<戻る

     蝦夷松(667m)皮山(747m)

函館平野から望む蝦夷松山雁皮山 (sakag氏提供)

 1/25000地形図「赤 川」

蝦夷松山頂上から函館市街を望む
蝦夷松山から望む三森山
栗の木公園の登山口に車を停める 神山霊場・奥の院には独特の雰囲気がある

  蝦夷松山にはエゾマツはなく、トドマツばかりだそうである。確かに山道を歩いていれば植林されたトドマツのみが目に付く。道内で植林される樹木はトドマツが一番多いそうで、この山も例外ではない。山名の由来から考えて、ひょっとしたら以前はこの山にもエゾマツが多かったのかもしれないが、世代交代の結果、トドマツが多い山となってしまったのだろう。函館市街へここまで至近距離の山は今回が初めてである。道内では最初に開けた地域であり、その分だけ歴史の詰まった土地と言えるだろう。スタート地点の栗の木公園周辺は信仰のスポットとなっていて、四国八十八箇所と同名の石仏が祭られている。秋口に登った瀬戸瀬薬師山にも同様に八十八箇所の地蔵尊が祭られているが、こちら函館のものは個々の仏像自体が大きく、歴史もありそうだ。途中、神山霊場・奥の院を詣でたが、古くからの多くの人達の思いがこの場に凝縮されているのか、独特の雰囲気を作り出していた。ここでは当然のことながら今回の山行の安全を祈願する。

 地形図を見ると、一見何かの境界線かと勘違いしそうな点線が走っているが、これが蝦夷松山に続く登山道である。以前は送電線の管理道だったようで、ふと見ると電柱が倒れていて、碍子も付いたままとなっている。付近にはゴルフ場が隣接していて、いかにも都市の中の山といった感じだが、稜線まで登ってしまうと視界が開け、どこか高い山にでも登っているかのような雰囲気となる。稜線の途中からは岩場が現れ、ロープが随所に設置されている。こんな野趣溢れるコースも、この山の人気の要因のだろう。sakag氏によれば海峡を挟んで遠く大間原発も見えるとのこと。確かにそれと判る建築物が点となって確認できる。本州側から見れば北の外れかもしれないが、こちらから見れば目と鼻の先、時代が時代だけにその稼動だけは何としても阻止できないものかと思う。急な岩場を登り詰めると蝦夷松山頂上に到着する。頂上は岩峰となっていて、視界を遮るものは何もない。真正面には三森山、少し奥には泣面山の特徴ある姿、遠く恵山や古部丸山など、亀田半島のほとんどの山を指呼することができる。また、函館山や函館の市街地の広がりも一望の許だ。機会あれば夜間登山でこの山に登り、100万ドルの裏夜景でも楽しみたいものだ。

蝦夷松山頂上にて
雁皮山・三角点ピークまであと少し
北峰(雁皮山最高点)を目指して南峰を出発

  さて、次は雁皮山である。雁皮山の名は道内各地に見られるが、雁皮(ガンピ)とは一般的には和紙の材料となる低木のことである。北海道では焚き付け用の白樺の樹皮を雁皮(ガンビ)と呼んでいるが、これは方言とのこと。道内にガンピは自生していないので、昔から日常的に利用されてきた白樺の樹皮の呼び名がこの山名の起源となったのだろう。よって、ガンビヤマが正しい読み方である。この雁皮山へは蝦夷松山からの稜線歩きとなる。sakag氏から「落とし穴に気をつけて」との注意。なるほど岩稜続きで、油断しようものなら、岩と岩の隙間を踏み抜いてしまうだろう。この日は前日のものか、雪面に踏み跡が残っているので、それを外さぬよう慎重に進んで行く。岩稜を回り込んだりトラバースしたりと、細かな変化があって退屈することがない。途中の目立った岩場にはそれぞれ名前が付いていて、このルートの人気の高さがうかがえる。途中、稜線脇に沢形が走っていたが、これは地割れ地形とのこと。山全体がけっこう不安定な地形となっているようだ。一説では、付近はカルデラ地形の外輪という意見もあるそうだが、火山性の山でもあり、確かにそう言われればそのようにも見えてくる。最後は笹斜面となって視界が開け、雁皮山の頂上となっている一段高い三角点ピーク(南峰)に飛び出す。

