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      母衣月山(503.5m)

下山後に見た母衣月山には雪雲がかかっていた

    1/25000地形図「寿 都」

施業道ゲート前に車を停める
避雷針と思いきや、迷子防止のサイレンだった
ゲートは閉じられているが、鍵はなぜか掛かっていなかった

 母衣月(ほろつき)山がある「月越山脈」は山脈と呼ぶにはいささか小さ過ぎる感があるが、地形図上には立派に山脈としてその名が載っている。寿都町史・上巻では月越山地となっていて、その後編集された下巻では山脈に変わっている。山脈の定義とは、ウィキペディアによれば「プレートの相互作用によって形成された山の集まり」とある。上下巻の編纂にはかなりの年月を要しており、その間、黒松内活断層などの調査も頻繁に行われていたようで、そんな経緯の中ら山脈との見解に変わったのかもしれないが、実際のところは判らない。弁慶岬へ向う車窓からは、確かに山脈を連想させる連なりを感じさせる。ただし、段丘斜面を上がってしまえばただの広い原野であり、山というよりは丘といった感じである。「ほろつき」とはアイヌ語・ポロツキで、大きな盃だそうであるが、他の語の訛りとも考えられるとのこと。

 母衣月山へ一番簡単に登れるのは道道523号(美川黒松内線)の峠付近、島牧ウィンドファーム (風力発電所)からである。ただし、このルートからでは登山と言うには少々大げさ過ぎる気がする。めぐり合わせの悪さからか、ここのところの週末は前線が通過、日曜日は西高東低の冬型となって少々荒れた天気が続いていた。こんな日に山へ登るためには、ルートにどうのこうのは言ってはいられないというのが本音である。島牧ウィンドファームの少し手前に母衣月山へ向う施業道・月越樽岸線入口のゲートがある。ゲートは締まっているが鍵はなく、解放されていた。我々はゲート前に車を置き、ここから歩くことにする。

先頭を行く「全山男」のKo玉氏 眼下に寿都の町が見えてくる
タケノコ園のプレスセンター? 一等三角点を掘り出す・・・夢を掘り当てた「手」

 この施業道は、タケノコのシーズンには森林管理所が営業している「月越タケノコ園」へのアプローチとなっていて、途中にそのための小屋や廃車が投棄状態で放置されている。最近は、営業果樹園で行われているイチゴ狩りやブドウ狩りのように、自然の恵みであるタケノコまでもがその対象となっているようである。数年前、余市岳の頂上から見た朝里岳・通称「飛行場」付近に、まるでバリカンで刈ったようなタケノコ園が見え、驚かされた。キロロリゾートが始めたキロロたけのこ自生園」で、このような商売も今のご時世では成り立つのだと、つくづく感じさせられた記憶がある。安全だと言えばそうかもしれないが、私としては、山菜くらいは自然の中で自分の感覚で探し出したいと思うし、その本来の楽しさとはそこにあるようにも思う。

 施業道は静かで、わずか10cm程度の積雪ではあるが、すっかり冬景色である。深い森林帯といった印象はなく、笹薮の中の雑木林といった雰囲気である。地形図には載っていない支線も入っていて、無駄足を避けるためにも、やはり読図は必要である。途中、一見して避雷針かと思われる柱が一本、近づいて見ると上部にはスピーカーが設置されている。おそらく、タケノコ取りで笹薮へ入った人達への、いわば“霧笛”のような役割のものと思われる。この森林管理所の始めたタケノコ園であるが、渡島地方では迷い人も出たとのことで、中止になったとWeb上には載っていた。やはり仮にも藪へ入るのであれば、それなりの心構えと独力でルートを読むくらいの力は身に付けてほしいものである。

母衣月山頂上にて 寿都湾には白波が

 やがて施業道は大きく左に回り込み、母衣月山が間近に姿を現す。地形図上には点線の歩道が載っているため、ひょっとして作業道くらいの道はあるのかもしれないと思っていたが、地形図とは違った方向に道路が伸びていて、飯場と思われるバラック小屋が二つ建てられていた。どうやら付近一帯がタケノコ園で、母衣月山の南斜面全体に広がっているようである。タケノコ園の刈り分けを利用、斜面を登って行くが、途中までしか続いておらず、あとは藪漕ぎとなる。積雪の重みで沈みかけてはいるが、見事な根曲がり竹の藪である。この場には似合わぬオンコの大木が1本、この山への良き道標といえる。

 辺りは平面であるが、ちょっと小高くなった辺りが頂上と思われる。一等三角点が設置されているが、この積雪では…と思った。近づいて行くとラッキーなことに「大切にしよう…」の棒杭が雪面に現れている。何百もの三角点を見てきたKo玉氏によれば、三角点は石と石の間に埋められているケースが多いとのこと。確かにここにも割りと大きな石が二つある。スパイク長靴では三角点を傷付けるので、手で丹念に掘り出すことにする。予測は的中、一等三角点「幌月」が顔を出す。なぜ、三角点の回りに石が置かれているのかは判らないが、こんな時期でも見つけやすいようにとの考慮からかもしれない。一等三角点であるにも関わらず展望は得られず、見えるのは笹薮のみである。ただし、斜面を少し下れば、北西風で波立つ寿都湾の様子を手に取るように望むことができた。雷電海岸の象徴である雷電岬 ・刀掛け岩も見えるはずであるが、こちらは生憎、ガスの中である。

 冬型の気圧配置の中での日本海側の山への登山は、出来れば敬遠したいところであるが、こんな条件の中でもこの標高であれば十分に楽しむことが出来た。やはり初めて登る山は新鮮であり、何にも勝る楽しさがある。一つ言わせてもらえば、くどいようだが、上げ膳据え膳でのタケノコ取り、果して本当に楽しいものなのだろうか…? 営業タケノコ園だけはどうしても頂けない感じがした。 (2008.11.30)

【参考コースタイム】施業道ゲート 8:20 タケノコ園 9:35 母衣月山頂上 10:05、〃発 10:25 タケノコ園 10:45 施業道ゲート 11:40 (登り 1時間45分、下り 1時間15分)

メンバーkoさん山遊人ん、saijyo、チロロ2、チロロ3(旧姓naga)  

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