実性を追求するリーダーの的確な判断で、時間的には少し早いが予定通り.799付近までとする。途中760〜770m付近に風の弱そうな所を見つけ、テン場とする。メンバーが自分の所属する山岳会で日常よくやっているブロック作りを始める。これがすばらしい。気温が低いため雪もサラサラであるが、スキーで軽く踏み固めた後、足でさらに踏み固め、時間を少し置く。その後、自然に固まってから鋸で切ってスコップで取り出す。形の整った見事なブロックを次々と切り出すことができ、約1時間足らずで立派な城壁の完成である。完成度の高いテン場作りも山中泊山行の楽しみの一つである。

 この時期は日が短いため、十分な睡眠が取れ、日頃の睡眠不足を山で解消することが出来る。翌朝は5時起きの7時出発とする。メンバー全員が新ピークへの挑戦である。朝方の天気は曇り模様であるが、山陰ははっきりと見ることが出来る。テン場を出て間もなく、.799手前の小さなコブを確認する。そこから.987までは傾斜のある深雪の辛いラッセルである。.987からは雪庇の登場となる。雪が飛ばされ、カリカリとなった部分と腰までのラッセルとなる吹き溜まりの部分が交互に現れ、苦労させられる。雪庇上の凹凸を繰り返す内に左手に東尾根が近づき、頂上への近さを実感する。振り返れば、1146m峰の水墨画に出て来るような険しい姿が印象的である。テン場から約2時間で、いよいよ頂上である。メンバーの一部は既に頂上に立っているが、リーダーは直下で佇んでいる。どうしたのかと尋ねたところ、「この一時が自分にとって良い時間なんですよ…」との返答。何百もの頂きを踏んできたリーダーの、新ピークを踏む喜びの味わい方のようである。頂上が近づく頃からは天気も回復し、頂上からは金山湖や鉢盛山の大きな姿を望むことが出来た。陽が射し、ダイヤモンドダストが柱状に美しく輝く、神秘的なサンピラーが出迎えてくれる。この状況を考えると今回の“おみくじ山行”は大吉といったところか?…

 下降は雪庇の上の通過を考え、シールは貼ったままとする。雪庇の張り出した方には樹林の少ない滑りやすそうな斜面が広がっているのを登りで確認しているので、ある程度傾斜が緩やかになったところから、この斜面へ降り、シールをはずす。数日間の寒暖差を考えて弱層はないと判断する。実際に入ってみて、傾斜も見た目程はなく雪質も最高で、.987の雪庇の現れた地点まで一気に滑り降りることが出来た。 登りのラッセルで苦労した斜面も難なく通過し、1時間弱でテン場到着である。この後の約10kmの長い林道歩きも吉凶岳ピークを踏んだ満足感と大吉を引き当てた?喜びのためか、あまり苦にはならなかった。 (2003.1.18〜19)

【参考コースタイム】1/18 地図上最終人家(除雪最終地点) 7:50 → ポントナシベツ川出合 9:04 → 結梗沢出合 11:22 → 760〜770m付近(テン場) 13:38   1/19 760〜770m付近(テン場) 7:11 → 吉凶岳頂上9:26 、〃発 9:38 → 760〜770m付近(テン場) 10:30 、〃発 11:06 →  結梗沢出合 11:57 → 地図上最終人家(除雪最終地点) 14:31   

【メンバー】L.hachiya、yabuuchi、ko玉、saijyo、チロロ2、nakayama

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