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 金山(500.9m) 豊浦町 ・・・道央道、何気なく通過する山

金山林道から望む金山

金山林道から望む金山

1/25000地形図 「礼文華峠」

荒れた林道の終点付近に車を止める
笹薮の急斜面を登るチロロ2さん  まだまだ元気
忽然と現れたミズナラの巨木  感動的な美しさがあった (Ikkoさん提供)

 地形図上で金山を見ていると、道央自動車道・金山トンネルの脇にあるコブ程度の小さく目立たない山としか思えない。だが、実際にここを通過してみて、車窓からの思わず目を引く山容に、ぜひとも登ってみたいとそそられる魅力があった。今回は豊浦町内・全山完登と気を吐くIkkoさんとこの山に登ることにした。この山へのアプローチを考えれば、当然西側の歩道からとなりそうであるが、ここのところ利用しているgoogleの航空写真では東側の斜面に植林地が見られる。我々としてはペタヌ山との一日二山の計画で、東側の金山林道からのアプローチとした。

 道道32号(豊浦ニセコ線)の高速道路の橋脚の手前から金山林道へと入る。この林道は、施錠はされていないが、途中で二度ほど川を車で渡らなければならず、増水中であれば遠慮したいところだ。路面状況等かなり怪しい雰囲気のまま、金山トンネル入口付近の建物手前まで車を乗り入れる。航空写真では林道から植林地への明瞭な連絡路が写っており、そこからさらに作業道跡が稜線上へと延びているはずだった。だが、実際に現地入りしてみて、どこにもそんな道路など見つからない。おそらくだが、小沢を道路と見間違えてしまったのだろう。しかも、小沢は枯れた夏草と笹薮でかなり鬱蒼としており、こんなところへ分け入って行くのははっきり言って嫌だった。

 しかし、今さら止めるわけにも行かず、初っ端からの藪漕ぎスタートとなる。けっこう進んだかとGPSを見てみたが、車からの距離はせいぜい150〜200m、これではタケノコ取りと変わりない。そうこうしているうちに、植林地への作業道跡らしきわりと平坦なところへ出る。考えてみれば、植林地への連絡路があったとしても、それが歩きやすいかどうかは別問題で、考え自体が少々安易過ぎたようだ。おそらく、かなり以前は連絡路だったのだろうが、薹が立てばただの籔、そんな単純なことを見落としてしまっていた。であれば、ぐずぐずしているよりは枝尾根上へと上がった方が得策かもしれない。

 急な笹斜面にスパイクを効かせてぐんぐん斜面を登る。藪の濃淡が幾度となく繰り返され、中でも今はツル植物が枯れてしっかり絡んでいる時期で、一見楽勝と思える平易な籔にも殆どにこれが混じっていて、一歩前進する度毎に四苦八苦させられる。そんな中、いきなりミズナラの巨木が現れた。真っ青な空に向かって黄色く染まった枝々を大きく広げる様は、全く見事としか言いようがない。名木100選のものと比べても決して引けを取らない美しく感動的なものだった。一方、途中には朽ちた巨木の残骸も見られる。人に知られることもなくこのように朽ちてしまった巨木もおそらく数多いのだろう。いろいろと出て来る籔尾根ルートだが、考えようによっては変化に富んだ面白さがあって、ある意味楽しいと言えば楽しいというのが率直なところ。

 金山頂上がぐんと左手に近づく。細い枝尾根はさらに狭まり、最後に現れたのが岩が剥き出しとなったエッジ状の岩稜の通過だった。5〜6mのわずかの区間であるが、ここは下を見ないよう自分に言い聞かせながら慎重に通過する。ここを過ぎると稜線へはいよいよ大詰め、大きく広がる笹原へと突入する。頂上まではあと400m足らず。だが、車を置いた地点と頂上との距離ですら800mだったので、単純に考えても距離的には半分しか進んでいないことになる。この先、まだまだ笹薮を漕がなければならず、先はまだまだ遠いようだ。

妙にピントがあった紅葉  稜線に出ると明瞭な刈り分が現れた
頂上付近から洞爺湖、伊達方面を望む (Ikkoさん提供) 昆布岳頂上と後方羊蹄山の頂上部が重なっていた
稜線手前で岩稜となる
稜線手前で岩稜となる

