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   幌扶斯山(412.6m)

礼文華付近から幌扶斯山を望む

1/25000地形図 「礼文華」「礼文華峠」

礼文華の墓地に車を止める
スギ林が美しい
まるで「もののけ姫」の世界が広がる

  雨が降っては山など登れない、これが一般常識ではあるが、日本の風景の美しさを感じさせるものの1つにこの雨がある。雨には風情があり、自然が成す潤いでもあり、晩秋のこの時期には文字通り一雨ごとに寒さが増して季節の終わりを告げる風物詩ともなる。今年三度目の「道の駅とようら」での朝はあいにくの雨となった。この日の予定はペタヌ山。この山は藪漕ぎが長く、雨の日向きではない。そこでIkkoさんが提案したのが幌扶斯山だった。彼はすでにこの山へは一度登っているとのこと。一緒に豊浦町七山の完全制覇を目指そうということで、二度目のこの山に付き合ってくれることになった。なりを潜めていたチロロ2さん、自分のバースデー標高となる413m(4月13日)については調べ上げていたようで、満面の笑顔でこの日の計画変更を喜んでいる様子。

頂上が近いと感じたが、この後は笹薮漕ぎとなる
笹薮の中の幌扶斯山頂上

 幌扶斯山の山名由来についてはあまいものこさんのサイトが詳しい。私も豊浦町史で探してみたが、地名についての項目を見つけ出すことすら出来なかった。あまいものこさんのサイトでイメージ的に直感したのが教育委員会解とあまいものこさん解で、先日の丸山山行の折に見えたこの山塊が、正に倉の連なりと感じていた。また、海岸地形を考えれば後者も然もありなんと思える。いずれにしてもこの一帯は内浦湾沿岸では特異な地形と言えるのだろう。

 Ikkoさんのサファリを先頭に、礼文華小学校や中学校を右手に見ながら入山口となる林道へと向かった。礼文華(れぶんげ)の名は母親が室蘭・伊達地区に育ったこともあって、小さな頃から何度も耳にした懐かしい地名だった。おそらくだが、遠い親戚かだれかがここに住んでいたのだろう。子供心に未知なる懐かしさを感じていたこともあり、雨の中のこの風景が実にしっくりくる。道内どこにでもある田舎町と言ってしまえばそれまでだが、地名の響きによるインパクトのみで、そんな風景さえも一変させてしまうものだ。

 登山口は墓地で、そこから周遊するように林道が延びている。落葉が堆積して路面さえ見えない程だ。墓地の施設前に車を止めて、幌扶斯山のピークが一番近づく地点までの林道歩きである。この山へのルートとしては一番利用されているらしいが、当然のこと他に登山者などいない。ふと見ると、道内ではまとまった面積としては渡島半島にしか見られない杉の木が頭上に整然と林立している。黄色が主体の路面とその濃い緑とが実にマッチしていて、ついつい見とれてしまうほどだ。もちろん、雨降りだからこそのピュアな景観と言えるのかもしれない。直ぐに林道から古い作業道へと入り、急斜面となってぐんぐん登って行く。

 登り詰めたカーブ付近が頂上への取り付き地点で、ここからは籔漕ぎ登山である。この頃から雨脚が強まり、樹木の陰で雨宿りとなる。だが、斜面自体も鬱蒼とした杉林で、すぐに行動したところで大差はないようだ。斜面は急だがスパイク長靴のピンがしっかりと地面を捉えるために快適に標高を上げることができる。杉林の中はこんな時期にもかかわらず大きなシダが青々と育っていて、何か「もののけ姫」の世界にでも入り込んだような不思議な光景を作り出している。演出者はもちろんこの雨となろう。先頭を行くIkkoさんの「Ikkoスタイル」が、そのまま登場人物にもなってしまうから面白い。倒れた杉の大木を巻きながら標高を上げて稜線上へと飛び出す。ガスがかかった状態では展望などまるでないが、こんな低山であっても高山的な雰囲気がある。もっとも、左右が海ということも影響しているのかもしれない。

 痩せ尾根上を辿り、いよいよ幌扶斯山のピークが近づく。二度目のIkkoさん、以前には笹薮を漕いで頂上に立ったとのこと。聞けば、稜線を巻くように続く踏み跡を辿って、最後は裏から回り込んだらしい。今日は真正面からのアプローチ、この状況ではすんなりと行きそうだった。だが、残り100mを切った地点でいきなり笹薮漕ぎとなる。雨の中の笹薮漕ぎ、さすがにこれには風情も情緒もない。唯一あるのは笹をかき分け黙々と前へと進むことのみである。たどり着いた頂上には三等三角点「幌扶斯山」が埋まっていた。欲を言えば、やはり眺望が欲しい。ましてや左右が海ともなればなおさらである。新ピークを狙い続けてきた人間の本性として、いくら自分に言い聞かせても風情よりはお山の大将と頂上ビールに勝るものはない。

 今日はチロロ2さんがどこからか調達してきた「黒ラベル」が登頂の祝い酒、運転がない時だけの至福の一缶である。室蘭本線を走る貨物列車の音が意外に近く、やはり400mの低山を感じさせる。雨の中での一山ゲット、贅沢は言うまいと思いつつ、登ってきたルートへの下降の開始とする。(2014.11.2)

参考コースタイム】  礼文華・墓地 P 7:50  幌扶斯山頂上 9:10、〃 発 9:30 → 礼文華・墓地 P 10:15 (登山時間 登り 1時間20分、下り 45分)

メンバーIkkoさん、saijyo、チロロ2

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