<戻る

    群別岳(1376.3m)

増毛・天狗岳から見た群別岳 (Ikkoさん提供)

1/25000地形図 「浜 益」「雄 冬」

今朝のものと思われる大きなヒグマの足跡が…
何とか橋の手前まで車を乗り入れる
熊の平を過ぎると目指す群別岳が姿を現す
先頭を行く長靴のIkkoさん、斜面のトラバースも全然OK
先頭を行く長靴のIkkoさん、斜面のトラバースも全然OK

 道内五大鋭峰の一角と言われている群別岳、増毛山地の中でも人気の高い山である。過去には、南暑寒岳〜暑寒別岳間の縦走路から登山道が伸びていたが、今はそんなことすら忘れ去られている。私が高校生だった40年ほど前に廃道に近いその登山道の分岐を見たことがある。暑寒別岳への従走路でさえ未だ荒削りの登山道で、ここからさらに遠い郡別岳まで向かう登山者などいるのだろうかと思った記憶がある。ヒグマの出没が原因で廃道となったと言われているが、私はそうは思わない。それが原因であれば、どの山の登山道も廃道となってしまうだろう。やはり、距離が長すぎることと、登山道の維持がままならなかったのだと思う。

 私がその群別岳に登ることになったのはそれから10年の後で、群別川本流ルートから入っている。山岳会に初めて入会した翌年のことで、本格的な沢の遡行は始めてだった。「北海道の山と谷」(北海道撮影社刊)1つで紹介されていたが、この時は正直長かったという印象がある。群別岳を踏むチャンスがあまり無かった時代でもあり、私のようなピークに拘りのあるメンバーばかりが揃ったパーティだった。記録を取っていなかったため、その正確な時間は判らないが、頂上到着は15時近かったように記憶している。終いは日没との競争となり、19時には日没、ヘッドランプでの沢歩きは通常の3倍、どっぷりと日が暮れた22時に何とか林道に戻って来た。もっとも、当時は現在のように林道が奥まで伸びていなかったので、距離的にもかなり長い沢歩きではあった。現在はネットの時代となり、雪渓が残る今の時期は林道から日帰りでこのピークを踏むことが出来ることはどのサイトでも紹介している。私も今回はこのルートから登ってみたが、確かに群別岳がより身近になったと感じた。言わば群別岳の美味しいところ取りルートである。

Tさんは頂上からの滑降を楽しみに、終始スキーでの登高 岩峰を巻いて、いよいよ本峰へ (山遊人さん提供)
コルから望む本峰、あとはここを登るだけ 頂上到着のIkkoさん。Ikkoスタイルが格好良い?

 3年前に奥徳富岳へ登った時にも同じルートを使っているので、大体の様子は判っていた。だが、林道の除雪状況は年によって違うらしい。何度かこの時期に入っている山遊人さんの話では、大体は3kmほど入った地点の橋までは入れるとのこと。確かに3年前の時にはもう少し奥まで車を乗り入れたように記憶していたが、その地点は橋からわずかに進んだところだった。林道は長いが、スキーを使えば下りは速い。また、この時期ではスノーシューやワカンなど要らないほど雪面は硬く歩きやすい。とりあえず、群別岳への取り付きまではスキーを使う。もちろん、林道の復路用である。Ikkoさんはスキーをやらないので、下りも長靴である。林道終点付近では前泊のテントが張られたままとなっていたが、後で聞いたところではガイド登山とのこと。やはりこの時期は誰にとっても身近な山のようで、彼らはスノーシューでこの長い林道を歩いてきたようだ。

 林道終点からも踏跡が小沢へと続き、小沢を渡って尾根上へと登って行く。609m標高点付近(熊の平)までは広く緩い尾根上を進み、そこから群別岳の南尾根取り付きまでは緩いアップダウンで、距離の割には意外と簡単に到着する。沢の場合にはもう少し苦労した記憶がある。山遊人さんによれば、この取り付きの右側が群別川の大滝があるそうで、記憶をたどれば左岸側の階段状の岩壁を高巻いた記憶がある。ただし、これは30年も前の記憶であり、怪しいと言われればかなり怪しい。左側の沢(通称;増田の沢)にも本流以上の大滝が顔を出し、大きな音を立てている。山遊人さんによれば、こちらからのルートもあるそうだが、頂上南側の岩峰のトラバースが嫌らしいとのことで、私としては苦労は出来るだけしたくはないので、尾根筋を忠実にたどる安全なルートを選ぶ。私と山遊人さんは一番大きな樹木の傍にスキーをデポしてツボにてスタートする。Tさんはそのままスキーにて、Ikkoさんは最初から最後まで長靴のままである。

群別岳・南尾根の長い登りを開始する (Ikkoさん提供)
群別岳・南尾根の登りを開始する (Ikkoさん提供)