この日は“おまけ”が付いた。先頭を行くIkkoさんが何やら大きな声を出している。何だ??? と思ったが、よく聞けば道路に飛び出した様子。籔・籔・籔からいきなり考えてもいなかった幅の広い立派な刈り分道に飛び出てしまった。やった!という思いが半分、帰路はこの道路から籔への再突入か… との思いが半分である。とりあえずはこの恩恵に甘んじようと軽い足取りで進むが、右に左にコケてしまう。道路とは言ってもかなり荒削り、見かけと実際とはちょっと違うようだ。それでもこのまま頂上へと連れて行ってくれるならラッキーと思えたが、そんな幸運は長くは続かない。残り約180mを残す地点でこの道路は別の方向へと向かってしまった。結局は籔への再突入しかないようだ。

  頂上までの区間が辛かった。最初は踏み跡らしき形跡も見られたが、途中からは全くの籔、20m先に頂上が見えるのだが、根曲がりとツルとが絡み合って全然進めない。先頭を行くIkkoさんが頂上に立っているのが見えても、こちらは籠の鳥状態である。そんな状況から無理矢理脱して、何とか私も頂上へと辿り着く。写真を撮っていたIkkoさん、 羊蹄山と昆布岳が重なっている… 珍しいね とのこと。確かに両山は重なっていた。昆布岳頂上の両側に羊蹄山の頂上がはみ出していた。こんな日食のようなアングルは確かに珍しい。頂上はそこから数メートル先の藪の中で、三等三角点「金山」が背丈以上の根曲がりの底に埋まっていた。期待していた眺望は今ひとつだが、根曲がりに体重を乗せるとそれなりには眺望が開けて楽しめる。車からわずか800mだが、これがなかなか遠かった。運転のない私としては今日も金麦で静かに登頂を祝う。初っ端から難儀したこともあって、ここで飲む金麦の美味さは格別なものがある。しばし三角点を前に休憩タイムとする。

 さて下山開始である。同じルートを引き返すのはちょっと億劫さを感じる。協議の上、頂上から一番近い尾根の下降とする。だが、頭の中では崖で行き止ったらどうしよう… というのもちらつく。だが、それは下ってみてからのお楽しみ。強烈な根曲がりの中、尾根筋を外さぬよう慎重に歩を進めて行くが、ツル植物の足枷が付きまとうのは変わらない。途中、予測通りにかなりの急斜面の下降となるが、つかまる笹がある限りは大丈夫。GPSで確認したところ、金山トンネル入口付近の建物はかなり近くなった様子。そうこうしているうちに尾根筋を外してしまう。ここまで下れば沢筋でも良いだろう。

三等三角点「金山」と金麦
三等三角点「金山」と金麦 金山頂上から望む幌扶斯山と内浦湾 (Ikkoさん提供)

  この日始めてのちょろちょろだが水流のある沢となった。建物までは200mを切っている。だが、このまますんなりと行かないのがこの日の山行で、5〜6mの滝が現れた。左岸側の斜面から笹を伝って下降するが、地形によってはそうも行かないことが多い。そうこうしているうちに次は3mのものも。一体どうなっているんだ… そんな気分にもなる。建物が見えた! 残り100m程度である。沢は両岸から笹薮が被りかなり汚い感じ。相変わらずのツル植物で網の目状、罰ゲームでもしているかのようにも思えてくる。そんな中で最後の最後にもう一つ“おまけ”が付いた。建物は高速道路の施設で、がっちりフェンスが設けられていて入れない。我々はもはやクマやシカと一緒で、野生動物進入防止柵に行く手を阻まれてしまった。

 結局、小尾根を乗っ越して林道へと向かった。林道に到着した地点でも車は見えるのだがフェンスが邪魔してすんなりとは戻れなかった。我々は人間様で野生動物とは違うのだが… だが、よく考えてみれば、一般的な人間社会の枠組では、我々のような藪山登山者は自ずと野生動物というカテゴリーに振り分けられてしまうということである。これを名誉と思うか恥と思うかはそれぞれの考え方次第。藪山愛好家としては当然のこと前者であると言い切らなければならないのだろう。(2014.10.19)

 

頂上付近から東側の写真 ウィンザーホテルのポロモイ山から室蘭まで望むことが出来た (Ikkoさん提供)

【参考コースタイム】 林道 755 コンタ450m 刈り分道 1045 金山頂上 1120 、〃発 11:40 林道 1340 (登り 3時間25分、下り 2時間)

メンバー】Ikkoさん、saijyo、チロロ2

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