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       幌内山(577.3m)

      
道道920号・幌内湯内線から見る幌内山はどっしりとしている

      /25000地形図丹別

林道入口の除雪スペースに車を停める
密度の濃い針葉樹林帯は積雪も少なく歩きやすい
標高を変えないことも重要なルートファインディング術の一つ

このサイトを立ち上げてから蘭越と浜益の両幌内山、班渓幌内山も含めて三つの幌内山を登ったが、まだまだ他にも幌内山があった。その一つが鷹泊と江丹別の間に位置する幌内山だ。他の三山同様、あまり目立たぬ山容だが、道道920号・幌内湯内線から見ると高さのわりにどっしりとしていて、見る角度によってはなかなかの存在感を感じる。ホロナイの意味はホロ・大きい、ナイ・川で、ここでは雨竜川がそれに該当するのだろうか。この川も上流の朱鞠内ダムが出来るまではかなりの激流だったとのこと。河畔の地名が幌内で、そのまま付近を流れる川名になったと思われる。幌内山の命名については、幌内川の水源の山ということで点名となり、地形図上では山名としてその名が登場したと考えるのが自然であろう。すぐ北側には、やはりこの山を水源とするエイチャン川があり、和名ともアイヌ語“イチャン” (鮭鱒の産卵場)の転訛とも言われている。明治時代の地図には“オイワチミ”(そこで・山を・左右に分けている・もの)と記されており、この語の意味から推測してこの山はその中心で、古くはこの辺りの霊山だったのではないかとの説もある。

この山域で密度の濃い山行をやっている旭川・Oginoさんは2方向からこの山の頂上を踏んでいるが、今回の南西方向からの登頂は初めてとのこと。パーティの誰もが始めてのルートだ。上幌内橋近く、ヤマベの沢川沿いの林道入口が今回のスタート地点である。直接、頂上へ突き上げる尾根の末端が付近にはないため、途中から別の尾根に移って頂上へと向かう計画だ。林道入口にはうまい具合に除雪スペースがあり、心配していた駐車スペース確保の問題は無事クリアである。豪雪地帯と言われている付近の積雪が意外と少なく感じるのは、札幌や岩見沢で大雪となっているせいかもしれない。だが、林道へ入ってみると、なかなかの深雪ラッセルである。219m三角点へ向かって一汗かくと針葉樹林帯へと突入する。密度の濃い針葉樹帯は夏でも下草が薄くて歩きやすいが、積雪期でも同様に積雪量が少なく一息付けるところだ。この針葉樹林帯を抜けると道路(送電線の保守道路か)に出て送電線の鉄塔へと続いている。鉄塔からは乗り移る予定の右手の尾根(470m標高点がある尾根)を気にしながら進むことになる。

ちらちら林間に尾根が見えるためKo玉氏に聞いてみたところ、あと246m先が沢を渡る一番良い地点とのこと。そうであればとのことで、ここからはルートファインディングに長けたKo玉氏が先頭に立つ。なるほど凄い。何が凄いかといえば、下山時でのシールを外した状態を考慮して少しも下らず登らず目的の渡渉地点へと同じ標高を保ちつつ進む一意専心な姿である。先頭が何度か交代してもKo玉氏の指示通り沢の右岸斜面ぎりぎりに進んで、最後は少しだけ下ってしまったが目的の尾根へと最小限のロスで取り付いた。沢筋斜面ぎりぎりのトラバースでは参加メンバーのLuckyさんは思わず数歩上部へと逃れたが、雪質によっては崩れる恐れがある地形なので、正統派登山を学んできた彼女の行動は当然といえるだろう。何でもありのKo玉氏は雪が絞まっているので決して崩れないと、おそらく足もとから感覚的に感じていたのだろう。

登山開始から約3時間、幌内山頂上に到着する 私製のものか頂上標識が取り付けられていた
頂上からは蕎麦の産地「江丹別」の平野が見える 先日届かなかった冬路山も少しずつ見えてきた

470m標高点へは急斜面を直接ジクをきって登るのもよいが、集材路が尾根筋へと延びているのでそのまま回り込むことにする。ここから先の尾根上の登りは、気温が少し上がったせいか、雪が重たく傾斜もあってこの日一番のラッセルがきついと感じた場面だ。ある程度登ってラッセルを交代する。この時期のトップとラストでは天と地ほどの差がある。ラッセルしている先頭は当然遅く、ラストはトレース跡にゆっくりとスキーを滑らせるだけでよい。ただし、あまり細かな先頭交代は考えものだ。ある程度やっていなければ体は温まらず調子も上がってこない。そのインターバルには個々の差があり、交代はそれぞれが自分の調子と相談して決めれば良いことだと思う。また、その方がパーティ全体としても間違いなく効率は上がるというもの。ようするに、パーティ内でのラッセルの長い短いは杓子定規に考えたところであまり意味がないということだ。

最後尾に付いて一休み、気付いてみれば既に470m標高点を通過しており、コンタ490mからの下りに差しかかっていた。作業道跡を辿っているのか、樹木が一直線に並んでいるようにも見える。先日の鷹栖山頂上で見た光景と同じである。後は広い頂上丘への登りを残すのみだ。広い雪原の周りを樹林帯が取り囲んでいるような景観である。穂別の坊主山では頂上丘の東斜面で、雪面から柵が出ていて、辺りが放牧地であったことに驚かされたが、ここも一見そんなようにも感じられる。思わず目を凝らして周りを見回したが、柵は見られなかった。どうやら、前方の広い雪原の端が頂上のようだ。

残り300mは一人100m弱のラッセルを交代でやって、最後は500m以上全山を狙うKo玉氏に敬意を表してバトンタッチしようとの話になる。最後の100mを受け持った私だが、はにかみ屋でなかなか素直になれないKo玉氏に道を譲るため、大きく別の方向へと逸れる。ところが、譲った方向はとんでもない間違いで、私の逸れた方向数十メートル先が頂上だった。仕切り直しで、最後は無理矢理Ko玉氏を先頭に立たせ、どどっと頂上に到着する。登り3時間、予想外のスピーディーな頂上到着となった。氷点下10℃近い寒風の中だが、頂上ビールが美味い。ラッセル後のホットな状態もさることながら、予定通りにことが運んだ充実感がその美味さに彩りを添えているのだろう。ガスがかかって見えなかった周りの眺望も徐々に回復、蕎麦で有名な江丹別の白い平野、その90°左側には頂上のみはガスっているが先日途中で断念した冬路山も見えている。頂上の樹木には「幌内山」と書かれた小さな頂上標識が取り付けられていた。

長さの割りには標高差の少ないこの山、しかも深雪とあっては、トレースをはみ出せばすぐにスキーは止まってしまう。とはいえ、やはり下降は楽しい。スキーのメンテが良いメンバーは少しの登り返しにも手を焼いていたが、ウロコ板やメンテを一切やらない私の板は登り返しをほとんど感じさせない。トレース内限定ではあるが、それなりにスキーを楽しむことができた。登る時にはただ闇雲に登るのではなく、常に下降も想定したルート取りをしておく。アップダウンの少ない今回のような山行では効果的なルートファインディング術といえるだろう。(2010.1.23)

【参考コースタイム】林道入口 P 8:45 幌内山頂上 11:45、〃発 12:10 → 林道入口 P 13:25 (登り 3時間、下り 1時間15分 )

 【メンバー】ko玉氏、Ogino@旭川さん、Luckyさん、saijyo、チロロ2、チロロ3(旧姓naga)

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