  最初の大斜面はスキーを置いてきたことを後悔するほどの傾斜と長さである。コンタ800m850mの平坦地まで登り詰めると前方には壁のような斜面が現れる。ただし、これは見かけのみで、急ではあるがどこからでも登ることができる。一旦平坦となり、先頭を行くIkkoさんは1079mポコを右側から巻くが、これがこの日の一番怖いトラバースとなる。斜面でこけようものなら、どこまで落ちて行くものやら見当も付かない。さすがに緊張する。ここを長靴で平気で歩くのだからIkkoさんには確立したIkkoスタイルというものがあるように思う。長靴ではキックステップなど出来ないと考えるのが普通だが、彼の場合は上から強く踏み下ろすため、それなりに安定したステップとなっている。我々が同じことをやったとしても、直ぐに疲れてしまうだろうが、彼はいつもそんな歩き方をしているので、そんな筋肉の付き方となっているのだろう。この日はそのIkkoスタイルが終始リード、スキー部隊がそれに追従する格好となっている。

頂上ビールと浜益岳、雄冬山、増毛・天狗岳

 ふと見るとTakataさんは未だスキーを履いたままで、真正面から1079mポコを通過してきた。彼は以前に東京の有名どころ「Tの風」に所属しており、Web上で検索を掛けると、その会の山スキーによる群別岳山行記が上位に出て来る。彼としては頂上からの滑降をしなければ納まりが付かないのだろう1079mポコから岩峰までは広く長い雪面となっていて、スキーには格好の美味しい斜面となっている。岩峰は幌天狗からの合流地点。右側はスプーン状で難なく巻くことができるが、幌天狗からの左側はそれなりの嫌らしいトラバースとなるらしい。我々の通過する右側も、それなりには嫌らしいが、既に多くのツボ足によるステップが付いているのと、先ほどのIkkoさんが取ったトラバースを考えれば、どうといったことではない。何度も同じ時期に登っている山遊人さんはここを通過した時点で皆を待つことに決めたようだ。

 いよいよ最後の登りとなる。さぞや急傾斜と想像していたが、意外にあっさりとしたものだった。この時期には多くの登山者が登っているためか、頂上へは数多くのステップが刻まれており、まるで登山道と言える状態になっている。30年前の群別川本流遡行の折には根曲がり竹につかまりつつ、ずるずる滑りながらたどり着いた頂上であったが、この残雪期であればあっさりとしたものだった。濃いガスの中で、頂上展望など全く無かった30年前のリベンジも適い、この日はぐるり360°の大展望。長く山と付き合っていればこんな良いことにも巡り会うということである。見える山は馴染のものばかり、これも30年前とは大きく違うところだ。山との付き合いとは人との付き合いでもあり、今回の面々も山があってこその繋がりである。山の良さとは突き詰めれば、そういうところにも落ち着く。頂上からは尾白利加岳、知来岳、黄金山、幌天狗、浜益岳、浜益御殿、雄冬山、増毛の天狗山、西暑寒岳、南暑寒岳、そして暑寒別岳等々、ぐるりとピークが確認出来、群別岳が名峰といわれる所以の一つでもある。

頂上からテレマークで華麗に下るTさん

  スキーを履いたままとうとう頂上まで上がって来たTakataさん、いよいよ滑降の開始となる。入念な準備の末、得意のテレマークで頂上基部へと一気の下降、実に華麗な滑りである。遠く山口県から長いスキーを携えてやって来たのはこの瞬間のためで、真の山ヤはそのための労は決して惜しまない。一方、Ikkoさんは長靴登頂となったが、下りも軽快に下って行き、既にゴマ粒状態となっている。さらには岩峰にも登って何やら探索している様子。山ヤにもいろいろありといったところだ。元気印のIkkoさん、林道ではさすがに逆に後でのゴマ粒状態となるが、最後の橋に到着してスキーの雪を払っていると、直ぐ横には何とIkkoさん!! 油断していた私を尻目に、一足先に車に到着となってしまった。してやられた… (2014.4.27)

  群別岳山行 写真編へ

【道内五大鋭峰】

 道内五大鋭峰と言えば利尻山、芦別岳、そしてこの群別岳は必ず登場する。他の二峰はニペソツ山であったり、戸蔦別岳であったりと候補が幾つか登場し、曖昧だったように記憶している。これはあくまで私の記憶で、怪しいと言われればそうかもしれない。かなり以前になるが、ガイドブックにその記述を見た記憶がある。結論的に五大鋭峰はガイドブックによるもので、当時の岳人の広い意味での共通認識によるものではないような気がする。ネットのない時代には数少ないガイドブックが大きな影響力を持ち、重要な情報源であった。I氏が最初に言った“上川三山”(突角山・摺鉢山・天幕山)も同じで、的を得た命名は現在であればネットに乗って広く一人歩きする状況と全く同じ現象であろう。私としては、強いて選ぶなら、鉞山(神恵内村)が入らない五大鋭峰はあり得ないと思っている。

  【参考コースタイム】  林道除雪終点(橋) P 6:40 → 南尾根取付き 9:50 → 群別岳頂上 12:25、〃 発 12:50 → 南尾根取付き 13:30 → 林道除雪終点(橋) P 16:00 (登り5時間45分、下り3時間10分)

メンバー】山遊人さん、Ikkoさん、山口県のTさん、saijyo

<最初へ戻る