<戻る

   大滝山(543.7m)初神山(562m)

 

1/25000地形図 「石 崎」

初神山_藪尾根から大滝山 (Ikkoさん提供)
初神山側の国道の脇に車を止める
大滝橋にある古戦場を示す木杭
F1は緩い滝、 難なく通過する
その後も小滝が現れ、最後のF4
藪の中に三等三角点「大滝山」を発見

  札幌を出る時には考えてもいなかった山へと向かうことになる。名前さえ、その位置さえも知らない山だ。前日に泊まった「ゲストハウス自遊旅」でここの管理人・も〜さんとの話の中に出てきた大滝山〜初神山である。ことの発端は、も〜さんの推薦ルートがあるとのことでこの山の話題となったことだ。5年前にはKo玉氏とsakag氏が登っていることも、も〜さんのタブレットを見せてもらって判った。彼らは大滝山への尾根筋を藪漕ぎで登ったようだ。その一本北側の尾根がも〜さんが考えている推奨ルートで、取付き付近は藪が薄いとのこと。まあ、この山にもいつかは登ることになるだろうとこの時は考えていた。ところが、夕方Ikkoさんが到着、酔いがまわってくる頃からこの話が急に具体化する。場所は函館からは100kmほど先の上の国町、朝は5時起きの出発ということで、結局、この日の夜会はおひらきとなってしまった。

 当初予定していた大滝橋周辺には適当な駐車スペースがなく、初神山から伸びる尾根末端付近の国道脇に車を止める。スタート地点から、必然的に初神山から狙うことに決まるが、その取付き地点をどこにするかである。積丹の山々もそうだが、海岸からの河川は急俊なケースが多い。しかし、コンタが混んでいても意外に平易な沢もあり、こればかりは入ってみなければ判らない。とりあえずは大滝橋まで戻って、初神山の西面に直登する沢の様子を見てみることにする。橋の袂には「大滝古戦場」と書かれた木杭が立てられているが、この山では明治元年に土方歳三軍の額兵隊と松前藩・守備隊との間で戦闘があったとのこと。守備隊はこの山に布陣して土方軍を待ち伏せしていたが、土方隊はこの山を越えて上部から銃撃、守備隊は敗走したらしい。そんな歴史があったと知ったのは後日のこと。単なる藪山と思っていたがさすがに道南の山で、箱館戦争の一舞台となっていたのだから凄い話である。

大滝山頂上からの眺め  遠くに海が見える 初神山までは籔また籔
比較的薄いところもあるが、ツル植物が行く手を塞ぐ 初神山頂上まで100mをきる

《大滝山へ》 

 大滝橋の袂から急俊な尾根を下って河原へと降りる。この直ぐ下流は滝となって落ちており、上流を想像してみるに不安感は拭えない。とりあえずは行けるところまで行って、ダメなら尾根ルートへ逃げることで上流へと向かうことにする。 落葉が沢を埋め尽くし、積雪時に沢の中を歩くようで、足の置き場に苦労させられる。すぐに大滝山との分岐、どっちもどっちであるが、地形図を見る限りでは大滝山へと向かう沢に分がありそうだ。尾根に逃げるにしてもKo玉氏とsakag氏が取ったルートでもあり、その点を考えても気分的には余裕がある。そんなことで、当初の予定を変更、まずは大滝山から狙うことにする。左股へ入ってからも落葉への苦労が続くが、間もなくF1が現れる。4〜5m程度の緩い滝で左岸側から難なく登る。その後もF3、F4と現れるが、どれも同様で、思いの外順調な沢詰めとなる。

 コンタ420m付近で沢形が消えて、距離的には200mほど、後は笹薮漕ぎで頂上を目指すことにする。ふと見れば、沢形はさらに細々と続いていたが、この辺りが良いところ。だが、200mとは言え、標高差は120m程あり、意外に長い藪漕ぎとなる。途中、濃い笹薮の中にヒグマの糞が見られ驚かされる。林道や見通しの利く場所であればまだしも、こんな濃い笹薮の中ともなれば、さすがにショッキングだった。もっとも、付近には林道も作業道も何もないので、彼らが用を足す場所としてはこんなところ位しかないのかもしれない。