 一般的にはここで折り返しとなるが、地形図を見ればそのさらに先の北峰も含めて雁皮山となっている。しかも、わずか3 mほどであるが北峰は南峰よりも高い。我々藪山メンバーとしては、やはりそこまで行かなければ誰ひとり満足はしないだろう。ここから先は登山道がないので、藪漕ぎで北峰を目指すことになる。北峰は穏やかな山容で特徴に乏しいため、見た目が実際の距離よりも遠く感じられる。約1km、こんな場合は地形図を信じ、頭の中で1kmから進んだ距離を消去しながら進むことにしている。気休めかもしれないが、こうすれば少しはプレッシャーが軽減される気がする。南峰からずっと先頭に立つmarboさんは稜線左右の植生の違いを意識しながら進んでいる。だが、それもコル付近の平らな地形ともなれば、根曲がり竹からは逃れられない。私も途中から先頭に立ってみたが、先頭となればつい悲観的な気分になってしまう。後続であれば足場の悪い登山道歩きのレベル、すぐにも届きそうな気分となるから現金なものだ。根曲がり竹は雪の重みで寝ており、視界だけは確保されている。無雪期であれば頂上も含めて往復とも視界のない藪漕ぎとなり、さすがに途中断念も有りうるだろう。

雁皮山・北峰は遠く見える 雁皮山最高点(北峰)に立つsakag氏

 丘状の地形ではどこが最高地点なのか判らない。上がってから右往左往しないよう、北峰の標高点のみは予めGPSに入れてきた。冬は立ち上がりの悪い私のGPSだが、カイロで温めているうちに何とか衛星を捉える。目的地点まで180m、やった!と思った。この距離であれば這ってでもピークに立てるだろう。確かに登りとなれば、這っている状態であることに違いはない。気持が逸っているせいか、なかなか前へと進んで行かない。最後は地元・sakag氏が先頭となり、すんなり北峰頂上へと飛び出した。あそこかここかと思わず辺りを見回すが、ここまで到達すれば間違いなくどこも北峰のピークである。雁皮山の二ピークに完全に登頂したという満足感は言うに及ばず、藪山愛好家を自負する我々にとっては本領発揮の瞬間となった。

 下りはやはり速い。時間も然ることながら、折り返し地点を通過した安堵感によるところが大きい。寝ていた根曲がり竹は我々のトレースで起きてしまったが、既にルートが出来上がっているので、大して苦にはならない。約50分で南峰に戻る。既に下山でもしたような気分だ。この日の核心部を終えたことによるものだろう。ここからの帰路は蝦夷松山手前の分岐から花の道コースを下る。このコースは岩場を通らないで下山できるとのこと。花の時期であればその恩恵を十分に楽しむことができるところだが、この時期ではどのコースも草花が冬枯れしていて大差はない。通常の登山コースへは戻らず、そのまま登山口付近へと下る周回ルートに入る。地元・sakag氏もこのルートは始めてとのこと。多少の登り返しはあるが、歩道はしっかりとしている。途中、こんな山の中に… と思われる場所にも丁寧に土留めがされていた。やはり山全体が不安定ということなのだろう。

 うっかりしていたが、奥の院よりもかなり登山口寄りの地点に出てしまったため、雁皮山・北峰を無事に踏んできた満願成就のお礼もせずに下山となってしまった。出直しとなるが、いずれ函館訪問の折にでも奥の院は再訪したいと思っている。北海道でありながら半分内地的な雰囲気を感じさせる函館の山、北の山を定番としている我々にとっては小春日和の暖かさが感じられるこの日の山行であった。(2012.12.2)

 ■「一人歩きの北海道山紀行」sakag氏の山行記へ  ■「大好き!Mt Onne」Marboさんの山行記へ

【参考コースタイム】 栗の木公園・登山口 P 8:30 蝦夷松山頂上 10:25 → 雁皮山・三角点ピーク 11:30雁皮山北峰 12:45、〃発 13:00 → 雁皮山・三角点ピーク 13:50 → 花の道分岐 14:25栗の木公園・登山口 P 15:40     (登り4時間15分、下り2時間40分)   

メンバーsakag氏、marboさん、mocoさん、saijyo、チロロ2、チロロ3(旧姓naga)16:15 山の手温泉(入浴)

<最初へ戻る