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    函岳(1129.3m)熊野岳(954.4m)

オフンタルマナイ川沿いの町道から望む函岳

/25000地形図 「函 岳」「屋根棟山」

本庫鉱山跡に建つ鉱災害防止施設の小屋

背後に映る坊主山の特徴的な姿
熊野岳頂上にて 熊野岳の三等三角点

オフンタルマナイ川沿いの町道を進むが、積雪のため途中に車を置く

急斜面ではあるが、一汗かくと尾根上である
函岳への登りの途中、背後には熊野岳が見える

  最北(北海道本島)の1000m峰である函岳はそのイメージとは異なり、とにかく平らな山で、どこから見ても特徴のない、いわば“顔”のない山である。以前は一度でも登らなければ、どこが函岳なのか指呼することすら難しい山であった。平成6年に我々にとっては決して歓迎できない建造物(道北レーダー雨雪量計システム)が頂上に完成し、皮肉なことにこの建造物によって頂上が容易に判るようになった。頂上への立派な自動車道が開通し、山小屋も作られ、だれもが簡単にその眺望をほしいままにすることができるようになったが、登山の対象としては少々寂しい状況となる。このシステムは災害防止のためにはなくてはならないとのことで、残念だが仕方がないところである。この山に現在、敢えて“登山”ということであれば、やはり第一選択としてはスキー登山ということになるだろう。

 11年前に「北海道の山と谷」(北海道撮影社刊)を見て、一度この山を目指したことがある。咲来からの積雪期のルートで、出足はツアーらしく樹林帯の急斜面を登ったが、途中からは札幌近郊・朝里岳の通称“飛行場”のような目標物のない真平な雪原となった。驚いたことに雪に埋まった道路標識が表れ、スノーモビルの連中がいたずらして持ってきたのかと思っていると、さらに次々と標識が現れ全く酷いものだとあきれながら、そのまま頂上を目指した記憶がある。頂上が近づくと、今度はドームらしきものが忽然と現れ、一瞬どこかの宗教団体の隠れた教会かと思った。頂上に到着して、レーダーが設置され、そのために道路が作られていたことを理解する。現在のようにインターネットがあれば新しい情報を簡単に入手できるのであろうが、当時としては何年も前に書かれた「北海道の山と谷」が函岳情報のすべてであった。

 今回はこの山を西南北の各方向から既に登頂しているKo玉氏から、「東側からこの山を登るが一緒にどうだろう」という誘いがあり、であればとこの計画に乗ってみることにする。歌登(現枝差町)のオフンタルマナイ川沿いの町道から本庫鉱山跡を通って熊野岳から函岳へ至るルートである。なお、この鉱山は金銀銅を産出していたが、1967年に閉鉱とのこと。鉱山跡への道路は雪の解け方から見て、冬場も除雪されているようである。除雪状況は枝差町・歌登総合支所建設水道課(01636-8-2111)へ問い合わせれば教えてくれるとのことである。この日は鉱山跡の約2.5km手前まで車を乗り入れることができる。ここからはスキーを履いてのスタートとなるが、路上の積雪は所々で完全に解けているため、脇の少ない積雪を繋いで、何とか50分で鉱山跡に到着する。鉱山跡には鉱災害防止施設の小屋が一軒立っている。

 鉱山跡からは林道となり、かなり不明瞭となる。熊野岳からの適当な出尾根に取付き、函岳寄りのコルへ向う尾根に沢の上流部から乗り移る。急斜面ではあるが、一汗かくと尾根上である。背後に映る坊主山の特徴的な姿と谷からの心地よい風が、疲れた体を癒してくれる。主尾根まではさらに一登りであるが、我々は比較的コンタの緩い800m付近を840mコル目指し、途中からさらにトラバース気味に進路をとる。同じ方向へのトラバースは意外に辛いもので、コルまでは堪えきれずに途中で主尾根へ出てしまうが、コルまでの標高差は僅かであった。トラバース中、レーダードームのある函岳頂上がやっと近づきつつあることが実感できる。車留め付近からも見えていた頂上ではあるが、直線距離にして7km以上もの距離があれば、中々近づいてはこないものである。

函岳頂上に建つ「道北レーダー雨雪量計システム」

頂上には立派な標識が立っている

 かなり広々としたコル付近からは函岳がゆったりと大きく広がって見える。車留めからも見えていた、頂上のように見える岩塊を目指し、マイペースで登り詰めるだけである。目標物の乏しい広大な斜面では頂上部がやはりなかなか近づいてはこない。視界の利く広い斜面は遠く感じるものであり、追い討ちを掛けるような5月の暖かさはかなりの暑さに感じられる。振り返ると、帰路立寄る予定の熊野岳が大きく平らな姿を見せている。岩塊手前のハイマツが起き上がった地点を過ぎるとドームが姿を現す。直線距離で500m、久々の函岳頂上がやっと近づいてくる。最後は数mの岩を巻き、立派な頂上標識の立つ頂上に到着である。Ko玉氏がパンケ山、珠文岳、鬼刺山…など、名寄転勤以降に落とした山々の山座同定を始めるが、私にとっては滅多に来ることのない馴染みの薄い山域であり、彼には悪いがどれも同じに見えてくる。そうこうしているうちに、スノーモビルの爆音が近づき、何台ものモビルが到着、頂上からの眺望に皆歓声を上げている。もちろん彼らもKo玉氏の挙げた山々はただの山並みに過ぎず、山名やそれぞれの山への想い入れなど解るはずもない。聞けばスーパー広域林道から上がってきたとのこと。

 彼らと別れ、函岳頂上を後にする。目指すは熊野岳である。頂上からコルへの遠かった広大な斜面もほんの一滑りである。コルからの登りはやはり距離があるはずであるが、こちらは樹林帯の中であり、あまり距離を感じないから不思議である。こまめに目標物が入替わる樹林帯の中では、何もない中で遠い一点を目指すよりは遥かに楽に感じられるのかもしれない。雪が解けて起き上がった藪の中に熊野岳三等三角点を発見する。かなり苔生しており、長い年月の間、ずっと人恋しさを感じていたようにも見えてくる。熊野岳頂上に滞在している間、何台かのスノーモビルが我々のすぐ横を通過して行く。

下りは本庫鉱山跡を目指し、一直線である。下降尾根上の樹林や藪はかなり混んでいて、衝突しないよう必死であるが、この日のザラメはスキーシーズン幕切れの滑りに最高の贈り物を提供してくれた。(2006.5.14)

【参考コースタイム】オフンタルマナイ川P 7:35 → 本庫鉱山跡 8:25 → 840mコル 10:50 → 函岳頂上 12:10、〃発 12:55 → 840mコル 13:05 → 熊野岳頂上 13:55、〃発 14:25 → 本庫鉱山跡 15:00 → オフンタルマナイ川P 15:35 

メンバーKo玉氏、saijyo、チロロ3(旧姓naga)

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