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    落船山(525.3m) ・・・  藪ばかりだった

1/25000地形図 「シアッシリ山」「中幌内」

GPSさえ見なければピッチも上がる (Ikkoさん提供)

         作業道分岐に車を置く
   藪の中のIkkoさん、表情にも喜び?が感じられる

稜線上もこんな感じ 1

稜線上もこんな感じ 2

 札幌からは遠く、標高も525mと低いこともあって当分は登らないだろうと思っていた落船山に急遽行くことになった。予定していたトーウツ岳の代替案である。天候が崩れた今年のゴールデンウィーク後半、Ikkoさんやmocoさんと、どこか代替案はないものかと道路地図を探した折に偶然に目に留まった山だった。上川地方は雨だったが、オホーツク海沿岸は曇り、さて・・・ となったが、遠かったこともあってこの時は保留としていた。和名とも感じられるこの山名だが、やはりアイヌ語が語源らしい。雄武町史によれば「オチプネサン」は幌内川に入る流れの名で、永田地名解では「船ヲ下ス処。古ヘ舟ヲ作リテ此川ヨリ下ス処ナリト」とあるそうで、桂やヤチダモなど、舟にする木が多かった沢という意味らしい。

 この山を最初に登ろうと考えたゴールデンウィークは未だ残雪期で、アプローチは長いがすんなり登れるものと思っていた。だが、今回は藪が一番濃くなる真夏で、林道走行で距離は短くはなるが長時間の藪漕ぎは必至となる。私とIkkoさんの組み合わせでは沢詰めというのが少なく、林道や作業道を入れるだけ入り、あとは藪漕ぎで登頂といったパターンになることが多い。夏のこの時期、正攻法としては沢からの詰めが一般的だが、今回も藪尾根使用の積雪期ルートである。その場合、Ikko車でどこまで入れるかが勝敗の分かれ目となり、例によってGoogleの航空写真から植林地を見つけ出す。たとえ途中から歩くことになっても、そのまま作業道を利用すればより効率的であるのは言うに及ばずである。計画では植林地から頂上までの距離は約1km、藪の質にもよるが、それなりの覚悟が必要だ。

 天候は今いちで、夕べからの小雨で藪は濡れていた。オチフネ川沿いの林道を走って行くと途中でゲートとなり、ここからか・・ と思われた。よく見れば鍵は開いた状態で、そのまま通過出来るのはラッキーだった。チロロ2さんは山へは行かずここで待つとのこと。下山後のチロロ2さんの話では、入っていたのは地元のフキ採り業者で、林道の奥深く入って軽トラ一杯のフキを積んで戻って来たらしい。この業者に落船山へ登りに行ったと話したところ、「こんなところに登る山など無い。カバノアナタケを取りに来たんだろ。クマがうろうろしているから気をつけろ」と言われたそうで、採ってきたフキを数本くれたとのこと。偶然ではあるがゲートが開いていたのはラッキーだった。我々は林道の途中から植林地へ向かう作業道に入ったため、この業者と鉢合わせすることはなかったようだ。

 枝分かれした作業道は古く、車は全く入っていない様子で、路上にはフキ等の夏草が鬱蒼と茂った状態である。Ikko車はそれらを押し倒しつつ奥へと進んで行く。夏草に覆われた状態では路面がほとんど見えず、Ikkoさんの経験による感覚での走行だ。乗っている私としてはただ呆然と見ているだけだった。1kmほど入った地点で分岐となり、転回スペースが確保できそうなので、ここに車を置くとのこと。ある意味ホッとする。分岐した作業道は沢沿いに登るものと、さらに大きく回りこんで植林地へと向かって行くもの。植林地に期待して後者を選ぶことにする。

