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       稲倉石山(789m)

尾根の途中から望む稲倉石山

 

/25000地形図「然 別」

大江鉱山跡手前の除雪スペースに車を停める
大江鉱山跡への雪の回廊
大江鉱山跡への雪の回廊
樹林帯の尾根に取り付く
山で食べるジンギスカンは格別だ
680mコルから見る本峰。この頃から天候が急速に回復する
頂上まであと一息
稲倉石山頂上にて
西側の795mピーク、稲倉石山の最高地点

稲倉石山は8年前に籔漕ぎで一度登っているが、地形図上の頂上をしっかり踏んでいるかどうかが怪しく、いつも気になっていた山だ。地形図上で稲倉石山と表記された頂上部の一角は確かに踏んでいるのだが、数十mはずれていたように思う。なんせ背丈以上の猛烈な根曲がり竹とツル植物の藪の中のことで、1m移動するにも容易ではなかった記憶がある。今回は移動が容易な積雪期でもあり、GPSも使用して789m標高点・頂上をしっかりと踏むことが目的である。

冬の稲倉石山は意外に遠い。余市ダムからはけっこうなアップダウンの連続となり、以前の積雪期にこのルートをたどったチロロ2さんの話ではそれなりに時間がかかったとのこと。ところが先日の然別山の山行で、旧大江鉱山へ続く道道755号が冬期間も除雪されていることが判り、余市ダムよりは容易なルートがとれそうなので、こちら側からのアプローチで考えた。余市の道の駅「スペースアップル」で今回参加メンバーのKo玉氏やMocoさん夫妻と待ち合わせるが、雪が降りしきる悪天状況で普通であれば完全に見合わせるところである。普通でないところといえば700m越え全山を目指しているKo玉氏が参加していることで、今の彼の頭の中には中止の文字はない。もっとも、このくらいピークへの執着心を持たなければ、こんな途方もない記録などはとても達成できるものではない。

ポン然別川沿いの道道755号は除雪された圧雪路面に今降ったばかりの新雪が積もり、車がその雪を巻き上げるためワイパーをフル回転にして進んで行く。いつ埋まるか判らない状態、こんな状況で、なぜ好き好んで稲倉石山へ登らなければならないのだろう?…全く意味が判らない。大江鉱山跡に近づくと車一台がやっと通れる程度の雪の回廊となる。終点の少し手前の除雪スペースに車を停める。ここは昭和59年の閉山までは人が住み、学校があり病院があり、生活の営みがあったところらしい。今は水質の管理で社員が訪れるのみとのこと。稲倉石鉱山側も同じであるが、時代に左右される栄枯盛衰の1コマといえる。

ダムの左岸側の尾根末端に取り付くと雪に埋まった神社跡の小さな社殿を見る。ひと登りで尾根上となるが、ここからが長い。439m標高点を左に巻きながら樹林帯の急斜面の雪面を切って進む。そのまま登ってしまって尾根を進んだ方が楽かもしれない。ただし、トレースを作っておけば帰りは絶対に楽ができる。できるだけ斜面のトラバースで進んで行く。Ko玉氏もそうだが、いかに効率よく登ることができるかが山行の一つの興でもある。

ところが506m標高点を右側から巻いて進んで行くと凹形の急斜面のトラバースとなる。雪質によっては簡単に崩れるだろう。先頭がこんなトラバースをやっていて、後続のだれかが埋まりでもしたら取り返しのつかないことになる。しかし、尾根上へ向かうにもジグを何度か切らねばならず、そのまま素早く通過するしか術がない。静かな雪面に緊張の時間が続く。拘り過ぎたがためのルートファインディングのまずさである。思えば、自宅を出る時にビーコンを忘れ、途中でこれを取りに一度戻っている。そんなこともあってビーコンがあるという安心感が大胆なルート取りに結び付いてしまったのかもしれない。ここは大いに反省すべきである。

やっとのことで620mコルへと抜ける。ふと見ると、体調不良のmarboさんが見えない。1人で埋まっていたらどうしよう…頭の中で悪い想像が駆け巡るが、彼はすぐに現われた。とにかく帰路は登り返すことにしよう。708mポコを右に巻いて(私としてはコンタの緩い左を巻きたかった)、次のコンタ700mは左を巻く。正面には存在感のある真っ白な稲倉石本峰を見ながら680m最後のコルに到着、あとは登り詰めるだけで8年ぶりの山頂が待っている。途中からは青空も広がり始めた。まるで、我々の登頂を祝福しているかのようだ。ルートはどこでもOKだが、やはり尾根上をたどるのが良さそうだ。

視界がぐんと広がって余市の市街を始め海岸線も見える。八内岳へと続く稜線上には山また山がうねうねと続いている。青空に吸い込まれるように先を行くメンバーが雪面の向うへ消えて行った。どうやら頂上はすぐそこのようだ。目前に雪面が広がって頂上台地上へと飛び出した。微妙な雪原の高低の中にもやはり頂上は一目で判った。やはりこの山は積雪期に来るべきであった。無雪期であれば太い根曲がり竹が地表を覆い、たとえここにたどり着いたとしてもその特定は難しい。8年前の山行では間違えて西側の795mピークに登ってしまったが、6mほど高いことを考えれば、広範囲では本当の頂上だったといえる。とはいえ、表記のある稲倉石山はやはりこちら789mピークで、後で悔いを残さぬよう籔を漕いだ。最終到着地点では平らになっていたので頂上台地上であったことは間違いないが、時間切れとなってしまったために頂上をしっかりとは確認していない。

北風が吹く頂上は寒く、すぐに風下へと下降することに決める。いずれにしても今回で稲倉石山は完璧に終了だ。風下の斜面に陣取り、ジンギスカンパーティを決め込む。わざわざ、こんなところで…と思われるかもしれないが、これが意外と美味しいし楽しいものである。寒さの中で体を動かしていたためか、暖かい焼肉はジンギスカン特有の癖を全く感じさせない。いや、感じているけれどもこの寒さがかき消しているのかもしれない。雪山山中でのちょっとした余裕、これこそが冬山登山の楽しさを倍加させる原動力ともいえる。(2011.2.27)

■同行して頂いたmarboさんの山行記

 参考コースタイム】 大江鉱山跡P 9:15 → 稲倉石山頂上 11:55 → 頂上直下 12:15 、〃発 12:55 →  大江鉱山跡P 14:45 (登り 2時間40、下り 2時間 )

メンバー】Ko玉氏、marboさん、mokoさん夫妻、saijyo、チロロ2

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