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      威山(780.4m)

林道途中から見る神威山はどこといった特徴がない

林道の途中から見た神威山

1/25000地形図

千走カモイ林道は入口が施錠されている
藪の中から腕を伸ばし、大平山をゲット
頂上にて、憩いのひと時

神威山頂上は意外にも眺望が良い

あるはずの歩道がなく、次の行動予定を協議

背丈を越える藪のすぐ横には林道が

道内に「神威」の字が当てられた山は多いが、その山のどれもがどこかに険しさを秘めている。ところがこの島牧村の神威山、どこにも険しさなど見当たらず、どこにでもある藪山である。アプローチとなる千走カモイ林道の途中で初めてその姿を現したが、sakag@函館さんは「登高欲など全くそそらないよな〜」とがっかりした様子。見る限り、確かに頂上付近には樹木が繁り、スカイラインはがたがたである。この山を地形図上で見ると、林道が近くまで伸びていて、頂上には歩道を示す破線も通過している。藪漕ぎを得意とするKo玉氏、今日は歩道歩きのハイキング程度と決め込み、カッターシャツとジーパンにズック靴といった軽い出で立ちでの参加である。

さて、地形図上で秘沼・スナフジ湖から神威山頂上へと向かう破線が通過する地点に到着してみると、スナフジ湖へと続く林道はあるが、そのまま稜線上へ続くはずの歩道は影も形もない。しかもスナフジ湖への林道は雑草に覆われており、とても現在も使われているとは思えない。しかたなく、少し戻った地点にカモイ線6号と書かれた踏み跡程度の作業道があったので、こちらから入ってみるが、ここもすぐに藪となり終点となってしまう。結局、途中の小沢から稜線を目指し、藪漕ぎ覚悟で頂上を目指す。小沢は意外に急で、水流もあり、ズック靴ではいささか厳しそうだ。藪漕ぎに入ってからはツルにも悩まされ、鉈でツルを切りながら、やっとの思いで稜線上へ出る。普段着姿で参加のKo玉氏、当然のことながら後悔することしきりである。

稜線上の藪は意外に薄いが、場所によっては背丈以上もある。稜線を外さぬよう慎重にルートを取り、頂上への最後のコルへ降りる頃から根曲がり竹の強烈な藪漕ぎとなるが、帰路の登り返しについては後で考えるより他に打つ手はなさそうだ。そうこうしているうちに、メンバーの「沼がある」との声。平坦地だからどこかに凹地があってもおかしくないと思いつつ進んで行くと、いきなり立派な林道へ飛び出した。林道が沼と見えるあたり、誰もがまさか林道が現れるなどとは、頭の隅にもなかったようである。

こうなれば、この林道は頂上を通過している破線の代わりであるはずと決め込んで勢い付くが、思惑に反し、だんだん頂上は遠ざかるばかりである。どこが最短なのか、刈り分け道はないのか、林道上を行ったり来たりするが、結局は一番近いと思われる地点から藪へ再突入、急斜面から頂上を目指すことにする。藪は中程度、標高を上げる毎に濃くなる感じである。頂上台地上へ飛び出すと背丈以上の根曲がりであり、この時点では頂上展望など全く望めないだろうと思われた。それでも、とりあえずは三角点を踏まなければ山行を終了出来ないため、強力な根曲がり竹に押しつ戻されつしながらも、見え隠れする大平山を目指して何とか前へ進んで行く。いよいよ三角点が近づくと藪の背丈が急に低くなり、意外にも視界が開け、正面の大平山は大きく姿を現した。振り返ると狩場山やメップ岳、カニカン岳など、この山塊の主だった山々がぐるり取り囲み、360度の大展望が広がっている。藪山山行を長年やっていて思うに、一番感動的であり、嬉しさを感じるのはこんな頂上に辿り着いた瞬間である。三角点は苔むしており、無雪期にこの頂上へ登ってきた登山者はここしばらくはいないようだ。ある意味、宝探しゲームにも似た藪山登山の醍醐味とも言える。

意外に静かな雰囲気のスナフジ

下りは根曲がりが密生する平地を避け、真北へ針路を取る。スタート時点こそ背丈を越える藪であるが、すぐに樹林帯の下草程度となり、僅かの時間で林道付近まで到達する。再び背丈以上の藪となり、ひょっとして林道に平行して藪を漕いでいるのではないかと少々不安になるが、そこは林道のすぐ脇であった。林道に飛び出してから振り返ると、あんなところで藪を漕いでいたのかと、つい可笑しくなる。

帰路はもちろん林道を辿る。予想はしていたが、林道から地形図上の破線へ入ると思った地点の少し上部でこの林道が合流していた。知っていれば、小沢の詰めも余計な藪漕ぎもなかったようだ。ただし、藪漕ぎ前提での行動であるからこその意外性であり、これはこれで充実感を感じるものだ。本音を付け加えれば、実際ほっとしたというのもパーティ全員の正直なところであろう。

帰路、スナフジ湖へ立ち寄り、そのまま千走川沿いの歩道を千走温泉まで下りることにする。地形図上の破線で示された林道は少々鬱蒼とした感じがあり、ひょっとして続いてはいないのではないかとの話になる。結局、もう少し下のスナフジ沼線となっている作業道を下ってみることにするが、これが正解のようであった。林道はぐんぐん下って行き、終点がスナフジ湖畔であった。付近を見渡してもそれ以外の道は見当たらなかった。

神威山とスナフジ湖、なかなかの組み合わせであるが、展望の良い神威山頂上は深い藪の中にあり、スナフジ湖も奥深い。秘沼・スナフジ湖へ行くには林道のゲートから何キロも歩かなければならないし、鬱蒼とした樹林帯の荒れ気味の林道では、慣れない向きには少々不安であろう。Web上ではヒグマの巣のような書かれ方をしているが、このまま近づき難い観光スポットということで納まっている方が、環境保全の面から考えても良さそうだ。ただし、ヒグマの痕跡は一日の行動を通して一箇所のみであった。(2007.9.30)

「一人歩きの北海道山紀行」sakagさんの山行記

【参考コースタイム】 千走カモイ林道ゲート前 7:45 → 最初の藪漕ぎ稜線上 10:00 → 林道への飛び出し地点 10:40 → 神威山頂上 12:30 、〃発 13:05 → 帰路の林道飛び出し 13:35 → スナフジ湖 14:30千走カモイ林道ゲート前 15:45   (上り4時間45分、下り2時間40分)

  【メンバーsakagu@函館さん、Saさん、ko玉さん、saijyo

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