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      八内岳(943.6m)

林道から望む八内岳

 

/25000地形図  「銀山」

辰五郎沢の林道はダム手前までである
八内岳頂上は樹木もなく見晴らしが良い
頂上からみる余市・天狗岳(望遠使用)
頂上から見る岩内市街と雷電海岸(望遠使用)
頂上の肩から見る八内岳
八内岳の最短ルートである尾根を登る

八内岳は何度登っても良い山である。今回は倶知安のSugawaraさんのお誘いを受けての計画である。以前に何度か山の情報と写真を送って頂き、そのようすから勝手にSugawaraさんの人物像をイメージしていた。送られてきた写真に写っていた髭をはやした人物を想像しながら待っていると、意外にがっしりとした感じの山男風のSugawaraさんが現れ驚かされる。そういえば私も、以前に函館のsakag氏(一人歩きの北海道100名山管理人)を山に初めてお誘いした時、sakag氏も私のHPに載っていた髭をはやした私の山仲間を私とイメージしていたとのことである。この時の氏の気持が伝わり思わず笑ってしまう。写真の人物はその後現れた彼の友人であるKondouさんであった。晴天の予報であり、過去3回の八内岳山行で味わうことが出来なかった快適な春山への期待が大いに膨らむ。

前回秋に来た時と同じ辰五郎沢からのルートである。辰五郎沢の名の由来は、辰五郎という人物が、この沢でヒグマに襲われたとの言い伝えからとのこと。つい、猟師か何かこの沢付近に住み着いていた主を連想させるが、実際は「辰五郎さんがクマに襲われた沢」が時間と共に「辰五郎沢」となっていったようである。現在では国土地理院の地形図やダムの名称としても登場するのであるから面白い。札幌周辺にも“源八”とか“常次”などという名の沢があるが、意外な経緯からの命名なのかもしれない。アイヌ語地名が多い北海道に在って、こういった“出来事”が地名となった経緯も興味のあるところである。

辰五郎沢沿いの林道はダム手前まで除雪されている。途中、右岸(西岸)から左岸へ橋が架かっている。目指す木無山へ登るためには、ここで橋を渡ってしまうと、またどこかで川を渡らなければならなくなる。水量は予想以上に多く、木無山の取り付までは距離ある。このまま右岸を進むことも考えるが、何度もの枝沢の渡渉や急傾斜の川岸のトラバースが予測され、つい躊躇される。いよいよの場合はスキーをあきらめ、ツボで斜面を上がる方法も考えられるが、こんな天気の良い日には長いツボ足登高よりもスキーで快適に下りたいものである。ましてや倶知安メンバーはテレマークスキーであり、尚更のことであろう。とりあえずは林道をそのまま詰めて様子を伺うことにする。

進むに連れ徐々に積雪量が増え、林道自体が斜面と同化した様相となる。所々ではスノーブリッヂも見られるが、沢身まで数十メートルは下らなければならず、これも億劫な話である。流れが近づくことを期待してさらに林道を進んで行くが、結局は終点まで進むことになってしまう。八内岳頂上への最短ルートである、2年前に遡行した沢の右側の尾根筋を詰めることにする。

尾根上の雪質は暖気のためにかなり緩んだ状態であり、少しでも傾斜が増すと横滑りし、トラバース気味の登高には辛いものがある。この湿った雪質では意外にシールが効き、多少の傾斜があっても直登気味にルートを取る方がはるかに楽である。ただし、シールなしのウロコ板で登るSugawaraさんにとってはけっこう辛かったようで“後ずさり”の連続だったそうである。以前にシュリンゲシールで美瑛・丸山を登ったが、前後のシュリンゲが緩んでくると“遊び”が大きくなり、苦肉の策として階段上がりでこの場をクリアしている。同じ山を登っていても何倍も疲れた記憶は新しく、今更ながらにシールという道具の機能性のすばらしさを実感する。

八内岳頂上にて(背景は余市岳) 木無山は次回の楽しみとする

取付く前にルートを確認してはいたが、登って行く斜面の右側には全層が地滑り状態でずれたと思われる雪面がある。頂上直下では藪が剥き出しとなった尾根上を避け、ついこの斜面の上部に入るが、雪面の水平方向の圧が疎となっていて、見ないクレパスが点在している。不覚にも深さ3〜4mのクレパスに嵌り込んでしまう。ストックを使って何とか難を逃れるが、危険度の違いこそあれ全層がずれているような斜面ではどこも同じような状態であり、安易に立ち入らない方が無難のようだ。

八内岳からの眺望は予測通り素晴らしいものがある。余市岳〜喜茂別岳の山並みライン、岩内平野とニセコ連山や雷電海岸、小樽付近の海岸線や積丹へ続く山並み等々、正に後志地方の鳥瞰図がここにはある。特に印象的だったのが昨年登った余市・天狗岳である。稲倉石山の奥に聳える山容は“天狗”の名を冠するに相応しい険しさを覗かせる。八内岳頂上には当日のものと思われる足跡が残されており、岩内からのアプローチと思われるが、おそらくは発足川沿いの林道終点からのものであろう。

予想以上に時間を費やしたため木無山は次回とし、東側へ続く稜線を下ることにする。859m標高点の右側を巻き、徐々に標高を下げる。下るほどに傾斜が増し、転がる雪片も雪だるま状の大きなものとなる。これ以上の下降は危険と判断、沢の上部を横断して向かい側の斜面へ移る。上部で雪崩れている沢の横断は決して気持の良いものではないが、信号のない道路を横断するようなものであり、転がる雪塊と衝突する危険性は交通事故に遭遇する確率であろう。斜面のトラバースは延々と続き、最後に飛び出したところは林道終点であった。(2005.4.24)

 

【参考コースタイム】辰五郎沢(除雪終点) 9:15 → 林道終点 10:30 → 八内岳頂上 13:35、〃発 14:05 →  林道終点 14:35 → 辰五郎沢(除雪終点) 15:45 [途中休憩時間を含む]

メンバーSugawaraさん、Kondou夫妻、saijyo

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