<戻る

           幌別(892.3)

林道から見る幌別岳

/25000地形図 「目名」

三之助第二川にかかる橋付近に車を止める
屈曲地点までは平凡な流れの少ない沢相
コンタ550m付近からは雪渓歩きとなる
F2は泥が固まったような5〜6mの滝である

雪渓に埋まった沢歩きの難しさをつくづく感じ、この時期の沢へ安易に入渓したことについて大いに反省させられる山行だった。 蘭越/幌別岳は尻別川を挟んで、ニセコ連山の西側に位置する800〜900mの山塊の主峰で、今回のアプローチは蘭越町・目名からである。5年ほど前に2回の山行でピークを踏み、スキー登山の山としては良い印象を持っている。1回目は、12月に入る。後志地方は豪雪地帯ということでこの時期に計画したが、この年は雪が少なかったのか、スキーを履いての藪漕ぎとなり、シールでは踏ん張りも利かず、コンタ650m付近で時間切れ敗退となった。その翌年の3月に再び登った同じルートは、藪もすっかり埋まり、日照時間も長く、意外に簡単に頂上を落とすことが出来た。特に下りは12月に苦労した斜面も絶好のスロープとなり、車止めまでの約40分間、快適な滑りを楽しむことが出来た。

今回はこの“冬尾根”の直ぐ南側を流れる、三之助第二川を遡ることにする。林道・貝川線(1/25000地形図には載っていない)の三之助第二川にかかる橋から入渓するが、水量も少なく、大きく蛇行する“小川”は簡単にピークへ行けることを想像させてしまう。ただし、流量が少ないためか、藻が多く滑りやすい。コンタ450m屈曲地点付近までは平凡な沢相である。地形図上、この屈曲地点から標高差100mの間が核心部と想像していたが、両側が立っているわりに流れは平凡であり、やはり小さな川であると少し安心する。ここを過ぎてコンタ550m付近からは雪渓が現れる。小さな沢の雪渓であるため、沢全体を埋めているものと考え、この雪渓上を快適に登って行く。緩く右にカーブするコンタ650m付近で両岸が迫り、雪渓が狭くなる。そこを通過して驚いた。雪渓の頭は滝の落ち口となっていて穴がぽっかり開いていた。中を覗くと約8〜10mはありそうで、滝壷は暗くプール状となっている。我々が通過した雪渓は落ち口のブリッヂ状の上で、かなり薄くなっていた。何時すっぽ抜けてもおかしくない状態だが、登って行く途中では判らず、通過後にこの穴を覗いて背筋が寒くなった。通過の時間帯、融雪状況を考えると雪渓が崩れなかったのは幸運だったとしか言いようがない。このF1(雪渓に埋まっている部分は未確認)はスラブ状で磨かれており、落ちて仮に無事だったとしても、登り返す手立ては全くない。この時期の沢経験の足りなさを痛切に感じる。ここを通過してしまった以上、両岸が立っているこの沢筋からの脱出方法は登り切る以外になくなった。

コンタ700m付近でF2が現れる。泥が長い年月の間に固まったような5〜6mの滝である。細かく石がはめ込まれているような状態だが、これを手がかりに水際の左側を攀じ登る。2番手はザイルで確保する。気温が上昇してきたため、この後の雪渓歩きで数度にわたり足元がすっぽ抜けるが、沢底までは浅く事なきを得る。F1の雪渓に埋まった滝を見ているだけに、何処に滝があり、何時落ちるかわからないような状況は何とも恐ろしい。コンタ750m付近で小滝が現れるが、近づいてみると滝の上部が見えているだけで、やはり7〜8m位はありそうである。この滝は取り付くことも出来ず、右岸のルンゼ状の沢形へ笹を手がかりに取り付き、何とか滝の上部へ抜ける。この後も細々と雪渓は続いており傾斜があるため、スパイク地下足袋に履き替えることにする。このような急傾斜の雪渓下には思わぬ滝が隠されていることを知り、ここを完全に抜けきるまでは、とても休憩する気にはなれない。結局この雪渓は頂上直下まで続いていて、笹薮に消える。

頂上には一等三角点の新しい標石が設置されていた 北に続く刈分け道の向こうには、雷電山と目国内岳が望まれる

この笹薮を少し漕ぐと国境稜線で、広く刈り分けされていた。左へ数mほど歩くと、新しい一等三角点が設置された幌別岳ピークである。測量のためと思われる刈り分け道は北の830m三角点ピークへ続いていると思われる。登りながら、どのルートで下山するかを考えていた。F1に落ちて身動きが取れなくなった状態が容易に想像され、気温が高くなっていくこれからの時間帯はとても沢を下降する気にはなれない。藪を漕いでの“冬尾根”下降も考えるが、途中で沢に下ってしまう可能性もあり、このルートも遠慮したい気分である。結局、この刈り分け道を降りることにする。頂上からの刈り分け道は地形図に載っていないので、どこに下りるかは判らないが、距離はあっても尾根を下山して車回収に向かう方が良いと判断する。

この刈り分け道はどんどん北へ向う。つい最近人が入ったと思われる形跡がある。刈り分け道は荒く、歩きづらい。結局、830.1m標高点に抜け、地形図上に記されている国境稜線上の歩道へと続いていた。この刈り分け道を幌別岳の夏山登山道として利用することは十分可能であるが、それなりに時間的な余裕が必要である。アプローチとして利用した林道は冬に三之助第一川沿いの地形図上の小道を進んで偶然発見したので出口・入口が判明せず、下りてからの車の回収については全く未知数である。下山後、車を止めた林道の分岐を発見したが、車の回収には約8kmの林道を歩くことになる。 (2003.6.8)

【参考コースタイム】林道三之助第二川出合 7:13 → コンタ550m雪渓出合 8:27 → F2 9:04 → 幌別岳頂上 11:02 → 林道終点(下山) 13:54 → 林道三之助第二川出合 15:35

【メンバー】saijyo、チロロ2

  <最初へ戻る