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     木禽岳(994.6m)・阿幌岳(977m)

イユダニヌプリ方面から望む木禽岳(左)と阿幌岳(右) 2010年5月撮影

 1/25000地形図「木禽岳」

北見市街にあるオホーツクビール園、地ビールが美味い
林道入口まで何とか車が入る
しばらくは単調な林道歩きとなる

  道内には面白い山名の山が多いが、この木禽岳(ききんだけ)と阿幌岳もその仲間といえるだろう。木禽は“飢饉”を、阿幌は“アホろ” をイメージし、山名としてはあまり格好の良くない二山である。キキンはアイヌ語のイワキキンニ(山地のエゾノウワミズザクラ)で、ナナカマドのこと。オンネキキン川の水源の山ということでこの名になったとのこと。一方、阿幌は旧称がアツポロヌプリで、オヒョウニレの繊維からの名称らしい(1995年/オホーツク文化・資料館紀要4より) いずれにしても、両者とも北海道の野山で多く見られる樹木の名であり、アイヌ語の音と宛て字の組み合わせで、こんな面白い山名になったようである。この両山、山容はかなりのっぺりとしていて、険しさをイメージさせる嶽(岳)とは程遠い感じがする。木禽岳の西側は津別岱とも呼ばれていたようで、そんなところからもこの山の穏やかな地形が容易に想像されよう。以前は地元の学校登山にも利用され、登山道もあったとのこと。古い地形図には山小屋も記されていたようだ。

 我がメンバーのチロロ3さんが道南の貧乏山と共に気になっていたこの両山、遠方だがGWということで計画の実行となる。当然のことながら私もこの計画に乗ることにした。今年のGWだが、オホーツク海に低気圧が居座っているために西高東低の気圧配置となり、悪天続きとなってしまった。札幌を出る頃は強風だったが、雨は落ちてはいなかった。ところが、阿寒へと向かう道中で積雪となり、釧北峠付近では久々の圧雪路面の走行となる。完全に真冬に逆戻りである。相生の道の駅で夜を明かすが翌日もさらに荒天模様、これでは山へは入れない。こんな日はyoshidaさん (北見在住)を誘ってオホーツクビール園へ行こう! 全員一致で即座にこの日の予定が決まる。GWの余裕ある日々ならではの贅沢さで、日常の忙しさが嘘のようである。

 仕切りなおしの翌日、天候は今ひとつだが強風は収まり傾向。ルートは樹林帯の中が主で、稜線歩きは少なそうだ。せっかく道東までやってきたのだからと、満を持して木禽岳へ向けて相生の道の駅を後にする。林道は積雪状態だが、林道入口までは何とか車で乗りつける。無雪期であれば、頂上付近のかなりのところまで車が入れるとのこと。もっとも、せっかくの初見の山であり、ここから歩く方が登ったという充実感を味わうことができるのは確かである。林道は予想外の積雪で、この時期としては珍しく踝までのラッセルとなる。厳冬期の雰囲気が漂うホロカマハシリ川沿いに続く林道を進む。

林道を離れ、いよいよ最後の登り (写真;山遊人さん提供) 木禽岳頂上は森林の中のポコだった

 木禽岳を離れ、稜線上を阿幌岳に向かって進む   (写真;山遊人さん提供)

阿幌岳頂上の展望は良さそう、だがこの日は何も見えず                                             (写真;山遊人さん提供)

 入山地点への地図は持ってこなかったと勘違いしていたため、進みながらもなかなか地形図と現在地が一致しない。休憩地点で山遊人さんに現在地を尋ねて見たところ、予想もしていなかった地点を指差した。現在地を基点に考えれば確かに全てが一致する。もちろん、入林地点もしっかりと載っていた。恥ずかしい話しだが、地形図を90°間違えて見ていたようである。地形図を手に持って先頭を歩くことが多い私だが、後を歩く場合にはつい気が緩んでしまうというのが本音、休憩地点からは先頭を歩かせてもらう。“お客さん”という意識を頭の中から一掃させるには、やはりこれが一番良い。林道とはいえ、斜面を横切るところは何となく雪崩そうで、心なしか気が急いてしまう。きっと、こんな緊張感が良いのだろう。

 林道の傾斜も増し始め、途中からは大きく蛇行する林道をショートカット、上部を通過する林道に飛び出す。地形図を見ればいよいよ詰めの様子、ここからは木禽岳頂上へと向かって真っ直ぐに進むことにする。斜面を横切りつつ進み、やがて右側の稜線が近づく。風が強いので稜線上へは上らず、平行して斜面を進む方が消耗が少ない。鬱蒼とした平坦な樹林帯ではやはりGPSが威力を発揮する。500m、400m … 100m、最後くらいは稜線からと、稜線上に飛び出したが、そのまま「目的地点に到着」の表示が出ても頂上とは思えなかった。半信半疑で周りの様子をじっくり観察するが、ここより高い地点はない。森林の中の少し小高くなったところがこの山の頂上であった。藪は積雪に隠れており、そんな意味ではすっきりとした景観といえるが、標石も雪の下、GPSでもなければしっかり頂上と確定することは難しいだろう。在りし日の登山道を辿って登った地元の子供たちも、この展望ではきっとがっかりしていたのではないだろうか。頂上のすぐ下の斜面で風を避けてしばし休憩とする。

 次は阿幌岳、稜線も樹林に囲まれており、そのまま稜線上を進むことにする。983m小ピークは右を巻いて940mコルへと抜ける。コルからは緩い斜面をひと登り、目の前に木禽岳とは違って存在感を感じさせる阿幌岳が現れた。GPSを見れば水平距離で約100m、とても100mとは思えない距離感と登りである。ただし、実際登ってみればやはり100m、呆気なく頂上到着となる。木禽岳よりは展望が良く、晴れていれば阿寒湖周辺が見えるらしい。ただし、この日は白一色のモノトーンの世界、木禽岳との違いを見出すことはできなかった。まあ、我々の目的は頂上展望を見に行くことではなく、その山に登ったという事実を楽しむことである。素晴らしい展望があるに越したことはないが、木禽と阿幌に足跡を残す、これだけで十分である。天候を考えればまずまずの成果、後は下るだけだ。

 スキーシーズンが終わりを告げるこの時期、なぜか滑りが上手になったと誤解してしまう時期でもある。私のプラブーツやビンディングはかなり古く、遊びが多くて少々怪しい感じだが、それでも下りは楽しい。阿幌岳頂上直下の北斜面はガリガリ、そこをトラバースすると素晴らしい斜面が待っていた。程よく積もった積雪が、この両山の印象をさらに素晴らしいものにする、そんな雪面状況の変化こそが春山登山の醍醐味とも言えるのだろう。(2013.4.29)

【参考コースタイム】  林道入口 P 7:15 木禽岳頂上 10:00、〃発 10:15 阿幌岳頂上 10:50、〃発 11:05 → 林道入口 P 11:55  (登山時間 4時間40分)

メンバー山遊人さん、saijyo、チロロ2、チロロ3(旧姓naga)

 

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