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   賀老(662.3)

国道5号から望む賀老山

1/25000地形図 「白井川」  

雪原を進む
林道入口に車を止める
急斜面では雪渓がずり落ちていた

  賀老山は蘭越・幌内山の派生尾根上の目立たない山で、この山を単独で目指す登山者は極めて稀である。私の知っている限りでは、Ko玉氏が函館転勤中に自宅から赴任先へと戻る途中に登ったという程度で、Web上で検索をかけてもN山岳会の一件しかヒットしなかった。滅多に登られない希少価値の一山といえば聞こえは良いが、周りにはもっと高く登り応えのある山があり、当然のこと誰もがそちらへと向かう。言うなればエアポケット的存在の一山だ。山名の賀老はおそらくアイヌ語からの宛字と思われるが意味は判らなかった。付近は香川県からの入植者が多かったこともあって讃岐と命名され、地区の鎮守の神様は当然金比羅さんである。

  賀老山へのアプローチはgoogleの航空写真では上賀老川からの林道であったが、農家のすぐ前で積雪に阻まれる。ことわって車を止めさせてもらうことも考えたが、家の前には車は止まっておらず、後で邪魔となっては申し訳ないので下賀老川側へと移動することにした。下賀老側はうまい具合に林道入口まで通行可能で、近くにいた農家の方に断りを入れて車を止める。林道はこの時期特有のカリカリ状態、保険代わりのワカンをザックに入れてシールなしのウロコ板でスタートする。取付きまでの林道と尾根上の地形を考えるとスキーは離せない。

 さすがに下賀老川にはスノーブリッジなどは無く、1kmほど先の橋まで進まなければ対岸へは渡れない。新雪の頃にはあまり恩恵を感じなかったウロコ板も春のこの時期ともなればその良さがひしひしと感じられる。体重を前へと移動して行くだけで自然と前に進んで行くからつい嬉しくなる。Ikkoさんはこの日もスノーシューだが、彼に言わせればスキーという道具の場合、自分の足では移動していないのでは… とのこと。ただし、私も言わせてもらうならエネルギーは全てが自分。位置エネルギーを無駄なく消費しているだけのこと。そんなことを考えているうちに橋に到着、尾根上への急な登りとなる。

 斜面に入ると意外に雪面が沈んで助けられる。仮にカリカリ斜面であればとても登れるものではない。とは言え、シールなしではさすがにかなり大きくジグを刻まなければ上へは上がって行かない。こんな場面ではやはりスノーシューやワカンに分がありそうだ。Ikkoさんはほぼ直登で悠々と標高を稼いでいる。右手の斜面では雪面がぱっくり開いて、笹斜面が顔を出している。雪崩れることはほとんどないが、全然気にはならないと言えば嘘になる。尾根上へ飛出す最後の部分で傾斜が増し、たまらず大きく回り込んで反対側の斜面へと逃げる。尾根上からはIkkoさんからの呼びかけ、少々距離が開いてしまったようだ。

ここが賀老山の本当のピーク 三角点ピークに「金麦」を置く

 広い尾根上は間伐された伐採跡が広がっている。登山者こそ稀かもしれないが、林務作業その他で多くの人達が辺りを訪れているのだろう。植林帯を抜けると広い林道と思われる雪面に出て、それはさらに頂上方向へと続いていた。林道に沿ってしばらく進み、林道が切れるとオープン斜面となる。靄がかかったような天候だが、対岸の山々の奥には薄っすら鋭角的な昆布岳が見える。この辺りまで登れば、さすがに低山とは言っても山に登っている雰囲気となる。最後は雷電山を中心とする山塊を背に、広い斜面をひと登り。先を行くIkkoさんは右側の樹林帯へと消える。頂上到着のようだ。期待していた賀老山頂上だったが、何の変哲もない樹林帯の中で眺望などはまるでない。GPSを拡大して三角点が埋まっていると思われる位置を特定する。

 山の目的の一つが写真撮影のIkkoさん、すぐに撮影ポイントを探してどこかへと消えてしまった。私はいつものように持ってきた金麦で登頂を祝う。正直もうあまり動きたくはない。せめてHP用の写真だけでもと思って樹林帯から少し離れると、さらに先でIkkoさんが手を振っていた。100mほど進んだ先は稜線が狭まって明らかに頂上よりも高い。樹林がないだけにニセコ、狩場山、羊蹄山など、ぐるり見渡すことが出来る。ここから先は次のコルへと大きく下り、賀老山よりもひとまわり大きな819m峰、そして蘭越・幌内山へと稜線は続く。三角点の位置を便宜上、だれもが頂上と認識しているが、本来は山のてっぺんが頂上であり、賀老山に関していえば、間違いなくこの地点こそがそれにふさわしい雰囲気である。ここまで来ていなければきっと、後々後悔の材料となっていたことだろう。  

頂上付近のオープン斜面からのパノラマ (Ikkoさん提供)

 帰路は“賀老山頂上”を後に、すっきりとした気分でオープン斜面をひと滑り、歩くIkkoさんを待つ。やはり春山はスキーに限る。途中、Ikkoさんには先に行ってもらい、ザックからチョコレートパンを取り出してしばし休憩タイムとする。余裕、余裕… だが、Ikkoさんを山中で見かけたのはそれが最後だった。登りで苦労した急斜面は腐った雪面に下りでも苦労、如何せん雪が重すぎてターンどころではない。斜滑降・キックターンで辛うじて林道へと下る。うさぎとカメ、この勝負の敗因は正に“昼寝”にあった。結論的には、下手くそなスキーをするくらいなら歩いた方がマシということだった。(2015.3.28)  

参考コースタイム】  讃岐 林道入口 P 7:30 → 賀老山頂上 9:55、〃 発 10:20 →  讃岐 林道入口 P 11:50 (登山時間 登り2時間25分、下り1時間30分)

メンバーIkkoさん、saijyo        ■4日後にこの山を訪れたsakag氏のページへジャンプ

   

  賀老山からの眺め

賀老山頂上付近から望むイワオヌプリとニセコアンヌプリ

頂上付近からの雷電山と目国内岳

頂上から望む蘭越・幌別岳付近の山塊

ここが賀老山の最高地点

賀老山から望む昆布岳

賀老山から後方羊蹄山

     

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