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       早月(629.6m)

コンタ470m、高原状の台地から望む早月山

 1/25000地形図「仲洞爺」

財田の除雪終点に車を置く
林道のラッセルが続く

“早月”とは五月を意味する“さつき”で、ここでは“はやつき”となっているが、おそらくは洞爺村へ最初に入植した人達によってそう呼ばれるようになったのだろう。北海道に住んでいれば五月は長い冬から開放された、一年を通して一番希望の涌いてくる季節でもある。この地区の手前には財田(たからだ)と呼ばれる地区名もあり、道内に限らずだが、地名にはこのような縁起を担いでの命名が多い。早月山はこの地区にある特徴的な山ということで、地区の名がそのまま山名になったと思われる。機会があれば、この地域の歴史をじっくりと調べてみたい。

Web情報によるとこの山は私有地とのこと。所有者はハイカーの無断立入りに対して感情を害しているらしい。ところがこの山には親切丁寧な指導標も置かれているようだ。この矛盾する状況がなぜ起こったのかは良く判らないが、指導標が撤去されていない以上はこの山への登山を肯定する向きも存在していると推測する。今後、どのような結末となるかは判らないが、今のうちに一度はこのピークを踏んでおきたかった。そんなことで、今回は出来る限り私有地への立入りをせぬよう、早月川の林道を使って西側に伸びる尾根からの入山とした。

地形図上の財田の“田”の字の地点までが除雪区間となっていて最終人家がある。我々はこの除雪終点に車を置き、小雪の中をここからスタートする。目指す取付き地点までは約1.8km、単調な林道歩きである。この日の最高気温は−5℃の予想、スキーは脛くらいまで沈むが、雪は軽いので出足からの快調なラッセルとなる。一汗流せば身体も温まってくるのでまずまずのコンディションといえるだろう。壮瞥川から支流の早月川沿いへと分岐、砂防ダムを過ぎると尾根取付きは近い。そのまま壮瞥川を進むと昨今話題となっている変化に富んだ渓流があるとのこと。

尾根取付きは針葉樹となっていて、直ぐに急登となる。斜面に大きくジグをきって60mほど登ると傾斜は落ち着く。ここからは単調な尾根、ふと気が付くと作業道と思われる道路跡が平行して走っている。これを利用するのも1つの方法だが、うっかり離れてしまっては元も子もない。ここはたとえ無駄があったとしても登りということで尾根筋を忠実にたどることにしよう。

頂上台地の針葉樹林帯は密度が濃い 早月山頂上到着

コンタ470mで高原状の台地へと飛び出す。視界は悪いが斜面全体が右側に緩く傾いているので頂上は左側。樹木のない広い雪面を突き抜けて密度の濃い針葉樹林帯へと入る。途中、倒木と思われる不自然な突起を越えるが、倒木にしては横に長すぎるので、ひょっとしたら放牧地の柵かもしれない。既に私有地に入っていることも考えられ、無断で立ち入っていることもありうる。ここは積雪期でもあり勘弁してほしいところ。地主さん、ごめんなさい!… ひょっとしたら、誤って進入でもしてしまった場合には今や大流行のアクシデントやインシデントのレポートでも書かなければならない時代がやってくるのかもしれない。山の世界も今の世の中を象徴するかのように息苦しくなったものとつくづく感じさせられる今日この頃である。

斜面の傾斜が増してくる。頂上付近は平だと勘違いしていたが、雪の止んだ下山時に確認したところでは確かに小高い峰となっていた。この日は山全体を見ることは出来なかったが、晴れていれば、きっとそれなりの山容を望むことが出来るのだろう。樹林帯が切れて広い雪面のやや先に棒杭が見える。どう見ても山頂である。最後のラッセルを100m?ほど、晴れた日には素晴らしい眺望と言われている早月山の頂上に立つ。あいにくこの日は雪雲に覆われて視界は利かない。晴れていれば洞爺湖全体が見渡せるとのこと。

 風下側に少し下って、しばし休憩する。もちろん、初登を祝う頂上ビールも一口。下りの滑りに期待して頂上を後にするが、緩斜面に深雪とあっては滑れる箇所はほとんどない。まともに滑れる場所としては、頂上からの少しの区間と忠実に辿ってきた西尾根の北側斜面くらいのものだった。滑りを一番の楽しみとする同行したHo氏には少々期待外れだったかもしれない。降雪の中の下山だったが、山から離れ洞爺湖畔へと出ると山側は雪雲で真っ白となっているにも関わらず晴天となった。西高東低の気圧配置のこの週末、道内の各地で交通事故が多発していた。今回の山行で一番苦労したのは翌日移動した積丹方面でのホワイトアウトの中での運転だったかもしれない。数多い山行の中にはこんな山行があっても仕方がないと感じる週末であった。(24.02.11)

【参考コースタイム】財田・除雪終点 9:50 → 西尾根取付 10:50 早月山頂上 12:40、〃発 13:00 → 西尾根取付 13:50 財田・除雪終点 14:20     (登り2時間50分、下り 1時間20分)

メンバー山遊人さん、Horie氏、saijyo、チロロ2、チロロ3(旧姓naga)

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