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      幌向岳(836.3m)

万字への途中から幌向岳を望む

 1/25000地形図  「美流渡」  「栄 町」 

頂上台地へ上がると、やっと頂上が見える
頂上は平らで、あまり特徴がない
入山口に建つ万字の浄真寺
林道に入ってすぐに4WDでも限界となる
頂上台地への急登

夕張山地の主稜線から外れた西側には、山名はないが立派に山といえる700m〜800mクラスの山々が数多く点在している。その中から、今回は八谷和彦氏著書「ガイドブックにない北海道の山々」で紹介された幌向岳と夕張・三角山を目指すことにする。幌向岳は以前の地形図には山名が載っていたそうであるが、現在はなぜか消えてしまったとのこと。この山と私は相性が悪いようで、今回で四度目の挑戦となる。一度目はちょうど1年前に降雪のために車が万字まで入れずに敗退、二度目は今年の三月で入山口となるお寺までは行ったが荒天により断念、そして三度目は八月、背丈を越える根曲がり竹に蜂の攻撃も加わり完全に気力を殺がれてしまった。  

幌向岳へ登りたいと思った要因の一つに、今は衰退してしまった万字の山であるということが挙げられる。北海道の昭和史と言えば炭鉱の栄枯盛衰の歴史でもあり、ヤマで働く多くの人々の生活や思いが身近な中に重みを持って感じられるからである。炭鉱によって隆盛した万字の街はその後の産業の変革によって衰退の一途をたどることになる。人々は去り、学校、病院はなくなり、ついには自然回帰である。正に盛者必衰であり、往時と変わらぬものは町を取り囲む自然のみといった状況にある。街中には往時の繁栄を偲ばせる炭鉱施設や商店街の痕跡が随所に残されている。大動脈であった国鉄・万字線は20年ほど前に廃止となり、バスも走ってはいるが本数は極端に少ない。残されたお年寄りたちにとっては町への買い物もままならないとの話を地元で聞いた。以前は7000人もの人々が暮らした街も、今は200〜300人がひっそりと暮らす集落へと様変わりしてしまった。

その万字の集落の外れにあるお寺(浄真寺)の手前から、この山へのアプローチとなる林道が始まる。夏には施錠されていたが、冬期間のためか鎖は取り外されている。数日前のものか轍の跡が明瞭に残っており、Ko玉氏のオフロード車にて入ることにするが、300〜400mも入ると積雪にタイヤが空回りし始め、屈強なプラドーにして早々の限界となる。この一帯は道有林であり、夏場には盛んに伐採作業が行われていたところである。昨今のニュースでは海外産の木材が高騰気味ということもあり、道内産の木材が再び脚光を浴びているとのこと。道内をテリトリーとする我々山ヤにとってはあまり歓迎できるニュースではない。

幌向岳登山の3/4は林道歩きである。西に伸びる尾根上に沿って林道は続くが、ほとんどは緩い登りとなっていて、息つく隙がない。途中、数ヶ所に土場があり夏には切ったばかりの木材が山積みにされていた。沿線の森林は針葉樹林が多く、かなり鬱蒼としている。この針葉樹林帯はおそらくは開拓期の植林によるものと思われる。標高が上がると広葉樹林との混在となり、自然林らしい雰囲気となってくる。前回は地形図上コンタ640mから続く歩道を当てにしての無雪期の計画であったが、この歩道は廃道となっていて、背丈以上の根曲がり竹が密生していた。藪の中にはピンクテープも見られたが、頭上はるか高いところに取り付けられており、積雪期のものと思われた。

幌向岳の頂上から見る岩見沢付近 頂上から望む夕張・中岳

 

夏の藪への突入地点である、地形図上の歩道起点付近にたどり着く。根曲がり竹はさすがにこの時期にはかなり埋まっているが、雪面から顔を出す笹薮はまだまだ元気で、我々の行く手を阻んでいる。700mの頂上台地上へは尾根が狭まり傾斜が増してくる。左側から巻くように藪斜面に標高を上げると広々とした尾根上となり視界が広がる。石狩平野の広がりが特に印象的で、石狩東部の山であることが実感できる。前方には目指す幌向岳が大きな姿を現すが、まだまだ遠い感じである。顔を出している笹薮は予想以上であり、夏期の登山で藪漕ぎ開始後わずか5分にて簡単に断念したことについて、幸いだったと改めて感じる。

頂上へは左側から大きく回り込む。笹が密生しているようにも見える広い緩斜面であるが、笹の密度は見た目よりは薄く、藪に近づけば雪面が広がるようにも感じられる。緩い登りが続いた先のエゾ松が一本生えている辺りが頂上のようだ。万字の町がまだまだ元気で地元で幌向岳と呼ばれていた当時は、この頂上も週末ごとの賑わいを見せていたことであろう。丸い台地状の頂上からは樹木の枝々が邪魔して山座同定には今一であるが、枝の隙間からは夕張・中岳の鋭角的な姿だけがはっきりと見ることができる。とはいえ、四度目にしての遠い頂上、終了したことへの安堵感には格別のものがある。下りは笹に足を取られるため、シールを貼ったまま慎重に下るが、林道からはほとんど登り返しもなく、一気に下ることができた。(2006.12.17)

三角山頂上から望む夕張岳の朝焼け

【夕張・三角山】

この山は八谷氏の本で初めて紹介された山である。丁未風致公園からは至近距離にあり、横を走る道道38号線からは最短で数百mといった地点にある山である。登山というには少々おこがましい感じであり、著者は「出来るだけ登山らしく」と、夕張市街地から鳩ノ巣山(622m)を経由して登っている。我々は幌向岳登山の前にこの山へ立ち寄ることにする。道道の一番近い地点に車を置き、ツボ足にてラッセルを開始するが、膝以上の積雪量に簡単にギブアップとなる。急いで車にスキーを取りに戻り、仕切り直しである。ツボでは遠く感じられた頂上もスキーを着ければ難なくクリアし、スキーの持つ機動性を改めて思い知らされる結果となる。山頂からの夕張マッターホルンを始めとする後芦別山群等の展望は実に見事で、一度は登ってみる価値がありそうだ。ただし、山のイメージとしては丁未風致公園の一角といったところである。

【参考コースタイム】《三角山》道道38号線P 7:15 → 途中、スキーを取りに戻る → 三角山頂上 7:55、〃発 8:10 → 道道38号線P 8:20 《幌向岳》浄真寺 9:00 → 地形図上の歩道起点 11:10 → 幌向岳頂上 12:10、〃発 12:30 → 地形図上の歩道起点 13:15 → 浄真寺 13:45 

メンバーKo玉氏、Sakakuさん、saijyo、チロロ2

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