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    二子森(700.3m) ・・・ 隠れていた秘峰 

 

林道から二子森・本峰を望む

1/25000地形図 藻瀬狩山

本峰から見たU峰にはびっくりさせられた
ピークから最接近地点の凸場に車を置く
距離にして半分くらいの地点から本峰を望む
二子森・本峰(三角点ピーク)に立つIkkoさん

 似峡岳を早々と下山、時間的に余裕が出来たため、二子森へと続く林道を下ってみることにする。下りきったところで藻瀬狩川となるが橋がない。Ikko車はこんな渡渉も平気とのことで、そのまま車ごと川を渡って本線林道に出た。私の乗用車であれば絶対に無理な話、神業とも言える荒業だった。途中で分岐となりアメダスの施設を右に見ながら二子森へと向かう。この二子森、山も岳も付かない山名だが、〜森という山名は四国や東北地方に多いらしい。アイヌ語や朝鮮語からの影響とも言われている。標石設置の際に関わった当時の人物が四国か東北の出身者だったのだろう。因みに、道内で〜森のような山名はここと渡島福島の二ッ森、乙部の茅森・竹森、倶知安の二ツ森、神居古潭の松森、芦別の笠森の7つである。ひょっとしたら、同じ人物が関わっていたのかもしれない。

 途中、二子森が真正面に見えるが、黄緑色の木々に覆われてこんもりと鋭角的に盛り上がっている山容はなかなか端正で美しく感じられた。二子森にはもう一つのピークがあるが、角度的に本峰に隠れているようだ。そのまま走って到着した地点からGPSで距離を測ると、二子森のピークまでは水平距離で500〜600m程度。二子森もやって行こうとの話となる。だが、林道周辺には背丈を越える笹薮が壁を作っており、短い距離とはいえ、それなりの覚悟が必要である。道路から強烈な根曲がりを押し倒して笹薮の中へと分け入る。ルートは笹薮ばかりで、ダニなど気にしてはいられない。どこか薄いところはないものかと見渡してみると、植林された針葉樹が縦に規則的に並んでいることに気が付く。針葉樹林の下は藪が薄いので、それを利用するのが効率的だ。案の定、笹薮からは開放されるが、針葉樹のつながりが思っていたよりは短い。他の針葉樹帯へとつなぎつつ、出来る限りの距離を稼ぐ。

U峰の急角度での登り

 GPSを見ると全体の半分ほどは進んでいる。明瞭な尾根に乗っているようだ。籔の間からは少しずつ背後の眺望が広がってきた。天塩岳付近や於鬼頭山が確認できる。徐々に傾斜が増してきて、籔も若干薄く感じられるようになる。さらに傾斜が増していよいよ盛り上がって見えていた斜面に入ったのだろう。距離にして100mをきるあたりから、眼下にはちょっと前に通過してきたばかりの笹原が見える。斜面はさらに急登となり、落石を気にしながら木々につかまりつつ攀じ登る。登りきったところから少し進んだ薄い笹薮の中に二等三角点「二ツ森」は埋まっていた。これで今日の山行は終了、あとは下るのみと、三角点に「金麦」を立てていつものように撮影タイムとする。

 あれ? Ikkoさんはどこに行ったのだろう。少し逆側に下った辺りから「凄い! 凄いですよ」との声。「遠いと思ったら距離はたったの200mしかないんですよ」とダメ押し。そうか・・・ U峰のことか。直ぐに判ったが、正直これ以上は面倒くさくて行きたくはなかった。でも、ここまでせっかく来たのだから、どんなふうに凄いのか見てみようとザックを背負って下ってみた。少し下りたところから見て、確かに凄かった。要塞のように岩壁に囲まれ、地形図からは想像すらできないU峰が対峙していた。裏から回れば樹木があるので必ず登れるはず。もう二度とチャンスはないとまで言い切るIkkoさん。結局、U峰を目指してコルへと下ることになる。確かに見かけとは違って距離は200m以内、意外と簡単にコルとなる。Ikkoさん曰くは、ここは2ピークとも踏まなければ二子森に登ったことにはならないとのこと。そんな基準あったっけ? とは思ったが、確かに我々は測量屋ではないので、標石を確認したら良いというものでもない。最近の山行を考えて、いつの間にか標石の現況調査を自分の趣味としていたことに少し反省する。

 登高欲はそそられるが、つい山容に圧倒されつつ進むと、否が応にも取り付きとなる。取り付いてみて、それなりに傾斜を感じるがそれほどでもない。このままピークに到着か・・ と木々の上を眺めたところ、私の直ぐ前に立つ樹木の上に岩壁が見えた。ここからがクライマックスだった。岩峰の裏側は樹林帯なので、間違いなくこの樹林帯は頂上までは続いているはず。樹林を頼りに梯子を登るような急角度でぐんぐん標高を上げる。登り詰めた最後は岩が露出していて、先頭を行くIkkoさんがその上に立った。凄い展望ですよとIkkoさん。私もそこから頭を出してびっくりだった。展望もさることながら、20cm先は空間となって、遥か下方へと落ちていた。針の先に立っているようなもので、セルフビレーなしで撮影に熱中しているIkkoさん、見ていると、それだけで背筋がざわっとした。

そっと手を離して金麦を撮影 (U峰ピークにて)
この日多かったヒトリシズカ そっと手を離して金麦を撮影 (U峰ピークにて)

 そこから2〜3m左にずれた場所がU峰の頂上だった。狭いが、1人が座るくらいのスペースはある。ここからも大パノラマは広がっており、ぐるり周辺の山々が見渡せる。私の知る限りでは岩尾岳始め、似峡岳、於鬼頭山、天塩岳周辺、藻瀬狩山、渚滑岳等である。岩峰だけにT峰よりも眺望は遥かに優れていた。さて頂上写真と、金麦を取り出したが、下手に置くと大事な被写体が消えてしまいそうな狭さだった。転がって消えてしまうこの1缶を想像しながら、そっと端に置いての貴重な1枚を撮影する。もちろん、被写体はここでやっつけてしまった方が良いだろう。思わぬ秘峰との出会い。最高の1缶であった。

 二子森は単なる籔山低山とは違って変化に富んだ面白い山であった。数多くの籔山低山を歩いてきたが、このようなクリーンヒットの山にはそうそうめぐり会えるものではない。本峰には三角点があるが、高さではU峰が若干勝っている。当初は三角点を見て登頂としたいところだった。しかし、U峰に登らなければこの山本来の素晴らしさを知ることなどなかった。山は単なる現況調査やスタンプラリーの場ではないので、その山が持っている素晴らしさを追い求めることも忘れてはならないようだ。今回の山行を通して得た一番の収穫であった。(2016.5.26)

参考コースタイム】林道 P 10:00 → 二子森・本峰 11:00 二子森・U峰 11:25、〃発 11:45 林道 P 12:10 (山行時間2時間10分 休憩時間を含む)    

メンバー】Ikkoさん、saijyo

 **山行写真**

 

 

本峰・三角点ピークから望むU峰 (Ikkoさん提供)

U峰を登るIkkoさん

U峰ピークからの眺め 遠く天塩岳、右手は本峰 (Ikkoさん提供)

 

U峰ピークからの眺め 右手に岩尾岳、左手は本峰 (Ikkoさん提供)

天塩岳付近をズーム 手前に馬の背山が見える

 

岩尾岳をズーム

藻瀬狩山をズーム (Ikkoさん提供)

渚滑岳をズーム (Ikkoさん提供)

   

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