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   剣山(498m)・・・ステゴザウルスの背を思わせる山

果樹園付近から望む八剣山

    1/25000地形図「定山渓」

中央口には広い駐車スペースがある
終始先頭を行くサブロー

八剣山は子供の頃から何度も登った山の一つだった。地形図では観音岩山となっているが、この山名の出所は判らない。どちらかといえば八剣山という名の方がよく似合っている気がする。恐竜の背中に例えられることが多い山容だが、確かに頂上部の岩稜はステゴザウルスの背中の骨板を思わせ、定山渓への車窓からは一際目立つ存在であった。この山との最初の出会いは小学生の頃で、当時は札幌駅0番ホームから定山渓鉄道に乗り、旅行にでも出かけるような気分でこの山を目指した。旧滝ノ沢駅で降りて、豊平川を渡って登山道へと入ったが、途中、柱状節理の岩壁を頭上に見ながら進んだ記憶がある。今思えば当時は中央口などは無く、今の南コースへと豊平川右岸沿いに切通しの小道が続いていたように思う。とにかく、小学生の私としてはこの山の高度感は中々のものであった。この時は北コースから下ったので、南コースよりは恐怖感を抱くことなく下山している。

今回は愛犬のサブローを連れての挑戦である。平成11年に開通した八剣山トンネルのためか、我が家からは車で20分ほどの至近距離となってしまった。一度も国道に出ることもなく、うっかりしていると途中で寄ろうと思っていたコンビニすらなくなってしまいそうだ。不便さでは陸の孤島のようだった麓の砥山地区も、現在では札幌の市街地と何ら変ることないアクセスである。話は逸れるが、炊事遠足の定番となっていた十五島公園も同様で、同じく定山渓鉄道で向う郊外の公園であったが、札幌への一極集中のせいか、今や完全に市街地に埋没してしまった格好だ。山に関わる多くの地域で地盤沈下が進む道内にあっては、逆の意味での時代の変遷を感じさせられる。

中央口は登山者のための駐車場や休憩施設までもが整備されている。登山ブームということもあり、秋遅くのこんな時期であっても多くの登山者の車が停まっていた。登山口は「八剣山果樹園」という農園となっており、10年以上も前に私の所属していた山岳会の夏山納めで使わせてもらったことがある。社会状況の変化に伴い登山者も増加したのか、その時には養鶏場として使われていた鶏舎も今ではバーベキューハウス「八剣山の山小屋」となっている。山の情報をWeb上で探していたところ「ふしぎ山」というページがあり、ここの果樹園で飼われている名犬シロの話が載っていた。飼い主の知らないところで命名され、ネット上でも有名になったシロ、実は太郎が本名だったらしい。俺が岩稜に取り付くと、シロもついてくる。おい、無理するなよ! と声をかけるが、シロはまるでカモシカのごとく軽やかに岩とたわむれながら登ってゆくこのシロこと太郎は、頂上でもらうご褒美のおやつがお目当てだったとのこと。飼い主の知らないところで八剣山の案内役を買って出ていたようで、「ふしぎ山」のこのページには何度読んでも笑わされる。

ポメラニアンのサブロー、登山犬になれるだろうか?
八剣山頂上から見る百松沢山(左)と砥石山(右) ポメラニアンのサブロー、登山犬になれるだろうか?
中央口は分岐までは刈り分けといった感じ

我が家のサブローは、どちらかと言えば臆病な過保護タイプの室内犬である。登れるかどうかは判らず、最悪はザックに突っ込んで降りてくるつもりで連れて行く。登山者の中には犬嫌いもいるかもしれないので、登山中は繋いで、すれ違いや追越しには抱えて速やかに通過する。そうまでして犬を山に連れて行く意味はあるのだろうかとの疑問もあるかもしれないが、単独登山よりは語れる相手がいる方が遥かに楽しいに決まっている。返答はなくても、何たって喜びを全身で表現し、それを分かち合えるところが良い。適度な登りは犬も楽しいのか、先頭きって登って行く。途中の痩せ尾根は迂回ルートが出来たのか、以前ほどの高度感を感じなくなった。一ヶ所、補助ロープはあるがついバランスを崩してしまいそうなところがある。犬はあまり高度感というものを感じないのか、こんなところも至って平気な様子である。サブローは終始私をリード、何事もなく八剣山の頂上に到着した。すぐに水分補給をと水を与えたが、見向きもせずに犬のおやつをむさぼっていた。

頂上は晩秋から初冬への変わり目にも関わらず、多くの登山者で賑わっていた。「おいお前、足が綺麗だぞ、ずっと抱っこされて上がってきたんだろう」犬好きの登山者から声をかけられる。登山者から見ればいかにも頼りなさそうなサブローだが、名犬シロの境地とまでは行かないまでも、飼い主の心配など全く無用といった感じの登山犬への仲間入りであった。さて、次はどこにしようか?もう少しレベルアップして、せめて水が飲みたくなるほどの山へチャレンジしたいものである。(2009.11.8)  

※「ふしぎ山」管理人・松本氏より文章転載の許可を頂いております。ふしぎ山のURLはこちらです。

【参考コースタイム】

剣山中央口P 10:00 八剣山頂上10:55 、〃発 11:05 剣山中央口P 11:35    (登り55分、下り30分)

メンバーsaijyo、サブロー

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