<戻る

     上古丹別山(512.4m)

  
“峠”から、行く手に見える上古丹別山
“峠”から、行く手に見える上古丹別山

 1/25000地形図「霧立峠」

林道入口は綺麗に除雪されていた
だれも入った形跡のない林道
頂上直下の様子

  上古丹別山(かみこたんべつやま)、この名の響きが良くてずっと憧れていた山だ。本家とも言える古丹別山や下古丹別山というのもあるが、上古丹別の名が一番良い。コタンベツの響きはいかにも北海道らしく、古き蝦夷地へのノスタルジックなイメージを膨らませる。さらに“上”がつくことによって、その響きにスパイスを効かせているようにも感じられる。古丹別はコタン・ペッというアイヌ語で、集落と川を意味する。国鉄時代には苫前町の中心駅があった市街地の名称で、私個人の意見としては“古丹別町”の方が北海道らしく格好が良かったのではないかと思っている。もちろん、上古丹別山の名は古丹別川に起因しており、支流の二股川左股の源流に位置している。標高は512mと低く、山容もあまり目立たない。道北、特にマニアックな山域と言える天塩山地にあって、この山の地味さ加減はどこと比較しても引けを取らない。そんな山を意識したのは昨年の片道約14kmを歩かされた羽幌岳の正月山行からだった。14kmも歩くのであれば、この山を越えて行った方がよほど近かったのではないか? 気にはなっているが、それを確かめるべく再び羽幌岳へ向かう気にはなれない。

上古丹別山頂上に到着

 Web上で検索してみたところ、7年前のEIZI@名寄さんの記録が目に留まった。左股沿いには林道があり、コンタ300m付近まで続いているとのこと。尾根筋はアップダウンが多く、この山に関して言えば、広い沢地形の方に分があるだろう。おそらく、このルートがこの山への一番メジャーなルートと思われる。そうは言っても、この山への入山者は年間1パーティあるか無いか、ひょっとしたらこれは数年に一度のゼロにかなり近い数値かもしれない。1つ気がかりなのがこの時期特有の駐車スペース確保の問題、こちらは現地入りしなければ判らない。札幌からでは往復で軽く300km以上の走行となることもあって、手ぶらで戻って来るわけにもいかず、とりあえずは代替案(三毛別山)を持っての現地入りとした。あれやこれや考えながら早朝の札幌を後にする。

 駐車スペースが見つかることを祈りつつ霧立峠を下る。二股川左股にかかる橋が近づいた頃から徐行、最初に見つけた除雪スペースが何と左股の林道入口だった。重機の方向転換のためか、しっかりと除雪されている。最初の関門はクリア、あとは林道を使って出来るだけ奥まで入り込み、真正面に現れる尾根に取付くだけである。林道上にはスキーやスノーシューのトレース跡は全く見当たらない。我々のトレースが今シーズンの最初であることは間違いなさそうである。左岸に付けられた林道は途中で右岸へと移って、コンタ360m小ピークの東斜面を巻くように続いている。この小ピークは上古丹別山からの派生尾根上にあるが、意外に存在感があり読図上のポイントとも言える。林道はそのまま標高を上げ、川から離れて少々心細くなる。どこかで分岐を見落としていたのではないかと心配になるが、一番高くなった辺りで目指す上古丹別山が真正面に見えてくる。そこからは徐々に標高を下げ、情報の通りコンタ300m付近で林道は完全に消える。帰路の登り返しを考えれば、最高地点に戻って来るまではシールを剥がせないかもしれない。

小平蘂山は端正な姿に見える 頂上から望む羽幌岳

 平らな岸上や沢底にルートを取ったりしながら進んで行くが、尾根取り付き地点の310m二股は意外に近い。この辺まで来ると沢形はかなり浅く、難なく正面の尾根末端に取付くことが出来る。この尾根は頂上から南東に下る小尾根で、地形図のコンタから細かな地形を読み取るのは、私のような無精者には難しい。日頃から10m未満の地形も推測できる読図力を養っておく必要がありそうだ。私としては、とにかく高みへとルートを取るしかない。登り詰めるとコブ上に飛び出したりと、多少の無駄はあるが、そのままコブを一つ一つ越えて行くことにする。二つ三つコブを越えると真正面に雪庇の付いた頂上部の稜線が現れる。後はほんのひと登りである。背後には三頭山付近の大きく白い山塊が見える。特に目立つのは小平蘂山で、このアングルからは端正な姿を見せている。この山域は300m 〜 400m程度と全体的に低い山並みが広がっているため、500m程度のこの上古丹別山でさえなかなかの高度感を感じさせる。

 雪庇を避けながら稜線上へ、少し歩くと平らな頂上到着となる。西側は樹林帯となっていて視界はきかないが、東側は雪庇とはなっているが眺望は良い。持参した地形図の範囲が狭くて山座同定とはいかないが、摺鉢山や層雲内は何となく判る。何よりも稜線上の向こうに見える羽幌岳は昨年の正月山行でしっかりと目に焼き付けられており、この山だけはどこから見ても判る。雪は真っ白、空は真っ青、俗世間とは180°違った世界が広がっているが、こんな春山の光景を独占できるのも北の山をテリトリーとする我々の特権と思っている。

 この山域には未だ登っていない白頭山、前述の層雲内や摺鉢山など、魅力的な山々がひしめいている。札幌からは少々距離感を感じる天塩山地だが、残雪が遅くまで残るこの時期とこの山域、東進予備校のコマーシャルではないが、いつやるか?、今でしょ! ついこの言葉が頭にちらつく自分がいた。(2013.3.17)

【参考コースタイム】  林道入口 P 9:25 上古丹別山頂上 11:40、〃発 11:55 林道入口 P 13:20  (登り2時間15分、下り1時間25分)

メンバーsaijyo、チロロ2手温泉(入浴)

<最初へ戻る