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       路山(625.1m)

  

    

特徴のない山容の冬路山

 1/25000地形図「沼 牛」

徐雪機の転回場に車を置かせてもらう
EIZI@名寄さんは小沢に転落、一歩後退する
果敢に深雪を進む地元・Oginoさん

「冬路山」、和名の山だが実はアイヌ語地名の和訳である。今回同行の旭川・Oginoさん(道北ヤブ山日記管理人)からその辺りの資料を送って頂き、十分に学習させてもらった。上川地方のアイヌが雨竜川周辺への猟のために通過した冬の山越え道「マタ・クエタンぺツ(冬・通る・江丹別川)」(松浦武四郎・じん心余赤)を和訳して「冬路」とし、それがこの山の名となったようだ。冬路山と640mピークとの間にある550mコルがこのルートの最高地点となる。ちなみに、夏のルートは現在の江丹別峠で、シャ・クエタンぺツとのこと。雨竜川周辺は昔からクマの多いところで、*)近文アイヌにとってはクマや魚の貴重な猟場となっていたようである。幌加内方面へのそんな山越は近世まで続いていたらしい。一見、指呼するのも難しい特徴に乏しい山容だが、昔から通行の目印となっていた山のようで、立派に一等三角点も設置されている。

標高625mの低山だが、地元ではよく登られているようだ。私も昨年この山を江丹別峠から目指したが、この時は鷹栖山とセットで計画したこともあって時間切れとなってしまった。今回はEIZI@名寄さん、oginoさんと我々4人の6人パーティ、ラッセル力は十分との心づもりでの入山であった。ところが一歩足を踏み入れて驚かされたのは先頭を行くEIZI@名寄さんの膝上までの深雪である。数日前のものか薄っすらトレース跡は残っているが、その後の降雪でまるで役には立っていない。もっともシーズン始めということもあり、深雪ラッセルは我々の望むところだ。oginoさんの話によれば江丹別の今現在の積雪量は道内では最多のとのこと。しかも、この時期は未だ積もったばかりで、建物で言えば基礎部分がない状態。沈み込むと笹まで出てくるとあっては前途遼遠の感がある。

チロロ2さん、深雪ラッセルに挑むも50mが限界

トレース跡は372mポコへと続いているようだが、そのまま辿ってしまっては芸がない。我々は右手の小沢を渡って隣りの尾根筋へと向かうことにする。スノーブリッヂは未完成の状態で一人の通過がぎりぎりのところ。果敢に倒木上を渡ろうとしたEIZI@名寄さんは小沢へと見事に転落、スキーとシールを濡らしてしてしまい一歩後退する。尾根を変えたところで深雪の状態が好転する訳はない。ここでこの日初めて私が先頭に立つ。皆が苦戦しているのはシーズン始めのためと安易に考えていたが、予想以上のこの日のラッセル苦行、私も身を持って味わうこととなる。

スキーのトップが雪面上に出てこない。意識的に上げようと努力してもどうにも浮かび上がらない。これは私の技術不足によるものなのかもしれないが、今の反りの少ないスキーにも大きな原因がある。現在使用中のスキーを購入した時には思いっきりトップが反り上がったものを探したが、今時そんな代物などどこにもなかった。流行も良いが、山スキーとして売っている以上はラッセルにも適した形状を考えて欲しいものだ。反りのないスキーは微妙な変化の多い山の雪面では、特に角度が急に変った時などには刺さり込むことがあって、いつも不便さを感じていた。この山行記を考えながらも、ついついネットで反りのあるものを探してしまった。山スキーとして検索したが、反りのないものばかりで少々うんざりした。流行遅れのゲレンデ用の処分スキーでは1000円程度のものもあったが、長さと幅に難がある。もはやオーダーメイドで考えるより術がないのかもしれない。

冬路山頂上に無事到着

先頭のラッセルでこんなに疲れた記憶はあまりない。何度かターンして後続にバトンタッチ、最後尾に着く。先頭と最後尾の違いをこれほど強く感じたこともしばらくなかった。ちょっと前までは先頭に立つことが何となく楽しみだったが、一度この日のラッセルを体験してしまうと、自分の順番が回って来ることが恐ろしくさえ感じられる。チロロ2さんの二回目は自分では100mは進んだと言っているが、せいぜい50mがいいところ。次のチロロ3さんに代わる。チロロ3さんは気を吐いて、頂上台地上へと飛び出した。100mくらいは進んだだろうか。そこで地元・Oginoさんが頂上まで30mくらいの地点まで果敢に接近する。最後は年賀状に使用する写真撮影のためのチロロ2さんが残り30m、平になった雪面を悠然と進んで見事冬路山登頂を果す。結局、わずか400m程度の標高差に2時間40分もの時間を費やすことになった。この時点でシラッケ山は次の機会となる。

頂上からの展望は降雪であまり良くない。頂上には誰が付けたものか私製の頂上標識が付けられている。おそらく、同山域の幌内山で見たものと同じなので、同じ人間が取り付けたのだろう。下りは本格的な深雪の滑りを楽しむ。ただし、転ぼうものなら起き上がるのは容易ではない。再びスノーブリッジが未発達の小沢を渡るのも御免なので、1つ隣のトレース跡の残っている方の尾根筋へとルートを変えることにする。深雪の快適な滑りを楽しめたのは頂上台地上からのわずかな急斜面、残り372mポコまでは下りのラッセルとなる。372mポコからは再び急傾斜となるが、それもほんのわずか。途中にラッセル跡は見当たらず、数日前の登山者は途中で止めてしまったのだろう。もっとも、いつものように私とチロロ2さんだけのパーティであったなら、頂上への到着は難しかっただろう。雪がしっかりと降り積もるまでの微妙な時期、決して途中敗退とならぬよう積雪状況をも十分に考えた山行計画を組む必要がありそうだ。(2011.12.11)

*)【近文アイヌ】もともとここにはコタンがあったが、明治時代にはいってから上川周辺のアイヌ人たちがここに集められた。上川アイヌの長である川村カ子トが有名

OginoさんのBlog「道北ヤブ山日記・冬路山」へ

【参考コースタイム】 江丹別町拓北・駐車地点 8:40 → 冬路山頂上 11:25、〃発 11:55 → 江丹別町拓北・駐車地点 13:10    (登り 2時間45分、下り 1時間15分)

  【メンバー】EIZI@名寄さん、Oginoさん、山遊人さん、saijyo、チロロ2、チロロ3(旧姓naga)

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