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       鳩ノ巣山(621.6m)

  
    

     

夕張の住宅街から望む鳩ノ巣山

      /25000地形図夕 張

市役所の駐車場に車を停める
画面中央の除雪のない道路から入山
北西風の吹く細い尾根から頂上部へと向かうこの辺りから視界が開ける

私も今までに数多くの山を登ってきたが、市役所の駐車場でスキーを付けて山に登ったのはこの夕張・鳩ノ巣山が初めてである。駐車場の道路1本隔てた尾根末端がこの山への入山口となる。鳩ノ巣山は夕張の街の西側に位置する頂上がのっぺりと平らな山で、すぐ北側の道道38号・丁未風致公園よりも標高が低く、およそ山としての魅力に乏しいというのが正直なところだ。南空知の平野から見ても冷水山や三角山、幌向山などが目立っていて、この山を探し出すのはなかなか容易ではない。八谷和彦氏の「ガイドブックにない北海道の山50」で紹介されて以来この山への登山者は増えたようで、Web上でもしばしば見かけるようになった。

頂上雪原から冷水山を望む
頂上部は東西に長く広い雪原となっている

取付き地点は工事中で立入り禁止の看板が立っている。崖斜面の補強工事を行っているようだ。少しだけ立入り禁止のエリアへ立入らせてもらうが休工中でもあり、このくらいは勘弁してほしいところだ。すぐに上へと向かう道路跡があり、そこから上部へと抜ける。家が一軒建っていて、つい現在の夕張のイメージから廃屋を連想してしまったが、廃屋ではないようだ。家のすぐ前を通過させてもらい、左側の尾根上へと急斜面を登る。用心のためにいつも出発地点でGPSにその位置を登録しているが、それを車の屋根に置いてきてしまったことに気付く。市役所の駐車場だから良いか…とも思ったが、気にしながらの山行もあずましいものではない。結局は一度下ることにする。それでも時間的な余裕を持てるのがこの山のよいところである。

仕切り直しで尾根上の斜面をぐんぐん登ると、市役所の建物が眼下に小さくなって行く。気持の良い針葉樹林帯を左に見ながら大きく回り込むとテレビの簡易中継施設があり、これから向かう頂上台地がちらりと見える。549mポコへの登りは樹林帯だが程よい間隔なので、下降では樹林を交わしながらの楽しい滑りが期待できそうだ。549mポコからの尾根上は風の通り道となっていて、北西風が吹き付けている。視界が大きく開けて由仁や長沼方面の真っ白な平野が広がり、どこが頂上だか判らない雨霧山や鬼首山も見えるが、はっきりどれがどれと特定するのは難しい。標高のわりには高度感が感じられ、山を登っていることを一番実感できるところだ。

頂上台地への斜面をひと登り、山の頂上とはとても思えない広く東西に長い雪原となる。左側から入ってきたスノーシューの足跡が我々のルートと合流する。さすがにWeb上にも登場するようになった山だと感じたが、行き交った彼らに言わせれば、この山で人に出会ったのは初めてとのこと。もっともこの手の山で人に会うということ自体が良く登られるようになった証拠でもある。何度も登っているようなので地元の人間かもしれない。腕にはGPSが付けられていたので、彼らの足跡をたどればこの広い雪原の中から頂上は特定できるだろう。

そのまま進んで行くと、途中からスノーシューの跡が2手に分かれていた。ここが頂上かと私もGPSのスイッチを入れてみる。正直、こんな山ではGPSの有難味を大いに感じる。見ると数十m先が目的地点、そのまま頂上となるが、この機械がなければこの場所の特定は難しいかもしれない。仮に50mくらいずれていたとしても全く気付かずに頂上とするかもしれないが、地形図のみの時代であれば地形のかなり微妙な変化まで読み取れる感性が磨かれていたともいえる。どちらが良いのかは判らないが、少なくてもこの機械が何かの都合で機能を果さなかった場合を考え、常に周りの地形に対する観察力を磨いておく心構えだけは絶対に必要である。そう考えれば、下山後におさらいとして自分のルートを確かめる使用法が理想的なのだが、やはり現地で確認してみたくなるのも人情。難しいところだ。

鳩ノ巣山頂上。見た目では特定が難しい 下降して直ぐに旭地区の町並みが見えてくる

下山は小さな上り返しもできれば避けたいところだ。途中から旭町側へと下降することに決める。 ポンポロカベツ川沿いの細長い町並みだが、夕張の全盛期にはこんな小さな谷間にも住宅地が伸びていったのだろう。549mポコへの登り返しを避けて、斜めに除々に下り始める。下降を始めて途中で二三度小休止、ほとんど滑りらしい滑りもないうちに眼下にトタン屋根が現われた。とても山の下降とは思えないほどの短さだ。傾斜も程よく何度かターンを繰り返すうちにみるみる家並みが大きくなる。斜面には雪崩止めもいたるところに取り付けられていて、完全に住宅街のエリアに入ったようだ。屋根の雪下ろしをやっている人もすぐ間近に見える。最後は他人の敷地内への無断立入りを避け、軒と軒の間の除雪による雪山をつないで道路へと無事着地、この日の山行を終了する。市役所駐車場までの帰り道、まるで昭和40年代頃にでもタイムスリップしたかのような町並みが続いていた。(2011.2.13)

【鳩ノ巣山名】

昭和50年発行の「北海道地名誌」(編著者;NHK北海道本部)には「古い5万図にはツルツルオマップ山となっている。アイヌ語のツル・ウドル・オマ・プで山の間にあるものの意」と載っていたが鳩ノ巣の由来は載っていない。新しい地形図では点名がそのまま山名として載っているのだが、この点名を付けた理由が判らない。ただし、私の調べたところでは道内で鳩の付く地名としては岩見沢市の鳩が丘と栗山町の字名・鳩山が挙げられ、いずれもこの地区に集中しているということである。前首相・鳩山由紀夫衆議院議員の一族が経営する栗山町の鳩山農場は明治の頃に創設されており、ひょっとしたらこの辺との関連も考えられる。いづれにせよ調べがつかず、結論はこれから先の課題である。

【参考コースタイム】夕張市役所・駐車場 9:40 鳩ノ巣山山頂上 11:05、〃発 11:40 → 夕張市役所・駐車場 12:20 (登り 1時間25分、下り 35分 )

 【メンバーsaijyo、チロロ2

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