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 日高幌尻岳(2052.4m) 額平コース日帰り

 

登山道の途中から見る日高幌尻岳

1/25000地形図幌尻

駐車場は車でいっぱい
事実上の登山口である北電取水口。自転車を使う人も・・・
登山者の憩いの場である幌尻山荘

日高幌尻岳といえば、誰もが知っている「日本100名山」(深田久弥著)最難関の山である。もっとも、本州在住といったことを前提として考えれば、距離的な要因が多分に考えられる位置づけであろうが、長い林道走行、途中には沢の遡行といった要素など、奥深さという意味では確かに気軽に行ける山ではない。幌尻山荘に一泊しなければならないというのが世の認識であるが、最近のWeb上には日帰りでこの山へ登ったという記録がちらほら見られるようになった。難しさというよりは体力勝負といったところである。私も今回で二度目の日帰り山行であるが、一度目はまだ20代の頃で、若さのみで登ったという思い出がある。泊まらなければ登れないと言われていた山への日帰りチャレンジであった。今回は翌週に長い沢を連荘で計画していることもあり、体力の確認という意味での計画である。

チロロ2さんは膝の調子が何となく悪いそうで、登山口にて待っているとのこと。林道奥深くまで入ってしまった以上、彼女には悪いが一人でも行かなければならない。それにしても、車止めが以前よりもずいぶん手前になった感じである。駐車スペースにはバスを始め数多くの乗用車が並んでいる。さすがに日本100名山の一山である。距離を測ったところ、実質上の登山口である北電の取水口までは約6kmはありそうだ。7時発では中途半端な時間帯なのか、他にはだれも歩いていない。とにかく人を待たせている以上は急がなければならない。

途中、かなり飛ばしたこともあり、約1時間半で取水口へ到着する。ここからは沢沿いの登山道となるが、そのまま沢を行った方が速そうだ。北カールの残雪が残っているのか、水がかなり冷たい。水量も意外に多く、このまま水に浸かっていては体力を無駄に消耗しかねないので、途中からは登山道をできるだけ利用することにする。取水口までの林道が長かったせいか、幌尻山荘までの沢歩きは意外に短く感じられる。山荘では皆のんびりと過ごしていて、時間と競争している自分だけが馬鹿みたいだ。それでも一休みした後、そそくさと山荘を後にする。

ここから頂上は距離こそ短いが、標高差にして約1000mは登らなければならず、さすがに日高山脈一の高さを誇る山である。最初は快調に飛ばしていたが、視界が開け始める1497m標高点を過ぎたあたりから無理した付けが回ってきたようだ。途中で抜いてきた老年登山者にも追いつかれ、道を避け、どうぞお先に…といった始末である。1930m標高点までは無理して進んだが、どう頑張ってもこれ以上は体が動かない。私は糖尿病ではないが、低血糖の症状に近い状態なのかもしれない。ふるえがくる前にどうにかしなくてはと大休止、甘いもの、いやカロリーのあるものならどんなものでもとばかりに、ザックをひっくり返して行動食を食べ尽くす。

北カール付近を見下ろす 頂上は中高年の登山者であふれていた

しばらく休み、何となくではあるが、動ける気がしてきた。頂上までは道を譲りながらもカメのようなスピードで何とか到着する。後は往路の下りである。とりあえずは折り返し地点を過ぎたこともあり、気持は何となく楽になる。下りはやはり速く、見るみる標高が落ちて行く。再び登山者を抜かしながら下り、途中のハイマツの根が露出した急坂だけは慎重に降り、山荘には約1時間20分で到着する。再び気持が高揚しはじめ、まだまだやれるぞ!という気力が湧いて来るが、ふと考えると中身の貧しい登山をやっているな…という自己嫌悪の念も自覚する。

途中のバテにより予想以上の時間を費やしてしまったこともあり、山荘前では喉を癒すにとどめ、直ぐに沢沿いの道へと向かう。出発直後こそ誰もいなかったが、三連休の中日ということもあり、途中からは登ってくる登山者や帰路に着く大きなザックを担いだ前泊組みの登山者の姿がちらほら見られる。その多くがザックカバーを付けており、おそらく本州方面からの登山者と思われる。チロロ2さんを車止めに長時間待たせていることもあり、林道ではザックを担いで走ることも度々、結局、9時間40分を費やして無事山行を終える。

 日高幌尻岳は素晴らしい山で、美しい高山植物が今は時とばかりに咲き誇っていた。種類も実に豊富で、出来れば十分に時間をかけ、じっくりと観察したかったというのが本音である。また、糠平川を山荘からそのまま詰めて北カールに抜けるルートも変化があって面白そうである。この山について言えば、日帰り登山も十分に可能ではあるが、無理したところで、自分は何時間何分でこの山を踏破したという自己満足以外には何も残らない。それよりはこの素晴らしい山を十二分に楽しみ、味わうことこそが本来の山ヤのあるべき姿だと思う。登山時間が速いことが山の実力なのかと言えば、それはとんでもない思い込み違いであり、単に登山という素晴らしい行為を歪に捉えているだけである。スタンプラリーのような100名山完登を主目的としてこの山を訪れる登山者が多い昨今、日高幌尻岳には申し訳ないという思いを残す山行となってしまった。(2007.7.15)

※写真は携帯電話にて撮影

【参考コースタイム】 林道P 7:10 → 北電取水口 8:35 幌尻山荘 9:45 → 日高幌尻岳頂上 12:50、〃発 13:00 幌尻山荘 14:20 北電取水口 15:35 → 林道P 1650 (登り 5時間40分・下り 3時間50分)

  【メンバー saijyo

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