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   (691.0m)

恵山から古部丸山を望む (2012年11月撮影)

1/25000地形図 「尾札部」

頂上台地に上がると三角点を示す棒杭が見えた  やった!
念願の一等三角点「古部岳」に無事到着
何と!… 頂上直下の林道まで車を乗り入れる
藪漕ぎを開始して間もなく頂上が見えてくる
稜線上に乗ると恵山が見えた

  古部・丸山は恵山に登った人間であれば間違いなく登りたくなる山だ。一昨年、初めて恵山を訪れ、その頂上展望の中でも際立った存在がこの山だった。正直、その端正な山容は一瞬にして目に焼きついてしまった。道南の次の一山はこの山と決めていたが、その機会はなかなか訪れることなく別の山へと向かうことが多かった。今回は私の山仲間が恵山を計画し、それに乗った形で私のみがこの山を目指すことにする。情報としてはsakag氏(一人歩きの北海道山紀行)の2000年のもので、この時は北斜面のかなり頂上に近いところまで車で入っている。だが、それは14年も前の話、現在はどこまで車が入れるかは判らない。途中から歩くつもりで現地へと向かう。

 林道入口の絵紙山町の集落ではキノコの栽培が行われていたそうだが、近年廃業したらしい。その影響で入口付近の道路は荒れているらしい。ダメもとで入ってみるが、それほどでもないようだ。途中、針葉樹林帯では道路に雨裂が走り、この辺りまでか… と諦めたが、その先では割りと安定した様子となる。無理だろうと思っていたつづらを登りきり、分岐まで進む。まだまだ行けそうな感じである。sakag氏の記録の「ヒグマの糞が凄い」とあったのはやはり気がかりだった。昨年の白神山でのヒグマとの遭遇を考えれば、道南では当然のことと思えた。そうこうしているうちに分岐を過ぎる。見ると何やら糞らしきものが散らばっている。停車してドアを開けて見てみたところ、やはりヒグマのもの。10数年の歳月が流れていても状況にあまり変化はないようである。

 林道入口がすぐに判るようにと、カーナビの案内地を丸山としてきた。そんなこともあって拡大した画面上にも「丸山」が現れた。終いには目的地周辺、案内を終了しますとのアナウンスまでも。何と北斜面の一番の至近距離まで車を乗り入れてしまった。カーブの少し広くなっているところぎりぎりに車を止める。一人というのは心細いもので、しばし車の中で小休止と自分に言い聞かせつつ、踏ん切りの付かない自分と相対する。こんなチャンスはそうそうない。意を決して車外に出て準備を始める。山の装備を身に付けるとポジティブな気分になるから、単に臆病風に吹かれていただけのこと。この至近距離では山行として少々憚られるところだが、憧れのピークを前に贅沢など言っていられない。

 ピークに一番近い地点まで林道を進み、笹をつかみながらのり面を上がる。あとは頂上に向かってひたすら笹漕をかき分けるのみだ。空はこの時期としては珍しいほどの晴天、いつもであればこんな日に藪漕ぎなど… と考えてしまうところだが、この山に関しては期待の方がどんどん膨んでくるので嬉しくなる。笹藪は、何となく薄っすらではあるが、人間が行き来しているような形跡を感じる。札幌ではあまり知られていないこの山だが、地元ではそれなりに登られているのだろう。途中、一息ついて、ふと振り返れば背後には海が広がっている。さらに前方には空も広がり始め、稜線まではあと少し。やはり藪漕ぎといっても距離は短い。笹薮も低くなって、その笹薮の向こうには真っ青な空の中に笹で黄緑色く染まった丸山頂上が見えてきた。いよいよだ。稜線上に乗ると、今度は札幌から一緒にやって来たメンバーが今登っている恵山と海向山も丸い水平線を背に姿を現す。

道内最古の一等三角点と金麦
道内最古の一等三角点と金麦

 低い草原のような笹薮をひと登り、頂上台地上へと飛び出す。素晴らしい! 実に素晴らしい。広い笹原の奥に三角点を示す棒杭を発見、どうやら頂上到着のようである。わずか30分程度の短い登りであったが、登頂の喜びと充実感を十分に感じることが出来る。ここの一等三角点「古部岳」は道内では大千軒岳、八幡岳のものと同時期に設置された道内最古のもの。標石に傷みは見られるが、さすがに貫ろくが違う。棒杭の表示が国土交通省となっているので、そんなに遠くはない過去に現況調査が行われたのだろう。ここからの眺望は一級品である。正に遮るものなしの360°、海へと突き出した恵山や海向山、函館付近の山々や駒ケ岳、内浦湾を挟んで室蘭・絵鞆半島をも望むことが出来る。一つ一つを挙げればきりがないが、要は付近のダイナミックな山岳とそれを取り囲む大海と真っ青な空、それらが見事に調和されて素晴らしい景観を造り出している。とにかく感動を得るには十分過ぎる眺望といえる。一人登山の時にはあまりゆっくり過すことのない頂上だが、この景観の中ではついつい時が経つのも忘れてしまった。

 小春日和とはいえ、この時期の山の頂上は寒風の通り道。後ろ髪を引かれる思いで下山を開始とする。恵山の雄姿を見ながら尾根に飛び出した地点を探しつつの下降となる。低い笹から背丈以上の笹薮へと突入、あとはひたすら下降するのみ。すぐにクマの糞にびびってしまった林道が見えてきた。終わってしまえばわずか30分ほどの呆気ない幕切れ、重苦しく感じた林道も今は普通の下界レベルの道路へと変わっていた。(2014.11.23)

参考コースタイム】  頂上直下林道 P 8:30  古部丸山頂上 9:05、〃 発 9:25 → 頂上直下林道 P 9:50 (登山時間 登り 35分、下り 25分)

メンバーsaijyo

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