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   太櫓(805.6m)  1/25000地形図 後志太田  

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小川高原から太櫓山を望む

小川高原の最終牧場前に車を止めた

テレビ局の放送アンテナが林立する地点から林道へ入る

 この日、私は予定のキムンタップコップ山へ行くつもりだった。Ikkoさん予定の太櫓山は山域の最高地点であり、一等三角点でもある。ただ、昨日雁毛山から見た雪雲と、Ikkoさんは天狗山も狙っていたので、いまひとつ私は気乗りしなかった。私の山へのあり方はあくまでマイペース。その時々で登りたいと思う山に着実に登るのがモットーで、天候が悪くても無理に登ろうなどとは思っていない。登る機会を得なかった山はいずれ機会を得た時に登ればよい。

 せたな町の道の駅「てっくいランド大成」の車中で一夜を明かしてみると、翌朝は前日とは打って変わって晴天だった。前日、天狗山の偵察に行き、この山を下山ルートとするにはルートが見えず、今回はパスとしていた。目的が太櫓山一山のみとなったこともあり、ここはIkkoさんの山に付き合ってみるか! 以前、同じ山域の毛無山へ登った折に太櫓山の立派な山容を見ていただけに、晴天であれば登ってみたいという気分になった。私は面倒くさい人間かと問われれば、山に関しては間違いなく面倒くさい人間だ。自分自身そう思っている。

 Ikkoさんの車で、入山口である小川高原へと向かった。今回のルートはsakag氏のホームページにあったそうで、Ikkoさんが印刷してきたsakag氏の記録を見ると、盟友であったko玉さんも一緒に登っていた。両氏ともあの毛無山山行の折に一緒に登ったメンバーで、その後すぐに太櫓山を狙っていた。おそらくだが、Ko玉さんのことだから私にも声をかけたんだろうが、私はKo玉さんのいつもの誘いとスルーしていたのかもしれない。ko玉さんの誘いは頻繁で、私には私の山行スタイルがあるから、それ全部に乗るわけには行かなかった。そう考えると、私がこのルートから登るのは因縁と言えるのかもしれない。

コンタ460m付近で狩場山塊やせたな付近が見えてくる 途中から見えたカスベ岳の見事な山容
495m標高点を過ぎた辺りから雪庇が現れた 途中から遊楽部山塊も見えてきた

 小川高原に着いてみると放送局の鉄塔群までの除雪はなく、手前の牧場までであった。除雪の無い道路を進み、鉄塔から先は雪に埋まった林道を探しながらのガロー川への長い下り続いていた。帰りの登り返しを考えるともったいない気分だが、ここは仕方がない。途中、キツネにでも襲われたのか、雪面いっぱいに野鳥の羽が散らばっている無残な光景を見た。

 ガロー川を渡ってすぐが太櫓山北東尾根への取付き地点。急斜面だが登れなくはない。最初の標高差2030mほどのみだが、斜め登高とキックターンの繰り返しで登った。そこからは樹林帯の緩い斜面となった。樹林帯の中には集材路があり、そこを進んで行くうちに林道に出た。林道は尾根上に続いていて、傾斜が増すと大きくS時状に標高を上げて行った。コンタ430mで林道を離れて尾根上の急な斜面を登ったが、その頃から背後に狩場山塊や瀬棚付近の海岸線が広がり始めた。495m標高点を過ぎると尾根筋が分かりやすくなり、大きな雪庇が出てきた。天気は晴天で、雲間からは透き通るような青さが広がっている。南東方向には、この地域の盟主とも言える遊楽部山塊の深く谷が切れ込んだ見事な山容が見える。思いもよらぬ晴天に、回りの展望も期待を遥かに超えた素晴らしさだ。昨日の深雪のため、ルートの尾根上は眩しいほどの純白のベールに輝き、神々しささえ感じられるからこの山に来て良かったと思えて当然であった。 

634m標高点付近から見た太櫓山頂上部

 体力に勝るIkkoさんを出し抜いて私が先頭に立っているが、これは道具の違い。スノーシューを極めたIkkoさんでさえ、深雪ではスキーの登高力には適わない。最近はスノーシューブームで、誰もが気軽に冬山に参入するようになったが、スキーは決して冬山の遺物ではない。もちろん、滑りの方ではバックカントリースキーとして流行の最前線にあるが、登高の一つのアイテムとしても捨てがたいものがある。状況に応じて道具を使い分ける。引き出しの多さは冬山では有利な材料と思えた。

 コンタ680m684m標高点の小ピーク付近まで登ったところで太櫓山の頂上部が見えた。まだまだ遠い。こんな時は地形図を見るに限る。ピークまでおおよそ残り1/4。下山の楽さも考慮すれば、8割方終了である。そう考えることによって気分は楽になる。頂上部の取付きからは急斜面の登高となるが、前方は極力見ないことにして足元だけを見た。我慢、我慢、もう良いか、おお!近づいた・・・これを繰り返しながら登っていると意外に標高を上げているもので、長い登山人生で得た私の胸突き八丁打開策である。登りきった辺りには昨日の新雪が貼り付いた樹木が点在し、この世のものとも思えぬ神々しさが広がっていた。見方によっては葬式の四華花にも見えるが、それは心中にとどめる。そうこうしているうちに、さらに前方には今度こそ本当のピークが現れた。 

 尾根上を進むのがセオリーだが、尾根上はシュカブラが波打っていていかにも大変そうだった。ふと見れば、雪庇の下方の斜面は素直そうで、これを進まぬ法はなかった。斜面の傾斜や雪質を考えても雪庇の崩壊はありえない。ここは迷わずGo!である。頂上が近づくとウサギの足跡のみが頂上に向かって雪面上に続いていた。登りきったところで平らな雪面上となり、反対側には海が広がって奥尻島が見えた。頂上到着である。やはり山は晴天に限る。懐かしい毛無山も見え、遊楽部岳や狩場山、カスベ岳、メップ岳と展望は抜群で、360度の大パノラマが広がっていた。

 sakag氏やko玉さんから遅れること11年だが、彼らが登った時にはこの展望は無かったとのこと。そう考えると、一番良い思いをしたのは私かもしれない。今は亡きko玉さんからのプレゼントと思いつつ、下山の途についた。(2019.2.11)

頂上手前ポコには神々しい樹氷が見られた

太櫓山頂上からは眼下に奥尻島が見えた

 

頂上を後に下山開始

 

【コースタイム】小川高原最終農場前 8:20   尾根取付き  9:10 太櫓山頂上 11:35 尾根取付き  12:40 小川高原最終農場前 13:35 (山行時間 5時間15分)    

メンバー】Ikkoさん、saijyo

 

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