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       御料(621.9m)

閉鎖した上砂川岳国際スキー場と御料山(中央奥)

 1/25000地形図「文 珠」

谷を挟んで上砂川岳国際スキー場が見える
スキー場手前の除雪スペースに車を停める
伐採跡の尾根を登って行く

旧炭鉱の街・上砂川町はパンケウタシナイ川に沿って続く“うなぎの寝床”のような町である。その一番奥に位置する奥沢地区は三井砂川鉱業所が着業する以前には「御料地」もしくは「御料」と呼ばれていたらしい。当時の御料局(後の帝室林野局)が所管する土地を三井が借り受けてここに人の住む街を作ったとのこと。その名は御料山となって現在も地形図上には残っている。昭和46年、この山に「上砂川岳国際スキー場」がオープン、当初はけっこうな賑わいを見せていたようだ。昭和62年に三井砂川鉱が閉山、同町の人口は下降の一途を辿ることになる。その後のスキーブームの衰退も加わり利用者の減少が続き、今現在は閉鎖に至っている。なお、この山は上砂川岳とも呼ばれているようであるが、“御料山国際スキー場”では今一の感があり、第一どこにあるスキー場なのかが判らない。そんなこともあって、この名はスキー場のオープンに合わせて後で便宜的に付けた山名なのではないかと想像する。

スキー場の山としてそれなりに登山者を迎え入れていた御料山だが、6年前のスキー場の廃止で普通の薮山へと回帰してしまった感がある。廃止後も登山者が後を絶たなかったようだが、昨年秋に施設の撤去作業中に死亡事故が起こり、スキー場内への立入りは完全に禁止となってしまったようだ。この件については現地入りするまで全く知らなかったので、ゲレンデを利用して頂上を目指そうとパンケの湯(上砂川岳温泉)の駐車場に車を停める。立入り禁止の看板が数ヶ所に立てられているのを見て、本当に危険かどうかは別として、そこに敢えて入って行く気にはなれなかった。やはり守るべきは守るというのがモラルというもの。代替案はないものかと地形図上を探してみると、あった!スキー場西側の谷を挟んですぐ隣の尾根が利用できそうな感じである。スキー場とは正反対で右側から回り込むように頂上へと向かっている。とりあえずはスキー場とは関係ない尾根なので、ここからすっきりとした気分で頂上を目指すことに決める。ゲレンデの端っこでスキーを付けていると、通りがかりの車が止まって監視員と思える人から「山スキーかい?」との問い掛け。全くその通りなので「ハイ!」と応えると、そのまま行ってしまった。けっこう現地では神経質になっているようだが、一般のスキーヤーでなければゲレンデに立ち入ってもかまわないとの印象だった。

御料山頂上に到着したチロロ2さん 頂上から望む辺毛山

我々が目指す尾根には横から作業道が入っており、それを利用して尾根上へと抜ける。何処といって特徴のないルートだが、何といっても冬山独特の静寂さが良い。ラッセルも軽く林間に大きくカーブを切りながら徐々に標高を上げて行く。伐採跡の広い傾斜地も無雪期とは違って天然のゲレンデといった感じの真っ白な雪面となっている。やはりゲレンデよりもこちらの方が我々登山者にはしっくり来るものだ。350m付近のコンタはベロのように伸び出している。こんなケースでは岩峰が隠れていたり、妙に尾根が細くなっているケースが多いが、ここでは全く額面通りの平らな飛び出しで難なく通過することが出来た。次のコンタ370mのポコも右側に集材路が伸びていて、これを利用して簡単に巻くことができたが、のり面を上がるのに少々苦労。結局、この尾根上のコンタの伸び出しはどれも平易な地形、難なく御料山の西北側の肩へと飛び出す。肩から下は開けた素晴らしいスロープとなっていて、帰りの滑りが大いに期待できそうだ。スキー場の直ぐ隣りの尾根でもあり、地形的には似ているのだろう。

肩から頂上へは概ね緩やかな登りとなっているが、手入れの行き届いたスキーであれば細かな登り返しに多少苦労するかもしれない。ただし、私のスキーのように、全く手入れをしていなければシールを外しても何も問題はない。前方にはひと目で頂上と判る高みが姿を現す。頂上到着の瞬間を良いアングルでカメラに納めようとチロロ2さんを先に行かせる。もっともこの瞬間を感動的に捉えているのは私だけかもしれないが… スタートから約2時間、反対側が意外に落ち込んだ頂上に立つ。標識が数ヶ所に巻かれており、多くの登山者がこの山を目指して登ってきたことがうかがえる。樹林が邪魔してすっきりとした頂上展望は得られないが、木々の間からはかろうじて辺毛山の大きな姿を確認することができた。この山も決して大きな山とはいえないが、上砂川町の最高地点。周辺には大きな山が無いために存在感だけは感じる。

風を避けて、10mほど下がった地点で休憩。じっとしていると指先からじんわりと冷気が襲いかかり指先の感覚をなくしてしまう。例年になく寒い冬といわれている今年、気象の読みは複雑で単純に地球温暖化の否定はできないようだが、個人的には何となくほっとしている。この場でシールを外すのが何となく億劫になり、肩まではそのまま下ることにする。このくらい寒いとさすがにシールを付けたままでもよく滑るものだ。さて、肩からの大スロープ、シールを外していよいよツアーのフィナーレの開始である。(2012.1.22)

【参考コースタイム】パンケの湯・除雪スペース 8:55 御料頂上 11:05、〃発 11:25 パンケの湯・除雪スペース 12:05    (登り2時間10分、下り 40分)

メンバーsaijyo、チロロ2

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