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   元服山(477.3m) ・・・謎の山名由来

 

新道との合流地点付近から望む元服山 

   

1/25000地形図 仁 木  

黙々と笹薮を進むチロロ2さん

山梨線の小さなスペースに車を置く
元服山の頂上はこんなところ

頂上の空はこんな感じ

  元服といえば、男子を成人として認めることを目的とした日本古来からの儀式のことで、赤井川カルデラの一角にこの名が付いた山があるのが不思議だった。点名は「小登」で、標石が設置された大正3年の時点での山名は元服山ではなかったようだ。であれば、どの時点からこの名となったのだろう。札幌市中央図書館で赤井川村村史に山名にまつわる情報を探したが、さすがにこんなマイナーな山の山名由来など載ってはいなかった。諦めて、帰ろうかと思った時にちょっと気になる記述が目に飛び込んできた。「見返り坂」である。戦前は徴兵制があったので、毎年1月9日は村の若者が軍に入隊する日で、村を出て行く時には小学校3年生以上のほとんどの村民が彼らを見送ったらしい。村の外れから坂を登って行き、登りきったところで振り返る。村民は元気で勤めて来いと万歳で送り、彼らは村の繁栄を願っての万歳で応える。いつの頃からかこの坂が見返り坂と呼ばれるようになったらしい。向かった先は余市で、そこから師団のある旭川へと向かう。日中戦争が激しくなってからは今生の別れとなったケースが多かったらしい。国のために尽くして一人前の男、当時としては正に元服である。意味合いから考えて、そんな場面の近くに位置する山が元服山と呼ばれるようになっても何ら不思議はないような気がする。あくまで私の推測ではあるが・・・

 赤井川へ入る冷水峠のトンネル手前から旧道へ入り、峠付近からは元服山の山腹を巻くように続く山梨線へと入る。この作業道路は施錠されていないのが良く、道路も意外にしっかりとしていて助かる。ただし、車をUターンさせる場所がなかなか見つからないのが難点。頂上からの直線距離で約450mの地点に何とか車を置けそうなスペースが見つかった。ここからは単に斜面を登るだけである。取り付いた斜面は冬枯れしてわりと見通しは良いが、ハンノキが邪魔して容易に前へは進ませてくれない。けっこう登ったとGPSを眺めてみても、10分の1程度の進捗状況で、がっかりさせられる。笹が混じり始めるが、至って薄く、この程度であれば全く問題なしといった感じではある。

 さらに無心で登って行くうちにコルが近づく。目指すピークは左寄りなので、少しづつ左側へと針路を取る。そうこうしているうちに、進んでいる地点がコルよりも高くなっていることに気付く。その頃からか、笹の密度が増してくる感じとなる。やはり立派に籔山か・・・ 盛夏であれば決して登りたくはない山である。地形的にかなり平になり、単なる笹薮となる。頂上台地上へ出たようだ。GPSを持たないチロロ2さんに感覚的に一番高いと思われる地点へと進んでもらう。私もその地点が高いと思われた。だが、GPSを見てみると三角点からは100mほど離れている。平らな頂上での位置の特定は難しい。

二等三角点「小登」と金麦  枯れた笹の葉が邪魔して見つけづらかった

 GPSによって頂上到着とする。積雪期であれば積雪を理由に「三角点の確認は出来なかった」といえるが、無雪状態ともなればやはり標石の確認なしには登頂は語れない。砂漠に落とした針を探すような空しい時間が流れる。ふと見れば、ピンクテープが潅木に結ばれている。ひょっとしたら・・・ 辺りを冷静に見回すと ・・・あった! 落葉を乗せた三等三角点「小登」が地面に同化した状態で私を見ていた。この山に関して言えば、頂上部が平であるために三角点を確認することは地形的に難しい。現代の利器とも言えるGPSを手にしてさえ最後は人間の勘に頼るしかない。新装なった国土地理院のWebサイトをのぞいても、写真の爛の写真が空白となっているのがほとんどで、現況調査の難しさを感じさせる。例によって標石に金麦を置いてとっておきの一枚。金麦さえ置かなければ国土地理院へ寄贈しても良いほどの出来栄えである。だが、これは私の“現況調査”、私自身のこだわりである。

 下山は山梨線を目指して真っ直ぐに進む。籔の間から見える赤井川は道内どこにでも見られる静かな田舎町。平和に生きていることが当たり前の時代、こうして週末毎に自分にとっての未知の山を楽しませてもらっている。そんな長閑な赤井川にさえ激動の時代があり、容赦ない別れの場面があったと教えられたのは下山後しばらくしてからであった。(2015.11.23)

参考コースタイム】山梨線・駐車スペース P 9:30 元服山頂上 10:50 、標石発見 11:01、〃発 11:20 山梨線・駐車スペース P 12:20  (登り1時間20分、下り 1時間)    

メンバーsaijyo、チロロ2さん   

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