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   初子山(723.4m)

 

1/25000地形図 「瑠辺蘂山」「野花南」

秋の葉No.1 (Ikkoさん提供)

googleの航空写真はなかなか使えます

 午前中に熊山を下山、次に向かったのが同じ山域の初子山だった。初子? このほかにも幌内山地には丸子山というのもあり、両山ともアイヌ語に由来した山名とは思えない。ひょっとしたら当時の測量関係者に関わる女性の名が点名となり、時代を経て山名となったのではないだろうか。この件については、いづれ調べてみたいと思っている。

 この山のアプローチとなる北沢川沿いの林道は、6年前の冬に瑠辺蕊山の山行で入っており、今回は二度目となる。ところが、この日は北沢川沢への分岐手前のゲートで施錠されており、ゲートには白地に黒字で、書いたばかりと思わせるような「本日作業中」との掲示がある。設置具合をよく見たところ、掲示はかなりがっちりと固定されており、この日に設置されたものではないようだ。おそらくは案山子効果を狙ったのだろう。閉じられたゲート前に、しばし呆然と立ち竦んでいた。と、その時だった。林道から営林署OBと名乗る釣り帰りの老人が現れ「実際に作業しているようなら戻ってくれば良いさ」と、カギ番号を教えてくれた。聞けばこの近くに住んでいるらしい。まるでイソップ寓話「金の斧」の世界そのものである。国有林でもあり、登山という真っ当な理由であれば入ることには何の支障もない。ただし、火気と車の駐車場所にだけは注意しなければならないとのこと。もちろん我々は正直者、私だけならきっと万事休すであったが、“持っている男”とはまさにIKKOさんのことで、神がかり的な展開となり、ゲートをすんなり通過する。

  北沢川の林道沿線には切り出したばかりの樹木が積み重ねられており、この日に行われているかどうかは別として、伐採作業が行われているのは事実のようだ。初子山へのルートはgoogleの航空写真に写っているので、楽勝間違いなしと思いつつ取付き地点へと向かう。何時もであれば同日二山など決してやらないチロロ2さんも、この初子山には参加とのこと。林道はさすがに今現在使用中なので、それなりにしっかりとしている。おかげで、予定していた尾根取付き地点へは難なく到着することができた。

稜線上の籔を漕ぐチロロ2さん
初子山頂上にて
三等三角点「初子山」 (Ikkoさん提供)

  ところが、辺りを見た感じでは航空写真に写っていた作業道の入口などはどこにも見当たらない。よく考えてみれば、こんな場合は入口付近が雑草に覆い隠されているケースが多く、濃淡のみで表現された航空写真の情報のみでそれを読取るのは難しい。とりあえず雑草の中を進んでいるうちに予想通りの作業道跡が現れる。写っていたルートは川の向こう側だが、こちらの作業道跡もそれなにりにしっかりとしていて利用する価値は十分にありそうだ。私はそもそもが楽天家なので、どこかでつながっているだろうとのアバウトな見通しで、そのままこの作業道跡を詰ることに賛同する。

初子山頂上付近から十勝連峰を望む (Ikkoさん提供)

 作業道跡は途切れずに続くが、どうも初子山へは向かわず、少々離れた543mの小ピークへとつながっている様子。地形図をみれば、このピークからは点線で表された歩道が初子山へと続いている。であれば、先ず目指すは543m標高点である。作業道跡は怪しくなりつつも徐々に標高点に近づき、あと100mちよっとの地点で終点となる。地形図上の歩道は地形図が作成された時点のもので、今現在も使用されているかどうかは判らない。だが、頭の中では稜線上の歩道の様子が思い描かれるから人間というものは自分の都合の良いように解釈してしまう動物である。

 あと少しの辛抱と急斜面に笹薮を漕ぐが、結果は標高点を過ぎても歩道は現れなかった。期待もあっただけにがっくりだった。ただ、作業道らしき平らな籔面は途切れ途切れに見られ、確かに以前には歩道が存在していたようだ。今更引き返すわけにも行かず、初子山を目指して稜線をたどることにする。次の558m標高点はオマン川からの歩道がつながる地点で、ひょっとしたらと再び期待したが様子は変わらなかった。ところどころで現れる歩道の形跡をつなぎながらも、少しずつではあるが初子山のピークが近づいている。だが、藪また藪ともなればやはり遠い。そのうち、我々も学習したのか、時折現れる歩道跡にも一喜一憂などしなくなる。

 当初予定していた下りのルートとの分岐を過ぎて最後の登り、このあたりから籔が特に濃くなり生みの苦しみを味わう。というよりは、さすがにこの日の二山目でもあり、疲れの方が一足先にピークに達してしまった状態と言った方がよいかもしれない。こうなれば頂上が遠く感じられるのは当たり前。頂上を落とせると実感したのは残り100mを切ってからだった。一足速いIkkoさんから三角点到着との報告。無雪期にも登られているのかもしれないとのこと。確かに到着してみると三等三角点「初子山」は綺麗に飛び出していた。木々が邪魔して眺望はないが、三角点の周りはすっきりとしており、頂上という雰囲気は伝わってくる。一般的には単なる藪山の頂上だが、我々にとっては金の斧以上のものがある。何はともあれ、この日のノルマは終了、金麦で喉を潤しほっと一息。しかし、このピークに無雪期に登った人間が居るとすれば、どこからだろうか? なぜなら、地形図上の歩道を利用しての登頂など、考えられないからである。登りに2時間20分ほどかかってしまった。秋の日はつるべ落とし。であれば、下りは1時間と大胆予測。もちろん、この予測には多分に期待が込められていた。

秋の葉No. 2  (Ikkoさん提供)

 途中の分岐からは予定した尾根方向へと進路を変える。少し下った地点からはルートが一変した。やはり正直者には神も味方するようだ。獣道と思われる踏み跡が点々と続き始め、下草の無い快適な下りとなる。こちらの踏み跡は途切れることなく続き、コンタ520mから先ではかなり急ではあるが広いブル道が現れた。航空写真に写しだされていたそれである。このブル道は途中で小沢を渡って、途切れること無くスタート地点の雑草が茂った広場へと続いていた。計らずも、予想していたちょうど1時間の下りとなる。広場の少し手前には赤布が付けられていたが、これを付けた位置がもう少し目立ったところであれば、登りの苦労など無かっただろう。

 この初子山だが、分岐から頂上までの笹刈りでもやれば、翌日には立派にガイドブックに登場してもおかしくないメジャーな山となるだろうが、果たして、一般の人間がこの山に魅力を感じるかどうかは疑問符である。何時終わるとも知れない藪漕ぎがあって、初めて価値ある一山となったようにも思える。今回の山行を終えての率直な感想である。(2014.9.28) 

参考コースタイム】  林道取付き P 12:15  初子山頂上 14:35、〃 発 14:50 → 林道取付き P 15:55 (登山時間 登り2時間20分、下り 1 時間 5分)

メンバーIkkoさん、saijyo、チロロ2

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