 稜線には上がったが、根曲がり竹はかなり太く、一歩前進するにもやっとといった感じである。そこを抜けると大滝山の頂上に到着、GPSにて位置を確認する。とは言え、やはり標石はこの目で確認したい。しばらく探したが、なかなか見つからない。さすがにダメかと思ったがIkkoさんのスパイク長靴がカリッと標石を捉えた。ここのところ発見の精度が増してきたIkkoさん、この日も地面に隠れた三等三角点「大滝山」を探し当てた。眺望など何もないが、そもそもが考えてもいなかった頂上だっただけに満足度はかなり高い。さて、次は二匹目のどじょうである。  

《初神山へ》

初神山からは海を見ながら下る  遠くの海上には渡島・小島が見える

 のっけからの強烈な藪漕ぎ、雨の中ここを通過したKo玉氏とsakag氏には脱帽である。初神山を落としたい、我々も然りだが、人間の目的達成への野望というのはもの凄いエネルギーとなる。背丈以上の根曲がり竹の束を泳ぐように横断、一見楽になったと一息付けばツル植物の伏兵と、休まる暇がない。剪定鋏で丁寧にツルを処理しつつカメの歩のように初神山への距離を縮めて行く。途中、アップダウンは二ヶ所ほど。最初のコブ付近では初めて大滝山の山容を目にして感動ものだった。如何せん、この山に関しては山を見るよりも登頂の方が先になってしまった。 二つ目のコブは剪定鋏を頼りに辛うじて通過、いよいよ未だ見ぬ初神山である。頂上部が目前となってモチベーションはぐんと上がる。だが、そう甘くは頂上を踏ませてはくれないのが藪山の藪山たるところ。最後は強烈な根曲がりで、正に林立状態で行く手を阻んできた。GPSを拡大、この山には三角点がないので、標高点のど真ん中を通過した直ぐ先の開けた場所で初神山頂上到着とする。二匹目のどしょうを無事獲得、あとは国道へと下るのみである。

 背丈を越す藪の中、下降尾根を探るが、ついついGPSに頼り過ぎて失敗してしまった。木を見て森を見ずとはこのことで、しっかりGPSを見ているようでも徐々に谷地形へと引っ張られる。谷へと下るのであればそれもOKであるが、全く知らない谷へと下るのは無謀としか言いようがない。沢下降にはそれなりの準備が必要であり、計画そのものが降って湧いたもので、少々心もとない。とにかく尾根を藪漕ぎで下るよりほかに選択肢はない。先を行く私の勇み足を見事に修正したのがIkkoさんで、一度尾根上へと引き返す。こうなれば地形も見えてくるというもの。その後は順調に下降尾根上へと乗ることに成功、Ikko車の待つ国道へとまっしぐらに籔尾根を下降する。

初神山頂上からの南望  (Ikkoさん提供)

 下山して思うに、急遽決まった山行はやはり準備不足だった。特にルートファインディングは、山行前の地形図を見てのシュミレーションがなかった。ルート全体を概念として捉えることを怠っていたということだろう。とは言え、思いもよらぬ二山ゲットは大きい。今回の二山に登ったことによって、さらにこの山域の他の山へも足を伸ばしてみたくなったのは事実で、山域を広げたという意味では大きな収穫となった。(2014.24)

参考コースタイム】 国道 P 7:45  大滝山頂上 9:30、〃 発 9:45 → 初神頂上 11:05、〃 発 11:15 → 国道 P 12:50   (登山時間 大滝山まで1時間45分、大滝山〜初神山 1時間20分、初神山からの下り 1時間35分)

メンバー】Ikkoさん、saijyo

<最初へ戻る