<戻る

 笠 森(865m)

 

1/25000地形図   「布部岳」

稜線への籔を登る私とチロロ2さん  (Ikkoさん提供)
尻岸馬内林道の小沢出合に車を止める
出合の小沢へ入って行くIkkoさん。 この日は流れがあった
細い流れの中を登って行くチロロ2さん
細い流れの中を登って行くチロロ2さん

 笠森は中天狗へのアプローチとなる知岸馬内川の左岸側の尾根上に位置するピークで、山というよりは稜線の一地点といった方が妥当かもしれない。地形図上に名があるので登ってみたが、名がなければおそらくこの山を一生踏むことなどなかっただろう。仮に 「笠森に登ってきたよ」と話してみたところで、一般的には「何だ?それ」と言われるのが関の山。これについては山関係の人間であっても例外ではない。「そうか! 笠森かい」と話が通じるのは、道内全山登頂を目指すKo玉氏くらいのもので、ちなみに彼は二度もこの藪山に登ったらしい。笠森はそのくらいマイナー度の高い山である。山名に山も岳も付かないこの山、三角点も無く、標高点のみとなっているが、なぜか地形図上には笠森と記されている。笠は三笠の笠かもしれないが、地域的には芦の方がぴったりだ。ひょっとしたら、笠森さんという人名説も有りかもしれない。私の推測では、どこか古い時代の地形図にこの名があって、時代が移ってもそのまま残骸的に今日まで残ってしまったような気がする。

                          

 入山口は笠森東面直登沢(仮称)である。先日の改修工事が終わっていないのか、ゲートが開いていたのはラッキーだった。崩れた岩を手でよけながらも出合へと車を走らせる。車を降りて、まずは出合を探す。笹薮の中に意外と水量のある流れを発見、これだ! と思ったが、渇水時であれば流れなどないだろうから、地形を見て判断しなければならない。この日は数日前の雨天気の影響なのか、流れが音を立てていた。長靴の中に水が入らぬよう注意しながら流れに足を置く。その流れも傾斜が増すコンタ650m付近で伏流となって消えてしまう。暑い中、後は伸びきったイタドリが密生した斜面となる。見かけ上は鬱蒼とした藪漕ぎだが、シカ道もあり、ボキボキと簡単に折れてしまうイタドリでは見掛け倒しと言える。我々が通過した後は俄か作りの登山道と化していた。 

                                               

 コンタ700mでガレた小沢の谷形が消えて、比較的薄い笹薮漕ぎとなる。とはいえ、気温30℃とあっては苦行そのもので、暑さを感じづらくなる年代に入ってきたとはいえ、汗だけは遠慮なく噴出してくるから堪らない。いくら水分補給をしたところで、とても満足できる状態とはならず、油断しようものなら足が攣ってしまいそうで、こちらの方も足の置き方ひとつに細心の注意を要する。いつも思うのだが、こんな日に関して言えば、市販のスポーツ飲料でのナトリウム補給ではぜんぜん足りないような気がする。この暑さでさえ味噌ラーメンが食べたい! そんな逼迫した塩分枯渇状態である。一休みする度ごとに背後の北ノ峰や富良野西岳の迫力が増して来て、標高が確かに上がっていることを実感することができる。倒木等で笹薮が薄くなったところを利用しつつ、笹薮に一汗も二汗も… といった状況で無理やり標高を上げて行く。 

標高点の付近に置いた金麦
何の変哲も無い笠森頂上 標高点の付近に置いた金麦

                                     

 いつもながらの光景だが、籔の隙間から空が見えてくると稜線上に到着だ。視界が利くので開放的ではあるが、どこといって山名すらも判らない山並みが見えている。時折谷底から上がって来る冷風が心地良い。GPSを取り出したところ、笠森のピークである865mの標高点は60mほど先で、少しだけ目標を外してしまったようだ。それでも、稜線上には獣道なのか薄っすらと踏み跡があり、難なく標高点付近へと到達することができた。稜線に飛び出した地点よりは少々鬱蒼とはしているが、それ程濃い藪でもない。地に這った樹木の上が標高点であった。何はともあれ、予想通りの笠森頂上で、山の頂上というよりは、尾根の通過地点といった雰囲気である。二度ここにやって来たというKo玉氏はさすがだと感じた。そこに山があったとしても、私ならここは一度で十分。

 いつものことながら、下りは速い。苦労した笹薮急斜面も傾斜がきついほどスピードアップとなる。昨日の敵は今日の友、笹薮も下りでは頼りとなる大事な支えである。その場合には、しっかりと斜面を捉えるスパイク底は欠かせない。下りはわずか1時間ちょうどで尻岸馬内林道へと飛び出す。中天狗へのアプローチとなるこの林道だが、相変わらず道路に崖が迫った厳しい地形である。ここをたどって中天狗へと向かう登山者は細々だが今後も続くだろう。だが、わざわざこの林道を歩いて笠森へと向かう人間など現れるだろうか? つい、そんなことを考えながら車へと向かった。(2014.8.17)

【参考コースタイム】 岸馬内林道 945 笠森頂上 11:45、〃発 12:00 岸馬内林道 1300   (登り 2時間、下り 1時間)

メンバー】Ikkoさん、saijyo、チロロ2

<最初へ戻る