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 福島・丸山(307.5m)

塩釜地区からは立派な姿を見せる丸山

塩釜地区からは立派な姿を見せる丸山

1/25000地形図   「渡島福島」   

不動明王が祭られた祠、ここから参道は急になる
登山口には広い駐車スペースがある
最初の鳥居前には丸山神社と書かれた立派な石碑がある

  道南は以前から東北地方の影響を受けてきた地域で、特に福島町や松前町など半島西部は海峡を隔てた津軽半島と対峙しており、その影響が顕著だったようである。その一つとして山岳信仰の広がりがあり、その担い手となったのが南部氏との戦いに敗れ、蝦夷地に逃れて来た津軽の安藤氏(15世紀)だったとのこと。この地域の最高峰である大千軒岳は近世初頭、そもそもは浅間(せんげん)岳と呼ばれており、山全体を御神体とする浅間信仰の影響を強く受けていた。福島町内の丸山神社もその一つで、山岳信仰はこの地方隅々へと根付いて行ったらしい。丸山神社を支えてきた奉斉者としては神仏習合したための修験者が多く、丸山神社はそんな修験者たちによって守られてきた。創立が文政三年(1820年)というから、道内としてはかなり古い神社の一つと言える。ここに祭られているのは大己貴命、少彦命名で、以前は薬師堂もあったとのこと(福島町町史参照) また、一人歩きの北海道山紀行sakag氏の山行記によれば不動明王や毘沙門天も祭られているらしい。正に神仏習合の歴史そのものと言える。

 午前中に訪れた松前町の勝軍山は予測の甘さから野趣溢れる山行となり、おかげかどうかは判らないが、朝一番のヒグマショックからは完全に立ち直る。山自体は小さく、この山なら午後からでも十分と、登山口の福島町塩釜の小さな集落を訪れる。登山口が判らず、集落中央の空スペースに車を停めて近くの老人に、ここに車を置いて良いかどうか尋ねてみるとOKとの返事だった。ただし、丸山登山であればもう少し奥へ入ると入山口となっていて、広場もあるとのこと。「お兄さん、丸山に登るのならクマが出るから注意しなさいよ」と忠告される。今朝方、白神山でヒグマとばったり出会ってきた話をしたところ、驚いて回りの人達とその話題に花が咲いたようで、皆不思議そうに私を見ていた。地元ではクマが居るとは知っていても、出合い頭の遭遇ともなるとやはり珍しいことなのかもしれない。いずれにせよこの地域には何処にでもクマは居るようである。

頂上直下の鳥居、この奥に丸山神社が建つ 三等三角点「丸山」

  車を少し奥に走らせるとすぐに「丸山神社登山口」の看板を見る。駐車場に車を停めて辺りを見回すが、それらしい入口は見当たらない。車から降りてじっくり探すと、草むらの影に橋と鳥居を発見、どうやら夏草が鬱蒼としているために参道入口が見えづらかったようだ。つい先日参拝した太田神社のような華やかさを想像していただけにこちらは閑散とした印象、参拝者はかなり少ないようである。天候は朝から風が強くて雷注意報も発令中、できるだけ早い時間でこの山を終わらせるのが賢明である。天候のせいか辺りは徐々に薄暗い感じとなり、いつ雨が落ちてきても不思議ではない。登山道は鳥居を潜ると右折して、程なく現れる次の古い鳥居からは稜線上に乗る。針葉樹林帯の中を通過するためになおさら暗く、出来る限り足早に参道をたどる。

 途中、不動明王の祠からは斜面が急になり、固定ロープや鎖まで現れる。太田神社と遜色劣らない険しさであるが、最後の垂直の詰めがない分だけ、こちらの方が気分的には楽と言えるのかもしれない。さらに薄暗くなってきたため、頂上到着を今か今かと焦りながら登って行くうちに鳥居が現れてお社に到着する。登山口から30分、まずまずのタイムである。それにしても、山岳信仰とは厳しいものだ。神社の裏手はさらに高そうで、梯子も掛けられているので、多くの参拝者も裏手の最高地点まで上っているのだろう。特に江差・笹山稲荷神社のような注意書もなかったので、私も丸山頂上へ上ってみることにした。少し小高くなった雑木林の中に三等三角点「丸山」を発見、丸山登頂を果たす。途中でポツポツ来ていた雨だが、この頃から急に雨脚が早まってくる。雨のために霞んで視界は利かないが、仮に晴れていたとしても、この樹林帯では展望は無いだろう。

 ゆっくり休憩する間もなく下山開始とする。朝方の天気予報では大気が不安定なので、一瞬怖くなってしまう程の降りもありうると言っていた。ただし、時間的には20〜30分程度とのこと。確かに、途中では音を立てたドシャ降りとなるが、下って行くだけなのでそれほど気にもならない。車に到着する頃には明るくなり陽も差しはじめる。小さな山であったが、何時もの道内の山とは少し違って“内地”の雰囲気が伝わってくる道南の一山であった。(2013.8.15)

【参考コースタイム】 登山 1325 福島丸山頂上 1400 登山口 14:25  (登り 35分、下り 25分)

メンバーsaijyo

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