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      東暑寒岳(1125.9m)

東暑寒岳と思われる1213m峰 ・・・三角点はさらに下る

1/25000地形図「暑寒別岳」寒沢」

1213m峰頂上付近から振り返る
東暑寒岳・三角点から恵岱岳を望む
暑寒荘前にて出発前のひと時
北暑寒を目指す
まずは北暑寒を目指す

暑寒別岳には本峰を囲むように東西南北の“暑寒”がある。登山道が整備された南暑寒岳は雨竜沼湿原があり夏期には多くの登山者で賑わう。西暑寒別岳は高くて立派だが、山名は通称であり、地形的な難しさもあって、訪れる人はほとんどいない。残る北暑寒岳と東暑寒岳は点名がそのまま地形図上に山名として記載されていたと思われるが、およそ山としての存在感はないに等しい。東暑寒岳を敢えて山とするならば、三角点西側の1213m峰なら東暑寒岳の頂上としては何とか通用するかもしれない。今回はとりあえず、三角点「東暑寒岳」が最終目的地点である。点の記では暑寒別岳頂上から約2qの刈り分けを作って到達とあり、我々も一番アプローチが容易と思われるこのルートからの挑戦である。ただし、本峰からは標高差にして360mほども下らなければならず、心理的なプレッシャーは大きい。

今回は山の知人である・赤平W氏の暑寒荘〜暑寒別岳の毎年恒例となっている山行に便乗する形での計画である。多くの登山者で賑わう暑寒別岳山ノ神ルートを登って行くが、今回の山行では「北暑寒岳」も踏まなければならず、途中の649m標高点を過ぎたあたりで彼らと別れ、徐々に左寄りに進路を取り、箸別川・左岸の広い尾根上を北へ向う。1kmほどで尾根上の突起が現れ、「北暑寒岳」と思われたが、三角点はもう少し先の斜面上であった。地形図を見て、付近全体を一つの山と考えれば、この突起が北暑寒岳頂上と言えるのかもしれないが、三角点設置の折には暑寒別岳の北側にある三角点ということでそう命名したようにも思う。三角点付近は広い雪原となっていて見晴らしは良い。

長い見通しの良い雪原を徐々に標高を上げながら山の神ルートを目指す。1075.9m三角点がある小ピーク手前で山の神ルートに戻るが、晴天ということもあり登山者は多い。ただし、風がけっこう強く、引き返すパーティも現れる。1220m付近の暑寒別岳頂上台地手前の大斜面手前にスキーを置いてツボ足にて東暑寒岳を目指すことにする。ルート上は強風が予測されるため、スキーで歩くよりはツボで歩く方が安定感があるだろうとの判断である。

頂上は帰りに立ち寄ることにして、そのまま下降尾根へはトラバース気味に進む。部分的には硬雪も混じる新信砂川源頭への斜面は急で、油断すれば滑り落ちて行きそうだ。ここは真っ直ぐ下って、斜面が緩くなってから尾根上へと移る。振り返ると暑寒別岳本峰が間近に圧倒的な迫力で迫ってくる。雨竜沼湿原から見るどっしりとした箱型の暑寒別岳で、このルートを歩く者のみが味わうことのできる特典といえる。目指す東暑寒岳はさらに遠く、さらに下らなければならない。

表面が解けている雪面は落し穴のように埋まってしまうため、白い雪面を探しながら雪庇の際にルートを取る。一ヶ所、身長以上の深い落し穴に驚かされるが、雪渓のズレにより生じたものと思われ、春山ではしばしばあることだ。1213m標高点へは一登りであるが、確かに東暑寒岳の頂上といった雰囲気はある。南暑寒岳はじめ展望は素晴らしい。ここからはスノーモビルの走行跡が広い雪面に続き、里山といった感じになる。三角点はさらに標高を落とさなければならず、帰路を考えるとさすがに嫌気が差す。三角点の設置点は斜面の途中であり、なぜこんなところに設置したのだろう…といった感じである。地形のためか風が妙に強く、そそくさと三角点地点を後にする。

暑寒別岳東側の尾根から本峰を望む

この頃からか、暑寒別本峰が霞みはじめ、1213m標高点へ戻る頃には何も見えなくなる。大きく標高を上げなければ帰路へは戻れない状況下、天候が急変、敢えて突っ込んで遭難してしまうケースは多い。この場合、心理的なプレッシャーがその後の行動に大きく左右するのかもしれない。この日の難敵は風とガスであるが、我々としては戻る力量は十分であると自負している。Ko玉氏は本峰下降中、途中から稜線上へわざわざ迂回して足跡を残していた。帰路でそのまま急斜面へ登り返さないためのもので、ホワイトアウトの中ではかなり効果的であった。方向が判るだけでなく位置も正確に判り、さすがに先を読むことに長けた氏ならではの機転である。頂上台地上には小さなコブがあり、視界12mのホワイトアウトの中ではさすがに惑わされる。それでも頂上へは意外に簡単に辿り着く。後は一番しっかりとしたトレース跡を見逃すことなく下降して、スキーのデポ地点へ戻るだけである。

暑寒別岳頂上は烈風とガスの中 下山した頃には青空が戻っていた

台地上を越えるガスは猛スピードで東側へ流れ、先ほどまで見えていた山々の谷間が見る間にガスで埋め尽くされて行く。終には雲海となって、暑寒の頂上付近には青空さえ覗き始める。山の天気は変わりやすいとはよく言われるが、ここまでの激しさにはめったにお目にかかれない。見通しが良くなった台地上では強風のみが吹き荒れ、うかうかしていると不意にバランスを崩し飛ばされそうだ。徐々に標高を落とし、スキーのデポ地点へと慎重に戻る。

スキーのシールを剥がし、さあ下降と思っていると、5人パーティが頭上の稜線に現れる。嵐の中、南暑寒あたりから縦走してきた屈強なパーティかと思いきや、なんと同行のW氏パーティの一部、暑寒頂上付近まで同行したH氏、その場で一緒になったという登山者2名の計5名であった。彼らはホワイトアウトのなか、天候の回復をじっと待っていたとのこと。我々がもう誰も残っていないと思っていた頂上付近に留まっていたそうである。東暑寒までの計画通りの行動だったとはいえ、無線機くらいは用意すべきだったと反省する。下りのルートはスキーのトレースだらけである。吹き荒れていたガスは標高を落として安堵したのか、塊となって静かに下降ルートの尾根を取り囲んでいた。 (2007.4.29) 

【参考コースタイム】 暑寒荘前(出発)650 → 三角点「北暑寒岳」855 三角点「東暑寒岳」12:40 → 暑寒別岳頂上 1430 → 暑寒荘前(下山)1610 (上り5時間50分、下り3時間30分)

  【メンバーKo玉氏、saijyo

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