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      イワオヌプリ(1116m)小イワオヌプリ(1039m)

大イワオヌプリは厳冬期には格好のスキーコースとなる

1/25000地形図ニセコアンヌプリ

小粒でもピリリと辛い山容の小イワオヌプリ
五色温泉上部の駐車場に車を停める
小イワオヌプリには古いボルトやハーケンが打ち込まれている
小イワオヌプリ頂上はガスの中

ニセコ連峰は東西約20kmに渡る火山の連なりからなり、1000mを越えるピークは小さなものも含め15山を数える。現在、噴煙を上げて活発に活動している火山はないが、山域の中ではイワオヌプリが最も新しく、かつては小爆発火口から噴気も上がっていたそうである。また、以前には硫黄の採掘が行われていたとのことで、硫黄川上流の北面にはその形跡が残っているらしい。イワオヌプリは火口内に噴出した大イワオヌプリと小イワオヌプリの二つの溶岩円頂丘からなり、大イワオヌプリは砂礫がむき出しとなって荒々しいが、登山道が整備され、多くの登山者で賑わっている。私は厳冬期には何度かこの山へ登ったが、何れの斜面も傾斜といい雪質といい、スキーには最高のコンディションだったのを覚えている。一方、小イワオヌプリの成りたちは大イワオヌプリよりは少々古く、頂上まで草木で覆われている。山容は急峻で頂上部には奇岩が数多く見られる。登山道はなく、この山へ登ったという話はあまり聞かない。  

 このところの日曜日ごとの荒天、歩行距離が短く、かつ登ったことのないピークということで、イワオヌプリの完全登頂を目指す。午後からは晴れ間が広がるとの予報に期待、小雨の中をスタートする。五色温泉から火口台地への登山道は「階段」ということで、別ルートから雪渓をつないで登る。台地上は冬の読図訓練には格好の複雑地形であるが、さすがにこの時期ともなるとピンクテープの近くには登山道も所々で顔を出している。ニトヌプリと大沼への分岐を過ぎると小イワオヌプリがガスの中に姿を現す。急峻な山容はとても取り付けそうもない感じがするが、大イワオヌプリとのコルへ近づくにつれ、どこからでも登れそうな感じとなる。山での視覚というのはあまり当てにはならないものだ。

小イワオヌプリは多くの登山者が通過する五色温泉〜大沼の遊歩道からは直ぐである。基本的に登山道はなく、踏み入れの良し悪しは判らないが、多くの登山者がこの山を目指せば付近は踏み跡だらけとなるのは確かである。そう考えた場合、やはり積雪期に登るのが妥当なところと言えよう。頂上付近まで続いている雪渓を探し、キックステップで標高を上げる。相変わらずの小雨模様で、ガスに覆われた状態では視界はほとんど利かない。頂上付近の奇岩だけは一登りですぐに近づいてくる。途中からは砂礫地となり奇岩の基部へと続く。無雪期に訪れる登山者もいるのか、基部付近には明瞭な踏み跡があり、それを辿ると難なく頂上となる。ガスの中では何処が頂上とは特定できないが、Web上の情報からの光景とは一致している。確かめの意味で、一番高そうな斜めに尖った大岩へ登ってみるが、一瞬晴れた展望から、頂上に間違いないことを確認する。頂上までの岩には多数のボルトやハーケンが打ち込まれていたが、周囲の状況から考えて、何の目的で打ち込まれたものかは判らない。

雪渓を登り詰めて、大イワオヌプリ頂上台地へ 火星?のような大イワオヌプリの様子

降り落ちる雨は一向におさまらないばかりか、逆に強まっているようにさえ感じられる。雨具も中まで水が通り、奥深い山域であればツェルトでも張って停滞といったところだ。小イワオヌプリを後に、そそくさと大イワオヌプリを目指す。登山道まで戻る予定であったが、頂上台地まで続いていると思われる雪渓があり、これに取り付いてみることにする。この時期のアプローチはストックの方が便利だが、雪渓ではやはりピッケルがほしいところである。斜面が大きくなればなるほど、滑落した場合のリスクは大きく、やはり背負ってくるべきだったと後悔する。ただし、雨天のためか雪面は柔らかく、ステップがしっかりと刻めるのはラッキーだ。頂上台地が近づくと雪渓が切れて、小川が現れる。夏期には水流など消えてしまうのであろうが、融雪期のこの時期はしっかりと沢の源頭といった雰囲気がある。

ゴロゴロした石の上を少し歩くと立入り禁止の札が掛かったロープが現れ、登山道に飛び出す。下山時、間違えてこのルートへ入り込む登山者が多いということであろう。そのまま真っ直ぐに広い雪面を突きぬけ、正面の緩い斜面から頂上を目指す。雪が消え、粘土質の砂礫が現れた斜面では砂礫が登山靴にこびり付き、すぐに団子状態となる。ガスのために周囲の展望は全く利かず、一見、写真で見る火星のような光景が広がっている。ペンキで描かれた矢印に従って登り詰め、ほどなくケルンと朽ちた標識がある頂上に到着する。雨の中ではさすがにゆっくりする気分にもなれない。こんな日は、速いところ下山した方がよさそうだ。

 大イワオヌプリと小イワオヌプリ、前者のニセコにあっては珍しい草木のない砂礫のみが広がる光景、後者の訪れる人が少ない静寂さと草木の生い茂る豊かさ、イワオヌプリを構成する二山は実に好対照であった。(2007.5.27)

【参考コースタイム】 五色温泉 950 → 小イワオヌプリ頂上 11:05 → 五色温泉・大沼遊歩道 1130 → 大イワオヌプリ頂上 12:25 途中 15分休憩 五色温泉 1330 (登山時間 3時間40分)

  【メンバーsaijyo、チロロ2

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