<戻る

  ヒクタV

/25000地形図「余市岳」

ヒクタU峰も頂上は狭い
定天は真後から望むことになる
斜め45°の岩峰
今回目指した最高地点があるヒクタV峰
V峰から望む白井岳
当初、頂上と思った1083m標高点の頂上

昨年の春に頂上を踏んだと思い満足して下りてきたヒクタ峰、その後の情報により踏んだのは頂上(最高地点)ではなかったことが判明する。この山の名を耳にすると何時も心の奥底では重荷となっていたピークである。今度こそは最高地点を極めようとの思いで再挑戦となる。助っ人を買って出たKo玉氏、彼の目指す新ピークとは少々違うが、ここは彼も盟友として山ヤとして放って置けなかったようで、メンバーへの参加を急遽申し出る。前回は雪が安定している3月下旬、今回は暖冬と言われていても厳冬期であり、前回とは条件的には少々勝手が違う。

昨年通りの樹林帯の急斜面、今年は雪が少ないとは言っても深雪ラッセルの時期であり、一汗も二汗もかきながらの登高に、直ぐにオーバーヤッケが邪魔となる。前回どおり873m標高点は巻いて、830mコルへと向かう。滑りには格好の大斜面を登って、雪庇の張り出した一般的には頂上と言われている1083m標高点に到着である。ここまでは前回とほとんど変わりはない。違うところと言えば、頂上を示す私設の看板(最近はいろいろなピークで見かける、藤色の看板)が設置されたところである。この看板、ネジ釘でしっかり止められており、設置を認めない登山者がしばしば看板を捨ててしまうためか、設置者も対策を講じたようだ。頂上看板の設置にここまでこだわる必要性が私には理解できない。登山という自然に触れようとする行為の中で、人為的なものを何も残さぬことが次世代への贈り物であり、自然を楽しませてもらっている我々の責任である。U峰目は近い。トラバース気味に回り込み、スキーを置いて一登りで頂上へ飛び出す。ただし、ここはかなり狭いため、立ち上がると足がすくむ感じである。

いよいよ問題のV峰である。厳冬期ということもあって積雪量が多く、しかも不安定な付き方となっている。一見、どこから取り付いたら良いのか判らず、とりあえずはスキーをデポして近づいてみることにする。大抵の場合は近づくことによってルートがある程度は見えてくるものだが、通常ルートと思われる稜線側には団子状の雪庇が張り付いていて、とても取付ける状態ではない。見ると、北西面は岩面が凹状となっており、積雪によって覆道のようになっている。覆い被さった雪塊の下には木の根っこが飛び出していて、これに捕まりさえすれば岩峰上へ続く痩せ尾根へは取付けそうだ。先頭を行くチロロ3さんが雪を払いながら尾根上へ何とか飛び出す。が、なかなか進んで行かない。尾根上の右下方がスッパリと切れ落ちているとのことである。そこは修羅場を何度も切り抜けてきた彼女、果敢にここを乗り切ってしまう。

支点を探し、尾根上の積雪を払っていてハイ松が現れたとのことで、それに捕まって登ったようである。確かに痩せ尾根上はとても下を見られる状況ではなかった。飛び出したハイ松が唯一の拠り所であり、とにかくこれをつかんでいるより他に方法はない。藁をもつかむ思いとはこんな状況を言うのかもしれない。足場は悪く、雪面から足を踏み抜くが、雪面の下はハイ松となっていて、後続がいる場所の天井となっているようだ。後で聞けば、雪がバラバラと落ちてきて空がのぞいたとのこと。ここで断念と考えるのが普通であるが、先頭は既に難所を抜けてしまっている。やはり細引きの一つでもザックに入れておくべきだったと反省するが、あとの祭りである。ハイ松頼りの数メートル、下は決して見ないように進み、何とか岩峰上へと飛び出る。

岩峰上は一見平らであるが、どこに落とし穴が潜んでいるか判らず、やはり気は抜けない。最高地点は隣の岩峰で一度小さな鞍部を渡らなければならず、ルンゼ状の急斜面のトラバースを考えるが、雪崩れる場面が頭にちらついて最初の一歩がなかなか踏み出せない。結局、斜面の頭へ飛び降りて、雪渓上を渡って頂上へとたどり着く。頂上にはコブ岩が二つ、高い方に手で触って登頂とする。展望は抜群で、白井岳の大きな姿や定山渓天狗岳など、迫力ある姿で望まれる。“ピサの斜塔”と言われる斜め45°に傾いた岩峰も間近に見えるが、基部まで覗き込む余裕はない。狭い上に何処で雪渓をスッポ抜くか判らない状態では下手に動くこともできず、記念写真を撮り、到着した順番のままそそくさと最後尾から下山を開始する。団子状の雪庇はそのまま慎重に稜線上へ滑り降りることにして、危険箇所を下りでは使わないことにする。

帰路、1083m頂上では後続のパーティとすれ違う。エールの交換後、決してV峰へは行かぬよう促してから下山を開始する。このヒクタ峰、札幌圏ということもあり、かなり一般化しつつあるようであった。 (2007.1.28)

【参考コースタイム】 除雪スペースP 8:50 → コル 11:05 → ヒクタ峰1083m標高点 11:55 →  ヒクタ峰V峰 12:35 → 除雪スペースP 14:40 

メンバーko玉氏、saijyo、チロロ2、チロロ3(旧姓naga)

<最初へ戻る