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      神威岳(983m)

小金湯温泉への交差点から見た神威岳 (2016年8月撮影)

/25000地形図 「手稲山」

神威岳登山口は広い駐車場となっている
沢には規模が小さいが滝も見られる
正面の岩壁は20mくらいはありそうな気がする
登山者が絶えない神威岳頂上
色付き始めた木々の葉

子供の頃、札幌駅北口の近くにあった生家の屋根によく上がったが、円山や藻岩山など学校の登山遠足で馴染みだった山々の後に、砥石山から手稲山にかけての山並が見え、実に高く立派に感じたのを覚えている。その中でも一番特徴的だったのが、百松沢山のコブのように左側にチョンと姿を現している神威岳である。子供心にはそれが話に聞く烏帽子岳だと思っていた。その後、五万分の一の地形図を手に入れ、両山の位置関係ははっきりするが、やはり半信半疑のままであった。札幌の市街地が当時の何倍にも広がった現在では、都心から南西側へ離れれば本当の烏帽子岳をいつでも見ることができるが、当時としては確認する手だてはなかった。

その後、登山道が整備されガイドブックに登場すると日帰り登山の山として、週末には多くの登山者で賑わうようになる。ただ、以前のガイドブックには必ず登場し、新人訓練の場として最適と言われていた小樽内川木挽沢は、さっぽろ湖の出現によって核心部が湖底に沈み、現在では訪れる人もほとんどいない状態である。何年か前にこの沢ルートを訪れてみたが、林道が奥まで延びていて、終点からの上部は細々とした水流の中、沢は荒れていて藪漕ぎばかりの遡行であった。今回、神威岳への登山道以外のルートとして、百松沢川からのルートを考えてみる。この山の東〜北東側は地形図上では崖記号となっていて簡単には近づけないように感じられるが、崖記号は意外に弱点があることが多く、潅木の生え具合によっては簡単に上部へ抜けられることもある。とはいえ、明らかに岩壁である南〜南東側は避け、烏帽子との縦走路に何時でも逃げられる北東側へルートをとることにする。 地形図上、百松沢川沿いに実線で描かれている部分が林道であり、終点は車が方向転換できる程度の広場となっている。その先、烏帽子岳へ向かって点線で描かれている歩道は現在は廃道になってしまったようだ。歩道跡は早々にあきらめ、林道終点からすぐに入渓することにする。途中、滑床や小滝が23ヶ所現れるが、水量は少なく平凡な感じ。先日の最大瞬間風速50mを記録した台風18号の影響で、所々で倒木が沢を塞いでいて驚かされる。

神威岳への分岐が近づくコンタ570m付近になると沢は意外と穏やかになる。コンタ590mの二股からは神威岳の北東壁を頭上に望むことができる。左側へ入って少し進むと水流がほとんど消え、傾斜が緩い78mの滝が現れる。真ん中は少し傾斜があり登れないが、左岸は潅木を手掛かりに簡単に越えることができた。そこを越してさらに進むとザレた急傾斜の二股が現れた。潅木を頼りにスパイク地下足袋で取り付くが、潅木が途切れたあとは枯れたウドやイタドリなどの草付きとなり、とても登れたものではない。だましだまし根元を掴みながら突破しようと試るが、10mくらいで限界。バイルがあればまだどうにかなったのかもしれないが、上部はさらに急傾斜となっていたので無理しなかったのは正解だった。一度下ってから、笹や潅木の繁った尾根へ取り付く。こちらは笹も薄く意外に登りやすい。頂上までの標高差は約300mであるため、そのまま尾根上を東壁の基部まで藪漕ぎで進むことにする。

頂上からは定天の眺めがよい 藪斜面を振り返ると札幌のビル群が見える

しばらくは緩斜面の潅木をかき分け快調に標高を稼ぐが、標高差にして100mも登ると北東壁が忽然と眼前に現れる。2030mくらいはありそうな感じで正面突破など到底出来そうにない。エスケープルートを意識し、北側の縦走路へ向けてトラバース気味に逃げるのが良さそうだ。岩壁と岩壁との間には潅木が密生した隙間が見える。潅木を伝って行けば上部へ抜けられそうな感じで、とりあえずは緩い沢形から隙間を目指して登って行く。振り返ると百松沢山が見え、更に180万都市札幌のビル群が広がっている。大都会と静寂な藪山といった何とも好対照な組み合わせであるが、これも自然が豊かな札幌の一つの魅力ということであろう。百松沢山の西面は草を踏みつけたように広範囲に樹木がなぎ倒されていて、今回の台風の凄まじさを物語っている。

岩壁と岩壁の間はザレた急斜面となっていて、上部は5060度くらいはありそうな感じである。幸いなことに岩と岩の間には潅木が密生しているため、摑まってさえいれば危険はない。潅木を頼りに慎重に伝って行くと、岩壁の取付きから約10分で神威岳頂上直下の縦走路へと飛び出す。 (2004.10.3)  

【参考コースタイム】神威岳登山口 7:05 → 林道終点 8:30 → 590m二股 9:10 → 神威岳頂上 11:10、〃発 11:35 → 神威岳登山口 13:40 

【メンバー】saijyo、チロロ2

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