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   伊納(532.9m)

林道に忽然と姿を現す伊納山

    1/25000地形図「上湯内」「旭 川」

重機の置かれていた場所に車を停める
途中の尾根から見る道央道は真下を走っていた
道央道・常盤トンネル真上、499m標高点にて

 道央自動車道を旭川方面へと向かい、音江PAを過ぎて石狩川を渡ると道路は徐々に山の中へと入って行く。道央道最高地点(305m)の標識を見ると長い常盤トンネルとなるが、このトンネルの上が今回目指した伊納山だ。道央道を通過の時は高いところを走っているといった印象だったが、旭川付近で300mの標高はそんなに高くはない。いずれにしても雰囲気としては奥深き山の中といった感じである。“伊納”の名前の由来が伊納忠敬に関係するものなのかを旭川在住のOginoさんに尋ねたところ、よく判らないが伊納忠敬の測量の旅は主に海岸線だったのではないだろうか?とのこと。考えてみれば、確かにその通りである。新旭川市史によれば「イノウ」は江戸時代の複数の古地図に見られる「イヌフト」が転訛した地名で、「伊野」の字が当てられていたようである。川の名前としては現在もこの字が残っている。永田地名解では漁人の仮小屋、知里地名解では「イルオナイ」(熊の足跡の多い沢)の転訛とのこと。いずれにしても誤写や転訛で、本当のところは現代にあっては推測するのみである。

国道12号で旭川へ向かい、市街地に入ってすぐに左折する。JR伊納駅は全く目立たない駅で、注意していなければ見落としてしまいそうだ。位置的には市街地の外れで利用者も極端に少ない感じである。ここを過ぎて道なりに進んで行くと鱒取川沿いの林道となる。例年であれば青少年の家から1kmも進むと除雪の終点となるそうだが、現在は伐採作業中なのか、林道の除雪はどこまでも続いていた。約4km地点に伐採作業の拠点と思われる場所があり、つい先ほどまで重機が置かれていたスペース(Oginoさんが事前に偵察)に車を置かせてもらう。かなりしっかりと除雪されているため両側が1〜2mくらいの雪の壁となっていて、どこまで行っても車が停めれるようなところはなさそうだった。

行く手には伊納山が近づく
伊納山がぐんと近づく 伊納山頂上で歓喜のチロロ3(旧姓naga) さん
伊納山からは旭川の市街地が広がる 帰路、道央道から登った尾根を見る

少し進むと道央自動車道の橋脚が見える急カーブとなる。ルートは常盤トンネルのすぐ上の尾根で、途中からはトンネルの真上となる。1.5mの壁を登ればあとは緩い尾根を登って行くだけであるが、これがなかなか越えられない。考えてみれば、山行中で一番難儀したのはこの1.5mであった。何とか除雪の壁を乗り越えて少し登ったところには明瞭な集材路が斜面を横切っていた。この集材路の入口に気が付いてさえいれば苦労はなかったのかもしれない。地形図を見て、稜線への登りで苦労しそうなところは最後の詰めくらいのものだ。右手に見えていた高速道路は気が付くと登ってきた尾根の真下に見え、江丹別トンネルの入口が真正面に見える。何十回となく通過しているトンネルだが、トンネル上へ上がって行くのは初めてで、何の変哲もない普通の尾根上景観にも特別な新鮮さが感じられる。

結局、稜線上への詰めも普通の登り程度で、尾根全体が緩斜面なのでその比較で急斜面と思った程度のことであった。499m標高点付近は疎林帯である。伊納山との広いコルへ下ると遮るもののない展望が広がり、旭川市中心部のビル群を始め街全体が見渡せる。この日は北風が冷たく、稜線上でオーバーヤッケを着込むのを忘れてしまったために、翌日から何年ぶりかで本格的な風邪をひいてしまった。ちょっとした油断であった。コルからは頂上台地全体が樹林に覆われた伊納山へと向う。頂上は南の端で尾根が左右に分かれていることで確認できる。右の尾根をたどれば地上デジタルテレビジョン・深川中継局の鉄塔が林立する常磐山とのこと。この山は伊納山よりも標高はあるが、新しい地形図上では山名が消えてしまったようである。今後は名前のある山を登山対象とする向きには見向きもされない山となって行くことだろう。山頂は風が冷たく、少し下りた地点で休憩とする。

下りはトンネル上の尾根には戻らず、そのまま山腹を走る林道へと下ることにする。ここの斜面はどこを下りても林道にぶつかるそうだが、下手すると急峻な谷地形に嵌ってしまうとのこと。凹凸の多い斜面の滑降も深雪とあっては快適そのものだ。ところどころで集材路に飛び出し、この山域に特化しているOginoさんを先頭にさらに斜面を下って行く。確かに小沢への落ち込みは深いが、しかし上手にこれをかわしている。さすが地元の人間だ。最後はやはり1.5mの除雪の壁が待っていた。ただし、登るのとは違ってズリ落ちることで簡単に林道に飛び出すことができた。

下山後、国道沿いのレストランで旭川ラーメンを食べ、別れ際に駐車場から伊納山を教えてもらう。どれが伊納山なのか…? 国道を挟んだ向かい側には特徴のない平らな山並が広がるばかりであった。(2010.2.7)

【参考コースタイム】

鱒取川林道P 8:50 499m標高点 10:45 伊納山頂上 11:05 、〃発 11:35 林道 12:05 鱒取川林道P 12:25

 (登り1時間15分、下り50分)

メンバー】Oginoさん、saijyoチロロ3(旧姓naga)

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