 作業道上には真新しいヒグマの糞や喰い荒らされたフキの残骸が随所に見られ、気持的には臆病風が吹きまくる。なんせ、私はクマが嫌いだ。上部は古いが植林地のようなので、早々に尾根上へ逃げてその場から離れることにした。樹林帯のうちは良かったが、それを過ぎた辺りからは笹薮となる。しかも、標高を上げるごとに濃さが増してくるから堪らない。コンタ490mのコブを越えて稜線上に出るが、付近は登りも下りも濃い笹薮が邪魔して前へ進むことが容易ではない。折しも倒木から飛び出た小枝の折れ目がスパイク長靴を貫通してしまい、なかなか縮まらない距離への苛立ちもあって萎えそうな気分だった。

かなり近づいたと思ったが、100m以上の距離を残していた

一等三角点「落舟山」と金麦

 コルから再び登りとなる。藪は薄くなったり濃くなったりと、一喜一憂しながらもとにかく進んで行くしかない。着ているものは葉に残った昨夜の露で濡れてしまい不快指数は100パーセント。下りは直登沢を下ってしまう手もあるが、車の回収で作業道を登り返さなければならなくなる。つい、そんなことさえ頭を過ぎる。動いていれば距離は縮まるもの、そう思いながら縮まって行く距離をGPSで確認して行くことは励ましになると思っていた。だが、実は逆?と、ふと思った。むしろ、表示される距離にがっかりさせられることの方が多く、気持の中ではダメージとなっているのかもしれない。とりあえずGPSをポシェットの中にしまう。そのせいかどうかは判らないが、ピッチが上がっている自分に気づく。余計なことは考えない、これが一番だ。

 そうこうしているうちに、頂上がぐんと近づいたように感じた。悪い癖だが、ポシェットの中からついGPSを取り出してスイッチを入れた。距離にして450mほど。見なければ良かったというのが正直なところ。目の前の笹薮がかなり手強いものとなる。GPSを再びポシェットの中へ。さらにひと頑張り、頂上直下かと思い、ここであればとGPSを取り出す。63m の表示、残り1020mと信じていただけに、これもかなりショックだった。私の場合、頂上到着を確信するまではGPSをしまっておくのがこの道具を使う一番の方法ということになるのだろう。

 最後の藪を漕いで落船山頂上に到着。Ikkoさんが一等三角点「落舟山」を発見する。徒労かと思われた長い藪漕ぎも今や満足感以外の何者でもない。やった! オセロではないが、黒一列が白一列に変わった瞬間である。写真に使った金麦がのどを潤してくれる。「下りも同じだけの藪漕ぎが待ってるぞ」と言われそうだが、私はいつも思っている「下りは何だかんだ言っても楽なもの」と。 思い込みかもしれないが、この日も難なく駐車地点へと下山している。下りでは苦労や大変さなど微塵も感じることはなかった。もちろん、クマへの恐怖感もである。気のもちようとはこんなもの、つくづくそう感じさせられる山行だった。(2016.7.17) 

 落船山頂上はこんなところ 見えるのは伸びきった野草ばかりだった

【砂金山と丸山】

落船山に登る前後、雄武町の砂金山へ行ってみた。砂金山の頂上は植林地の隅にあり、植林地の入口まで車が入る状況では登山としてのカウントは出来ない。また、丸山についても落船山とは林道入口が近かったので行くことになったが、車が止まった場所が頂上からわずかに10m程度のところで、これも登山とはならなかった。両山とも主役はIkko車ということである。将来的には積雪期に麓から登ることにしよう。

参考コースタイム】作業道の分岐 P 10:00 → 落船山頂上 12:55、〃発 13:10 作業道の分岐 P 14:25 (登り  2時間55分、下り 1時間15分 休憩時間を含む)   

メンバーIkkoさん、saijyo

 落船山、砂金山で見つけた・・・

落船山_水滴に景色が写る (Ikkoさん提供)

落船山_藪斜面のセミの抜け殻 (Ikkoさん提供)

落船山_藪斜面の木  (Ikkoさん提供)

落船山_藪尾根の紅葉 (Ikkoさん提供)

砂金山_あざみの花 (Ikkoさん提供)

砂金山_アザミの葉に蜘蛛の巣 (Ikkoさん提供)

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